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8話 その先にあるもの ③

 創磨達と別れた後、あたし達はティアが創り出した魔王城の闘技場にいた。


「これはまたでかいね~ブレイド、扱えそう?」

「いけそう。これであのバカでか巨人をばしゅとしちゃうから~」

 ティアちゃんが試作品としてつくりあげた秘密兵器をあたし達はみあげていた。

 こんな馬鹿でかいのを扱えることにはテンションあげあげなんだけど、そうもいってられないのが現状なのよね~

 

「あの巨人を閉じ込めている兵器、あれはどれくらい保ちそうなの~」

「ブリリアンシールドの発生メカニズムを解析し作り上げた、創造壁による防衛システム。それが『試作型イージスブライト』だ。創造力を蓄積、供給したことで出力は上がっておるが、それでも徐々に破壊の意思が侵食しておった。明日一日保ってくれればよいほうだろうな」

「あんま余裕ないって感じなんだ」

 ティアちゃんが用意した拘束する兵器もどこまで保つか解らない。まだまだ安心安全ってわけじゃないんだよね。


「ともあれさ、ティアちゃんの備えのおかげで闘えた。ほんと助かったよ~」

 ティアちゃんがいなかったら、まじで危ない所だった。ここで次の対応をどうするかさえ考えられなかったはず。

「以前ベインは魔王獣を使ってブリリアントシールドを壊そうとしていた。それならばまた攻撃をしかけてくると思っただけのこと。我が力を持てず弱いままだから、貴様らに負担をかけている。礼を言うのは我のほうだ」

 ティアちゃん的には当然のことをしたって感じぽい。それどころか強い力を持てていないことに責任すら感じているぽい。


「えらい、えらい、えらいよ~ティアちゃん」

 責任なんて感じなくていい、よしよしとティアちゃんの頭を撫でた。

 この赤い髪、なんて気持ちいいの。あたしが創造した通り。この見た目も……えへへへ

 そうして頭を撫でていくうちに、よだれを垂らしそうになるくらい二ヤついていしまう。

 

「やめんか! 子供あつかいしおって」

「してないよ~ティアちゃんが可愛いすぎるだけなんだから」

 子供あつかいされてツンツンしちゃうの可愛い。怒らすぎないくらいにツンツンしてもらうのもいいよね~


 あんまふざけてるとティアちゃんは機嫌悪くするので真面目モードに。

「ティアちゃんはどう思ってるの、あの巨人のこと」

「経緯はどうあれあれは対処すべき敵だ。そのために貴様らには力を行使してもらわねば困る」

「もちろんそうするつもり。でもさ、あたし達もちゃんと向き合わないと駄目だと思うんだ。ジャイアントブレイカーにとらわれている人のことを」

 創磨ばかりに任せてしまうのは違うきがする。あたし達もジャイアントブレイカーと闘うんだ。破壊力にとらわれてしまった人のことを考えたい。


「打ち切られたくない、そう考えるのことは当たり前だよ。イラストだって数字は大切。そうしないとそもそも見てもらえない。だから流行りにものる。自分のことをアピールができるんだったら、なんだってやるよ。一瞬でもいいなって思ってくれさえすれば、あたし自身を見てくれる人も増えるわけだしね」

 数字がとることができなければ、見ることさえしてもらえない。

 そのためにできることはなにかを考えて行動する。それも戦略の一つ。

 流行りにのるのは安易だという思う人はいてもいい。それでもあたしは流行りにのってでても、あたし自身を見てもらいたい。見てもらえること、それを考えるのが大切なことだから。

 

「たぶんそのことはあのジャイアントブレイカーに囚われている人達も解っていて、流行りにのって人気をだしたいって人の方がたぶん多いと思う。それでも駄目でも、もうどうしよもなくて、人気のある人から奪おうとしている。あたしも羨ましいって思ったことなんていくらでもある。この人みたいになれたらって、何度思ったことか」

 嫉妬してしまう瞬間なんてどんなタイミングでも起こりうることだ。特に自分と同じタイプの絵柄や描いてるキャラクターが同じだと、よりそう思ってしまう。

 

