7話 はじめての出版 ②
先に動きだしたのはブレイドだ。獲物をとらえようとする狼のように風をまとい走りだす。
ブレイドは接近戦を得意とする。このまま接近されれば不利な距離で戦うことになる。
「創造の弾花、クリエイト・ショット」
接近を許すわけにはいかない。クリエイトは手のひらに集めた創造の輝きで創造球を創り、連射した。ブレイドにヒットさせることを最優先、通常よりも弾速と連射力を向上させる意識を持って撃ちこんでいく。
さらにブレイドの足止めをする形で常に手前に撃つようにさせている。狙い撃って当てることができるのが一番良いが、あれだけ早い動きとなればそうもいかない。狙うよりも数にまかせて攻めていく。
「それじゃ当たらないよ」
しかしそれだけでブレイドは止まらない。それどころか無数の創造球が降ってくる地点にあえて踏み込んで創造球を斬り払いながら進んできた。スピードに自信があるからこそ、ここまでのことをしてのけれる。楽しむと言っていたのは口だけじゃないのかよ。
ただこちらも黙ってみているだけじゃ、ただやられるのを待つばかり。
(数が足りないのなら……)
(数を増やせばいいだけです)
俺とクリエイトのの意識がシンクロし、創造の輝きを望み叶える力となる。
「創造の残花、クリエイト・リメイニング」
両手を叩くと同時に想いを込めた創造の花びらが吹き上がり、クリエイトの分身体を創りだした。分身体はそれぞれ散らばりブレイドを取り囲む。スピードで追いつけないのなら数で勝負だ。
ブレイドを迎えうつにあたって大切なのはおそらく距離感だ。いくら早いとはいえ、接近さえさせなければ強烈な一撃されない。対してクリエイトは近中距離どの距離からでも手痛い攻撃を与えられる。後はうまく動きを止めることさえできれば。
「創造の弾花、クリエイト・ショット」
ブレイドを包囲したクリエイトの分身体はブレイドに向かって創造球を撃ち出していく。
さきほどよりもさらに密度が高く、死角からの攻撃も可能。これならどうだ。
「これが新しいクリエイトの技だね。いいね~楽しくなってきたよ」
かなり追い詰められた状況になったはずなのだが、ブレイドも隣にいる絵麻も目を見開きながら笑っていた。
「蒼の旋風、蒼破旋風斬」
ブレイドは回転斬りをすると刀から蒼き風の刃が生まれた。その風の刃はあらゆる方向から迫る光球を斬り進んで攻撃を無力化してくる。
そうか、ブレイドにはこの技があるのか。そうなると遠くから包囲戦をしかけても無力化されるだけ。動きを完全に止めるにはいたらない。
(遠くから直線的な攻撃をしても止められないか)
(どうすれば……)
(中距離でで分身体を使った時間差攻撃をしよう。的を上手く散らせて戦うんだ)
(わかりました)
分身した三人のクリエイトがブレイドを襲う。一人目は右手に創造の輝きをためこみながら背後から接近、二人目はクリエイト・ショットで光球を撃ち出す。二人めは上空からといった具合だ。
近づかれはしているものの包囲はできている状態。一方的に状況が悪いというほどでもなかった。
多角的な攻撃への対抗策としてブレイドは脚を止めて創造球をはじいていく。目が死んでおらず諦めてはいない。わざと攻撃を集中させているようにも思えるが、攻撃の手を緩める必要はないだろう。
二体の分身体がある程度接近すると、それから逃れるようにしてブレイドが地面を蹴って飛びあがった。
背後にいた分身体は常にブレイドを追うように動かしていたからか、そのジャンプに合わせて飛びあがる。
しかしそれはあまりにも露骨すぎた。ブレイドは背後から迫ってきた分身体に狙いをさだめて空中で軌道を変えた。
分身体は向かってくる飛び道具に反応できるくらいはできるのだが、空中でも鳥のように素早く動くことができるブレイドには反応すらできない。またたくまに3体の分身体はブレイドによって斬り裂かれた。
次に狙われるのは本物のクリエイト。分身も創っている余裕はなく、もう迎えうつしかない。
直上から降ってくるブレイドはこちらに狙いをさだめると、蒼い輝きを強く放ちはじめる。
