7話 はじめての出版 ⑥
「さて、今日はどうなっていやがるかな」
灰色の瓦礫の山の上で、破壊王ベインはポテトチップスを食べながら、タブレットで人気漫画雑誌をみていた。
この漫画雑誌はアンケで転載順を決まる。
どれが人気なのか、一発で解かるようになっていいる。
「この展開、マンネリ化しすぎじゃねぇか。もうちょい楽しませてもらいてぇもんだなぁ」
マンネリ展開にいらつきながらポテトを食べ、ベインは読み進めていく。
物語が続けていくうちにやっていることを平均化されていく。
面白かったものが、だんだんとつまらなくなっていく。それから逃れることができる作品は少ない。
「てこ入れきたわ。これはもしかしすると、打ち切り路線か。あがいていやがるなぁ」
転載順が後ろにある作品のあがき。それをみてニヤつくベイン。
「露骨にきたねぇ。こんなにエッチなことさせてますよ。もっと人気が出て欲しいねってか」
人気を勝ち取りたいのか、これまでなかったセクシーシーンの連発。それを見ても、ベインは楽しそうにはしない。
「でもよぉ、こんなは他のでもみれんだよなぁ。楽しいやつらがするからいいんだよ。くそ興味沸かねぇやつらがしてちゃ無意味だぜ。もっと楽しませてくれよ」
飽き飽きした展開、ベインのページをスワイプする速度が早くなり、読み飛ばしていく。
「きたきた、今日がラストのやつ。こいつも終わちまうのか」
最後の転載作品。それは今週後で打ち切られ終わる作品。
物語を締めくくるエピローグ。今まで登場していたキャラクターが登場し、最後だけでも姿を見せようとする。
主人公とヒロインが未来への展望を語る。
この物語はまだだ続いていく。そんな作者の想いをつづるかのように。
気持ちの良い光。そうして主人公は言うのだ。
「俺達の闘いはこれからだぁあああ。連載、おつかれさまでしたぁ~」
アハハッハ、ベインは笑いながらその作品の最後を見送った。
「さて、ちょくらお礼参りでもしてくっか~」
ベインが転移した場所。それは打ち切られた作家の家。
その作家は自分の作品が掲載されていた漫画をみている。
「読者が楽しんでくれてるといいな」
何度も何度も見返しながら、読者のことをその作者は想う。
「終わっちゃったな~なにもかも」
その漫画家の部屋には、初めて自分の作品が掲載された雑誌が飾られている。
表紙には新連載とかかれ、打ち切られてみることのできない主人公がが描かれている。
期待の新作。そうしてデビューを決めたはずだった。
あの日のことは思い出している、眼の前にいる作家の表情は歪んでいく。
「もう少しうまくやれたらなぁ」
何回も、何回も、自分の連載作をみていく。
目は潤み、視界はぼやけ、涙が落ちた。
「ごめん、ごめん、俺のせいで。俺のせいで」
その作家は自分のキャラクターに語りかけ、後悔が続く。
「他のやつにもみせてやりてぇな。くくく、こんなにもこんなにも苦しんでますよってなぁ」
涙を流す人の前で、楽しそうにベインはその姿を見ていた。
涙しているす姿、それすらも楽しみの一つ。
物語のワンシーン、その一つとしか捉えていないのだ。
「まぁそんなこと、こちら側にはどうでもいいか」
ベインはその作家の前に姿を表すと、
「なんですか、あなたは」
その作家はベインが突然現れたことに驚いていた。
「俺か、俺は破壊王ベインだ。お前にチャンスを与えにきた」
「チャンス?」
「そうチャンス。連載を続けるチャンスさ。打ち切られたんだろ、お前の作品はなぁ」
「そんなことできるわけが」
「なら教えてやるよ……っていうのは、さすがに飽きてきたな」
いつもの展開、それには飽き飽きしたとベインは髪をかきみだす。
「何を言い出してるんですか」
「いつも同じことやるのもなぁて。それじゃあつまらねぇだろ。つまらないやつだと思われるのは嫌なんだよなぁ」
望んだものをみせて、その相手を破壊力の虜にする。それはこれまでもしてきた方法。
つまらない、つまらない、つまらない、ベインは次の手段を考える。
「せっかくだ、インタビューの時間といこうじゃねぇか。どうしてこの漫画を?」
「は!? いきなりなんですか?」
「いいじゃねぇか、それくらのことを教えてくれても。このままじゃお前はモブ以下。個性を引き出しときてぇんだよ」
「意味がわかりません。わたしおかしくなちゃった?」
その作家はあまりにも現実離れしすぎた出来事、そしておかしなことを言い出すベインにより、自分までもおかしなことを考え、頭を抱えはじめた。
「だったら、こういうのはどうだ」
ベインは破壊力を増幅させ、あるキャラクターを創り出す。
「え、不知火君」
「そうだ。僕は不知火だ」
作者が主人公として創り出した、秋山不知火の形をした存在。
本物か偽物か、そんなことはどうでもいい。その姿さえしていればいい。
「これって、どういうこと」
「落ち着いて、僕達はチャンスをもらえたんだ」
「チャンス?」
「そう連載続けるためのチャンスだよ。力を貸して、もう一度君に描いてほしいんだ」
不知火の形をした存在が作者に望むのは、もう一度描いて欲しいと言う想い。
純粋で汚れのない。切実な想い。
「連載を続けたい。また描きたい」
苦しめられて得た答えではない。切実な想いからくる感情。それは純粋な破壊力を創り出す。
「そうだよ。その純粋な気持ちを輝かせてくれ。奪おうすべてを」
「奪う、すべて、わたし達のために」
憎しみからではない、希望から創り出された破壊力はより大きな力を創り出した。
作者の精神は破壊球となり、ベインの手元へ。作者は深い眠りについていた。
「苦しみのない破壊力。こいつは悪くねぇ。やっぱり色々と試してみるもんだよなぁ」
また一つベインは新しい楽しみを見つけた。
「まだまだこれくらいじゃ足りねぇ。奴らを相手にするならもっと……楽しみだぜ、この純粋なもんからどんなものが生まれてくるかがよぉ」
ベインが望むのは破滅から得られる希望。破壊力の可能性は広がり、より大きな破壊力を創り出されようとしていた。




