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8話 その先にあるもの ⑥

 アウター・ワールドで様子をみていると、突如赤い光が輝くと同時に

「ウォオオオオオオオオオ」

 ティアの装置が創り出した創造壁を破り、ジャイアントブレイカーが雄叫びをあげていた。

 

「動きだしちゃったね」

 遠くからジャイアントブレイカーを観察し、あたし達の闘う準備はすでにできている

 ブレイドはすでにレイター化させていた。


「破壊力が一気に膨れ上がったように感じたけど」

「ベインの仕業だ。あやつめ創磨達の動きにあわせたか」

「トークイベント中でどんぴしゃだもんね。あいつがやりそうなことだよ」

 ベインの奴め、一番嫌なタイミングでしかけてきた。ってことは、どうせどこかであたし達のこともみてるってこと。

 

「闘いを放棄したやつらはいないようだなぁ」

 すぐにベインが上空に現れた。ポテチとコーラをもっている。こいつあたし達の闘いを観戦するつもりしかないらしい。


 こっちは本気だっていうのにあいつは……まぁ捉えようによってはベインには手を出されないってことになる。そこだけはプラスね。


「あんたが創磨達をいないタイミングを狙ったんでしょうが」

「あのきれいな読者共と馴れ合うイベントのことか。最低だよなぁ、仲間のことよりも読者と馴れ合うイベントを優先するだなんてよぉ」

 安い挑発。こんなであたし達がどうにかなるとでも思ってんの。


「そうじゃない、創磨は読者と向き合いたいからあそこにいるの。作者が読者のためになろうとするなんて最高じゃんか」

「それなら俺のことも優先すべだろ。そろそろきずいてもらいてぇな」

 ベインは傲慢な態度を崩さない。てか、なにきずいてもらいたいって……だめ、。創磨ならなにかきずけそうだけど、あたしには無理そうだ。


「マスター、あいつの言葉に耳を貸す必要なんてないよ。わたしゃ達がやるべきことはジャイアントブレイカーを止めること」

「そうだね、そうしよう!」

 ベインが何を言おうともあたし達がすべき事は決まっている。破壊の炎をまとった巨人から創造を守る!


「どう止める。お前らのそのちっぽけな刀で」

 積みあげられていた灰色の瓦礫の山のうえに座り、あたし達の刀に指を向けた。

 蒼輝刀剣はあの巨人と比べ、あまりにも小さい。それはあたし達も解っていたこと。


「ティアちゃん、秘密兵器お願い!」

 ブレイドと共に空に向かって手を伸ばす。


「試作型魔王剣デモンブレイド、転送!」

 ブレイドの手に転送されたのは体長の四倍以上はある巨大な剣だった。柄の小ささに比べて刃の部分が規格外の大きさを誇っており物理法則を完全に無視している。巨大なロボットが持っていそうな大きさ。見た目だけならば持っていることが不思議に感じる代物だ。


「これがティアとわたしゃ達の力」

 ブレイドがデモンブレイドを支えられているのは創造の輝きによるもの。刀身に流れている緑色をした創造の輝きが、ブレイドの創造の輝きと反応することで手にすることができている。

 今まで蓄積させた創造力とつながることによって振るうことができる、対巨大創造物用巨大剣。あまりにもでかすぎて相手を選ぶけど、巨人はその相手にうってつけ。巨大な力と力が激突する激熱展開、こんな機会はめったにないだろうし楽しんじゃおうか!

 

「創造力の増幅、魔王の研究を応用したわけか。いいねぇ、余興があった方が楽しめる。そいつで止めてみろよ、こいつの願いを」

 ジャイアントブレイカーはあたし達の動きに見向きもせずに、ブリリアントシールドを叩き割ろうとしている。あたし達は眼中にないってこと。

 

「はぁあああああ!」

 ブレイドがデモンブレイドを振るう動きにあわせて、あたしも意識を同調させて創造力を送り届ける。


(これ! 腕がもってかれる)

 痛みこそないものの、体がもってれそうになるくらいの勢いがある。あたしの小さな体が飛ばされていないのは創造の輝きが体を支えていてくれるからにすぎない。

 さらにこれだけの質量となれば刀のように素早くふるうなんてのは当然無理。一点をめがけて全力をぶつけていく。


“グシャアアアア”