あれは絵麻とブレイドが使う技『蒼破撃』、このまましとめにくるきだ。
守りに徹してもスピードで負けているゆえに最終的には逃れることはできない。それならば反撃したほうがまだ勝ち筋をひろえるか。
「創造の衝花、クリエイト・インパクト」
クリエイトはブレイドの攻撃を迎えうつために、右手に創造力を集めた。
全身の体温があがり緊張がはしる。模擬戦とはいえこの戦いの勝敗がここで決まる。どちらが上でどちらが下か、それがはっきりと決まるんだ。
「蒼の一刀、蒼破撃」
ブレイドは蒼い風の風力をあげてさらに加速、獲物を捉えるハヤブサのように飛来してくる。
肉眼でみえているのはレイター化したクリエイトのおかげ。そうでなければあんな速度のものをとらえられるはずもない。
拳と刀、二つの創造力がぶつかりあい、火花みたいに無数の輝きが辺りに散らばっていく。
意地と意地の張り合い。勝ちたいという想いはどちらにもある。
それでも勝者はどちらか決まってしまうもの。
(徐々にクリエイトの方が押されている。互角だと思っていた。でもやはり……)
「く!」
クリエイトの右手が大きくはじけ、大きな隙をさらけだす。
「そこです!」
ブレイドが刀を振り上げたその瞬間にクリエイトは手を伸ばすも……
「勝負あったね」
伸ばした手は空をきり、クリエイトの喉もと寸前でブレイドの刀が止まっていた。
首元寸前で刀を止める余裕すらあるなんて。これは完敗だな。
「あたし達の勝ちだね。イェイ!」
強豪高校にはじめて勝った学生達のように、絵麻はブレイドの勝利を両手を天高く伸ばして喜んでいた。
「クリエイトも強かったよ~今回勝てたのは接近戦では分があったて感じだろうし」
「瞬時に創造力を高めるのは、ブレイドの方が得意だと感じました」
「力比べっていうなら、お互いの最強の必殺技でもぶつけあってみてもいいかもね」
もっと強くなりたいと思っているからなのか、ブレイドが再び勝負をもちかけると、
「それいいね。どっちの本気が強いかやってみるのも面白そうかも」
絵麻もぐるぐると腕をまわしながら、その提案を後押しした。
「それは止めておこう。力を比べをした所で強くなるってわけじゃないし、興味本位でやるようなものじゃないし」
「創磨達がやる気しないっていうのならしかないね。全力でぶつかりあってみたかったんだけどな~」
勝負をせがんでくるようなことはしてこなかったけど、ちらちらとこっちの顔を絵麻はみている。子犬というよりかは、獲物を遠目からみる狼だな。理性をなくしたらすぐにでもとびかかってきそうだな。
「疲れちゃったから休憩。てか今日お休みなんだし遊びにいこうよ。勝った、ご褒美ご褒美♪」
「この程度で褒美だと」
「え~もしかしてないの。めちゃくちゃはりきってやったのになぁ」
「言語道断、これから特訓だ……と言っても貴様達はやる気になれんのだろ?」
「マスターが遊びたいというのなら遊ばせてあげたいな~いつも頑張ってるんだよ~」
勝ったことを引き合いにだして、遊びたいと絵麻とブレイドはせがみ始める。
子供ぽい口調にわざわざしてふりふりと手をふりながらリズムまでとっている。さっきまでの戦いがまるで嘘であったかのような緩みっぷり。
「……しかたないか」
「やった~!」
こうまでなっているとさすがになにをやらせても駄目だと判断したのか、ティアは嫌々ながらも絵麻の要求を受け入れた。
「絵麻はどこかいきたい場所あるのか?」
「う~ん、あたし的にはみんなで遊べればどこでもいいんだけどね」
遊びたいと言いいはしたけど、ノープランだったのか。
「なんの予定もたてずにそのようなことを口にしだしたのか」
「こういうのって勢いが大事だと思うのよね」
なにも調べないまま行ってみたけど意外にも面白かった、みたいなことを絵麻は期待してそうだ。
「愛知平和公園で花見でもしませんか」
どこへ行こうか迷いはじめてたら、逢夢は桜の花見に行きたいと提案してくれた。
「ちょうど桜も満開だし、みんなでいこうか」
「賛成!」
研究施設から転移、現実世界へと戻り愛知平和公園で花見をすることになった。




