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8話 その先にあるもの ①

(なんでなにもしてやれなないだ)

 巨腕が逢夢に迫り、心が折れて絶望しかけた矢先、

「蒼破天狼撃!」

 逢夢を助けるために、ブレイドの蒼輝刀剣がジャイアントブレイカーの右腕に喰らいつく。

 

 狼の幻影、それは創造力が創り出したもの。それは巨腕すらも押し返し、ジャイアントブレイカーを退かせる。

 

 逢夢はブレイドがくれたチャンスを逃すまいと、その場から後ろにジャンプして撤退した。 


「なんで、なんで?」

 絵麻もまだ状況を飲み込むのに精一杯だが、

「創磨、闘う意思を持ってよ。消されたいの」

 ブレイドは原因が俺にもあるときずいているらしく、刃のような鋭い視線をぶつけてくる。

 危険を呼び込む行為をしているというのなら仲間であっても容赦はしない。激しい怒り、それは俺に対して向けられたもの。

 

 傷ついて、傷ついて、暗闇の中にいる臆病な心でも理解はしていた。

 この場にいる全員に迷惑をかけていることを。

 

「解らないんだ、あの巨人と同じ立場である俺が、あいつとどう向かいあえばいいのかを」

 創造の輝きが失われたのは、境遇が同じ破壊の炎をまとう巨人に対して闘えないと思ってしまったから。

 身勝手でどこまで自分勝手な理由。それを誇示することしかできずにいる。


(強くあれ、強くあれ、強くあれ)

 弱いままの自分でいるから、身勝手なことばかりを考えてしまうんだ。

 強くなろう。強くなろう。強くなろう。そう思っているのに、なにも変わらない。

 

 その間にもブレイドはジャイアントブレイカーを止めようと、何度も何度も足に向かって斬撃を繰り返していた。

 

 突如、ジャイアントブレイカーは大きく真上に飛んだ。

 自分の背丈の役半分の高さを飛ぶ。足の裏には溜め込んだ破壊の炎が濃色されいる。

 

 ジャイアントブレイカーが着地した瞬間、足裏の炎が白い床全体に広がり、破壊の炎が燃え広がった。

 

 破壊の炎はブレイドを襲い、ダメージを追いすぎないために後退を選択することしかできない。 

 

「グァアアアアアアア」

 ブレイドが離れるとうめき声をだしながら、ジャイアントブレイカーはブリリアントシールドに拳を叩きつけていく。


(止めなきゃいけないのに……)

 このままにしておくことはできない。それなのに俺はまだ決断できずにいた。



“ガガガガガ”

 突如巨大な光の壁が現れ、ジャイアントブレイカーを取り囲んだ。

 光の壁を創り出したいるのは6つの大きな柱。創造壁を創り出し、ジャイアントブレイカーの動きを封じこめようとしていた。


「まったく見ておれんな貴様らは」

 振り返るとティアがいて、あの創造壁を創り出す柱はティアが転移したものらしい。


「出力最大!」

 ティアの掛け声に合わせて兵器の出力が強くなると、創造壁がジャイアントブレイカーを完全に閉じ込めた。


「魔王獣を創りだした時にように、巨大な破壊力を利用してブリリアントシールドを破壊しようとするのは解っていた。これはそれに対抗して我が創り出した対巨大創造物用兵器だ。しばらくは動けまい」

 ティアが開発しておいたもの、それはベインの動きを予測していたからこそできたこと。


「いいところで邪魔をしてくれたなぁ」

「ベイン、貴様の思いどおりにはさせんよ」

 ティアは魔王らしく勇ましい。強くあれといった姿にふさわしい行動をしている。


「それはどうだろうなぁ。いつまでもつんだ、あの創造壁は」

 創造の輝きが創りだした壁の中で巨人は生きている。赤い膜が浮きでて創造壁を少しずつ壊している。

 

「動きが止まっている間に、対策を考えるだけのこと」

「せっかくだ。対策してくれてたことに免じて、こいつがぶち壊れまでの間は待ってやるよ。また楽しませてくれよ、レイター共」

 巨人の動きが封じられたことを気にもとめることなく、ベインはその場から消えた。

 とりあえず時間の猶予は与えられたといった所か。


「すまない、俺のせいで……逢夢やみんなに迷惑を」

 まずは迷惑をかけてしまったことを謝ることにした。もしブレイドやティアの助けがなかったら、逢夢を傷つけてしまう所だった。

 

「ベインのせいだよ。創磨は弱っていた所を狙われていただけ。様子おかしかったし」


「誰がどう見ても狙われたのは明らかだったもんね~わたしゃも創磨は責めるきはないよ。ジャイアントブレイカーに変えられた人達もだけど」


「打ち切られたくない、そんな純粋な想いをベインは利用してきました。それを自分に責任する必要はありませんよ」

 絵麻、ブレイド、逢夢はやさしい言葉をかけ、ベインが悪かったと思えばいいと諭してくれた。

 

 あまりにも優しい言葉。それはきずかいからだろうか、それとも本心なのだろうか……どちらでもいい。周りがどうであれ、自分の考えは変わらない。

 

「ベインだけが悪かった……やっぱりそんな風に思えない。ちゃんと向き合いきれなかった俺にも責任はあるよ」

 自分のことばかりしか考えれていない、あのベインの指摘は間違いではない。

 もし周りのこと考えれていたのなら、破壊力にのまれてしまうことはなかった。

 

「創磨、今は休みませんか」

 変身できなくなったのは俺のせいなのに、逢夢は献身的な姿勢を崩すことはない。

 それが逆に自分を焦らせる。このままではだめだと思わされる。

 

「それじゃあだめだろ。時間がないんだ、休まず考えないと。そうしないと逢夢が変身できないまま、ジャイアントブレイカーが……」

 今は休んでいるときではない。ジャイアントブレイカーを包む結界がなくなれば、今度こそ終わりだ。ちゃんとしないと。みんなは強い。俺も強くならないと。

 

「無理するなと逢夢は言ってくれておるのだ! 考える前に自分を見つめなおせ。我も貴様に強くあれと背負わせすぎた。頭を冷やすつもりでおるよ」

 目が覚めるティアの叱責、それは自分にも向けられたもの。自分自身を責めているティアが今は休めて言ってくれている。

 それにこれ以上迷惑をかけてどうする。自分の不甲斐な気持ちをさらけだすなんて、自分のためにしていること。他人のことを考えてはいない。


「解った。今は休むことにするよ」

 仲間達の言葉を信じて、今は休息をとることに決めた。


「わたしが創磨の近くにいます。絵麻達は今後のことを考えてくださると助かります」

「うん、今はしかたないよね。逢夢、創磨のことを任せたよ」

 絵麻達に見送られながら、俺は逢夢に連れられて家へと転移した。

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