「どうしてあたしの絵じゃなくて。その人なの。わたしのことをみてよ。あたしのことを見て欲しい。そうすればもっとたくさんの人にみてもらえるのに……みたいな感じにさ」

 気持ちは痛いほどわかる。それでも向き合わなきゃいけない。

 

「嫉妬してしまう時、マスターはどうされるのでしょうか」

「あたしだって! みたいな感じでさ、嫉妬すらもエネルギーに変えちゃうことの方が多いかな。あたしなんて……みたいな感じで落ち込んでたら、モチベがなくなるんだけだもん。ていうか、あたしより人気ある人とか尊敬してるし、もっと学びたいと思ってる」

「絵麻は強いな」

「そうなんだろうね……でも創磨は違う道を選ぼうとしている」

 あたしのように嫉妬しても向き合える人ばかりではない。自分はもう駄目なんだと思って諦めてしまう人の方がきっと多いんだと思う。

 さゆちぃだって、そんな簡単に割りきれやしなかった。

 

 創磨はそんな人達の心まで寄り添おうとしている。正論を吹き飛ばすようなものを考えようとしている。

 

「弱さを大切にするのってそんなに駄目なことじゃないと思うんだよね。あたしに対してもそうだった。あたしが諦めようとした者を創磨は諦めなかった。だから今ブレイドと側にいられる。弱さを大切にしてくれたから救われるものがあった」

 もし創磨がいなければ、わたしは強さを理由にブレイドを捨てていたと思う。

 こうやってブレイドの姿を目に焼きつけることはできたのは、見捨てはしなかった創磨のおかげだ。


「あたしが大切なものすべてを守りたいと思えたのは創磨のおかげ。だからあたしは創磨を信じる。創磨なら弱さを大切にしながら強くなれると思うから」

 自分のことのように苦しむことで、きっと答えをみつけてくれる。

 根拠はないけどそう思える。それはあたしが信じる創磨なんだ。


「我は強くなることが正解だと思って、創磨にもそれを求めた。そのせいでより創磨は苦しませてしまったのだろうか……」

 魔王とはいえない弱気な声をティアちゃん漏らしている。正解のない灰色の後悔、そんなものに苦しめられていいはずがない。


「ティアちゃんは責任を感じる必要ないよ。強くなることも正解だと思うよ。創磨はそのやり方をとろうとしなかっただけ。ティアちゃんまで暗くなってたら、戻ってきた時困らせちゃうぞ」

 ビシッと、ティアちゃんに指を向けながら励ました。

 

「ふん、そんなこと解っておるわ……この事は創磨に伝えるなよ、心配されとうないからな」

 照れ隠しなのか、あたしに顔を見られないようにティアは後ろを向いた。

 

 こ、これは狙い所。

 

「やさしいな~ティアちゃんは」

 顔が見える場所まで近づいて、ティアちゃんのほっぺをツンツンした。は~なんてかわいい娘!

 

「そ、そんなことあるわけなかろう。誰があやつの心配なぞするものか」

 あ~っとこれは大きい。ツンツンホームランいただきました~きもちぃいいい~|

  

「すぐわたし達のもとにもかけつけてくれたよね。新兵器をひっさげてさ。ツンデレ祭りきたぁあああああって感じだったよ」

「さすがだよ~ティア」

 ブレイドも追撃。今までしてくれたことを振り返る度に、ティアちゃんはツンデレ製造機であることが明るみになっていく。

 

「貴様らがなんと言おうが心配なぞしておらぬ、しておらぬからな!」

 ティアちゃんは念を推すもののそれは逆効果。あまりのツンデレぷりにあたし達のニヤニヤは止まらない。いろいろと大変なことだらけだけど元気をもらえちゃうよ。


「貴様らはそろそろ寝て体力を回復させておけ。巨人が起きたら戦闘になる。そうなったら今は貴様らだけが頼りだ」

「あたし達だけか……うん、大丈夫。なんとかしてみせる」

「マスターとならきっとね」

 不安がないって言えば嘘になるけど、きっと創磨なら大丈夫。あたしは創磨がもう一度立ち上がることを信じるだけだ。

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