 巨大な破裂音を響かせながらデモンブレイドがジャイアントブレイカーに衝突、ジャイアントブレイカーは背中から倒れこんだ。

 

 これだけで倒されてくれれば楽なんだろうけど、ジャイアントブレイカーの中には赤い破壊力はまだまだ残っている。それでも単純な力だけでも動きを止めれそうだ。


(きぃつうううううう)

 一度振るっただけでこれ、やばいくらい精神力もってかれるじゃん。


「もう少し倒れてなさいよ」

 ジャイアントブレイカーはあたし達の一撃をくらってもその破壊の意思をおさまることがない。赤い炎を燃やして、ゆっくりとではあるが立ち上がろうとしていた。

 

(たく休憩する暇さえ与えてくれないってわけね。しんどいけどがんばりますか)

 立ち上がろうとする巨人をその場に止めておくために、創造力を強めていく。今度は餅つきの杵みたいなもんだ。斬るというよりも叩きつるイメージで巨人に向かってデモンブレイドを振り下ろした。

 

“ギイイイイイイイイイイイイ”

 デモンブレイドはジャイアントブレイカーには直撃していない。

 両手から展開した赤い炎の壁に遮られた。しかも破壊力が創造の輝きを侵食しはじめてる。

 こいつこんなことまでやれるわけ。創造力が消えたら、足止めすらできなくなる。なんとかしないと!

 

「苦しいなら逃げ出してもいいんだぜ」

「くどい、あたし達は逃げたりしない」

「まだわたしゃ達の牙は折れちゃいない!」

 破壊力が強まったんなら、あたし達も創造力を強く光らせばいいだけ。

 

 蒼破天狼撃を放つ時よりも巨大なイメージ。

 それを自らの頭の中で描き出し、ブレイドと共有をする。

「みえた、わたくしにも絵麻のイメージが!」

「いくよ!」


 膨らませたイメージと共に創造の輝きを強めていく。

「くらえ、あたし達の輝き!」

“アォオオオオオオオンン”

 遠吠えが轟くと、デモンブレイドから創造の輝きで創り出した巨大な蒼い狼が現れた。

 

 ジャイアントブレイカーの腕をその牙でくらうことができるくらいには、巨大な蒼い狼は大きい。巨大な蒼い狼はジャイアンドブレイカーの破壊力をくらいちぎり、破壊力を弱めていく。


「これがあたし達の力よ」

 こいつには手加減なんてできない。持てる力で対抗しないと。

 

――ふざけるな、ふざけるな

 ジャイアントブレイカーの中にいる人達の想いが伝わってくる。このどすぐろさ、あたしも飲み込まれそうになったのと似てる。

 

――才能があるくせに邪魔するな


「あんた達が他の人の創造を奪ってでも、打ち切られたくないって思うからでしょ」


――運命が変わるなら、それでいい

 最初から諦めているのか。これをどうにかしてあげないと先に進めない感じがする。

 だけどあたしにはあの人達に届くような言葉は思いつかない。

 

――奪う、奪う、奪う。

 ジャイアントブレイカーは破壊の炎を燃やしつづけると、腕が再生していく。

 

「どうした腕が再生しちまうぞ。このままじゃ負けるかもなぁ」

 状況は絶望的。ベインが言う通りこのままいけば敗色濃厚。けど切り札はまだ残されている.


「あたしには勝ち目がないかもしれない。けど同じ苦しみを知っている創磨なら、なんとかしてくれる」

「あいつが来る。そいつは楽しみだ! 来れればの話しだがな」

 なんであんたまで創磨の登場待ちわびてんのよ。まじで意味が解んない奴。


 舌打ちしそうになるのを抑えつつ、あたし達は宣言をする。

「あたし達はやられたりなんかしない。そう約束した」

「こんな所で終わらせたりしないから」

 ジャイアントブレイカーがぶつけてくる破壊力を、あたし達は抑え込むことぐらいしかできないかもしれない。

 だけど今はそれでいい。創磨を信じるあたし達は、それだけでいいんだ。

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