1話 誕生、レイ・クリエイト ⑥
色も匂いも風も水も、すべての生命が存在しないすべてが暗闇の世界。
地獄や天国なんて生ぬるい、すべてが無、すべてが終わった世界にそれは存在していた。
この創造は創造主に創られた時から運命が決まり、敵として敗北するために創られた。
なにも報われることなく創造主に利用され、今はその自覚がないまま限りなく無に近い場所に漂っている。
――お前だな、創造神共につながる創造は。
そんな哀れな創造に目をつけたものがいた。それは創造とは真逆、破壊の意思の根源だ。
破壊の意思の根源は無に近い創造に接触すると、その創造に赤い破壊の意思を灯していく。
破壊、破壊、破壊――すべてを破壊するその輝きは無すらも破壊した。
無にいた創造はきがつくとビルの屋上にいた。空は暗いが光輝く町並みにには明るい光が灯っている。それを見てこの世界は平穏が当たり前だと無にいた存在は解釈をした。それどころかすでにここがどこかすらも理解し、自分がなにもであるかすらも思い出していた。
「貴様だな、我をこの創造主共がいる世界に呼びだしたのは」
「理解が早いじゃねぇか、魔王ディアボロス」
無の世界にいた創造は、物語の中で魔王ディアボロスと呼ばれていた存在だった。何万もの血を吸って創られた赤い鎧と兜、夜すらも恐怖する漆黒のマントを身につけている。
「俺の名はベイン、破壊王ベインだ」
無を破壊し魔王ディアボロスを呼びだしたのは、破壊王ベインと名乗った。
擦り傷がやたらと目立つ黒色の上着とズボンを着ている。特に服装をきにしている感じでもないのに、見た目が悪くみえないのはスマートな身体ゆえであろう。
赤黒い髪、楽しそうに笑う赤い瞳からは、隠しきれない破壊の衝動を感じさせる。
それでいて女子だけではなく、男性からもかっこいいと思えるような顔つきをしている。遊び人ぽい雰囲気を感じさせ、親しみのある雰囲気もあった。
子供のような無邪気な感性をさらけだし、これから起こるであろうことにワクワクしている。
「ベインよ、なにゆえに貴様は我を呼び起こした」
「創造主から魔王達を救う手伝いをしてあげようと思ってね。恨んでるんだろ、魔王を創り続けるあの創造主達を」
「長年にわたり我ら魔王達は創造主共にいいように使われてきた。我を創り出した創造主もその一人。許さんぞ!」
魔王ディアボロスは赤い破壊の意思を噴き上がらせている。怒りの炎、それはまったくおさまる様子はない。むしろ目覚めたことでよりそれが強くなっていく。
「いいねぇ、それくらい本気じゃなきゃ楽しくない」
「楽しくないだと?」
「俺にもお前を手伝うメリットがある、それは楽しむことだ。そうでなきゃ、こんなことする意味はねぇからなぁ」
激しい怒りを噴き上がらせる魔王ディアボロスとは違い、破壊王ベインは開園したショーでも観てるかのように楽しそうに笑っていた。
「これ食べるか。じゃがりんこ、このさくさく食べれる感じがうまいだよなぁ」
「ふざけているのか貴様は」
「俺はいたって普通さ。肩の力をずっと入れていたら、楽しくねぇからなぁ」
サクサクと食べれる長細いじゃがいものスティク、それをベインはさしだすも破壊王ディアボロスは受け取ることはなかった。
「大事なことを忘れる所だった。てめぇにも破壊力を与えてやる」
破壊王ベインは赤い破壊の根源を手からつくりだし、それを魔王ディアボロスの中へと注ぎこむ。
「俺の破壊力を流しこんだ、これでてめぇにも破壊力が扱える」
「かってなことをしおって……まぁいい、この力で我の願いを叶える。魔王達のためにもな」
勝手なことをしたベインに腹を立てはしたが、魔王ディアボロスは自らの願いを叶えるために動きはじめた。
「いたぞ、この世界にも破壊力をもったものが」
兜の中に隠された赤色の眼球を輝かせ、破壊力が増大している場所を発見した。
沸き立つ怒りによって赤い煙が間欠泉のように吹き出し続けている。その煙は破壊力から創られて、普通の人間には見ることができない。
自分がどんな状態に陥っているかすら理解していない、そんな破壊力を創り出す人間の家へと魔王ディアボロスは侵入した。
「なんだお前、どこから!」
「我は魔王ディアボロス。その破壊力を利用させてもらうぞ」
家の中にいた青年は突然の来訪者に驚き腰をぬかす中、魔王ディアボロスは兜の中に隠された特殊な眼球を赤く光らせ、驚き転げる青年が望む幻をみせていく。
「これが俺の望み。欲しい、俺だって結果が!」
その男は結果が出せずに落ちこんでいた。努力して努力して積み重ねてきたものが一瞬でなにもなかったことにされ、それゆえにそうならなかった未来を欲した。
「貴様も未来を変えたいというのだな。ならばその望みを叶えるため、我の力となるがいい」
魔王ディアボロスはかかげた破壊球に欲望の虜とった男の破壊力を集め、破壊球を赤く染めあげた。
怒り狂う豪炎のように燃える破壊力。それは願いを叶えたいという意思が創り出したもの。
「創造は罪だ、罪は消し去らねばらない。それが我のすべきことだ」
魔王ディアボロスは闇夜を駆け抜けていく。自らの願いを叶えるために。




