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6話 友に描く答え ③

 考えはじめて1週間、あたしの物語にとって大切なものがなんなのまだ決められていなかった。

「でてこないか~トントン拍子でいかないもんだね」

 創磨と話した時はこのままいけそうな感じがあったけど、そうはいかないもんだねぇ。それでも落ち込んでる感じはあまりしない。

 

「そういう時はこれこれ。やっぱ戦闘シーン描くのも楽しいなぁ~」

 漫画の中で戦闘シーンは物語の影響をあまりうけない。ネームもつくって、戦っている時のブレイドの姿を思い出しながら戦闘シーン中心の漫画を今は描いていた。

 

 ブレイドが闘う姿。それはイラスト単体ではなかなか描けないもの。

(漫画描いている時の、キャラクターが動いてるこの感じがいいんだよね~」

 どう斬るか、どう避けるか。いろいろ考えながら思考が進んでいく。

 

「できたけど、う~ん、まだ足りない感じするな」

 自分が描いた戦闘シーンと、天上先生が描いたナイリバの戦闘シーンと見比べながら、まだまだ足りないものがあると思えてしまう。

 話がまとまったとしても肝心の漫画のレベルが低ければば、漫画の魅力は半減してしまう。


「基本はできてると思うんだけど、もうちょい派手な感じにしたいんだよね。。

 今までなら描けるだけで満足してたけど、相手との間合いや時間の流れが感させもっと臨場感を伝わる感じにしたい。

 

「ちょい資料増やしたいな~。忙しいかもだけど、さゆちぃに明日お願いしてみよ」

 資料を増やしてよりアクションシーンのレベルを高めたい。資料作りのお手伝いをさゆちぃにお願いすることに決めた。

 

 翌日の昼休み、さゆちぃの予定を聞いた。

「さゆちぃ、修了式後って予備校あるんだっけ」

「予備校はないよ、春休みのほうが多いくらい」

「じゃあ家にこない」

「なにするの」


「ちょいとばしばし斬りあって欲しいんだよね」

 かなり省力した言い方、ばしばし斬ってるジェスチャーつき。普通なら何? って感じなんだろけど、

「コスプレしてばしばしってことだね~資料づくりのためだよね」

「察しがいいですな~」

「そりゃあ小学生からのつきあいだしね。あたしも何度か手伝ってもらってるし、いいよ」

 さゆちぃはすぐにあたしのやりたいことを察してくれて、今回もさゆちぃに協力してもらえることになった。


「おじゃましま~す。あいからわずの散らかりよう……って、散らかってないじゃん!」

 修了式が終わってからすぐ、さゆちぃをあたしの家にお出迎え。廊下が散らかってないことにめちゃ驚かれた。

 

「ふふふ、あたしも目覚めちゃったのよ、掃除という概念に」

 ようやく掃除もできる女(嘘だけど)をアピールしてたら、

「あなたがお友達のさゆさんだ~」

 ブレイドとさゆちぃが出逢うと、さゆちぃは覚醒した。

 

「えええええ! どうしてとこんな可愛い娘がえまちぃの家にいるの!」

 さゆちぃは可愛い娘には目がなく明るさが二割増し、すごい叫んでた。そういやブレイドのこと紹介してなかったけ。


「創磨の知り合いで、住む所困っている人がいるって聞いたからあたしが家で雇うって感じにしたの。お世話係兼アシスタントって感じかな。両親にも話は通してるよ」

「ふ~ん、そんなこともあるんだ」

 ちょい懐疑的なニュアンスを感じる返答だけど、なんとなってるぽい感じ。

 創磨、サンキュー!

 

「はじめまして。わたしゃはブレイド、マスターの世話係をさせてもらっています。さゆさん、いつも学校でマスターと仲良くしてくれてありがとう~」

 あたしの設定に合わせて、お世話係としてブレイドは自己紹介をしてくれた。

 

「ブレイドさん、はじめまして、堀北さゆって言います。えまちぃとは小学生から仲良くさせてもらっます。よろしくお願いしますね」

 さゆちぃはブレイドに丁寧におじまでしている。ちゃんとしてるな~


「ブレイドさんって、本名はなんと呼ばれるのでしょうか」

「蒼輝刀剣と書いて、ブレイドって読むの。だからわたしゃのことはブレイドって呼んでね」

「そう呼ばれたいってことでいいんだよね」

「うんうん、あたしもそう思ってるから」

 ビシッと親指を立てながら、ウィンク。はいはいといつものようにさゆちぃは納得してくれた。


「これあたしの漫画、戦闘シーンの練習に描いてみたんだ」

 タブレットを渡して、描いた漫画をさゆちぃにみせる。こうやって漫画をみせるのはひさしぶりだな~

 

 最初にみせた時はすごく嬉しそうにみてくれたのを覚えてる。イラストもそうだったけど、さゆちぃに絵をみせるのは昔から好きなんだよね。

(あれなんでだろ)

 いつもと違う、さゆちぃの顔から笑顔が消えている。怖いものでもみてるみたいだ。

 

「なんか変なとこあったかな」

「そんなことないよ。ちゃんとやれててすごいと思ってるよ」

 嘘は言ってなさそうだけど、怯えたままなのは変わらなかった。

 

「もしかしてこのキャラって、モデルがブレイドさん?」

「そだよ」

「やっぱりそうなんだ」

 ブレイドの話題を振り始めると、さきほどまでの怯えた目が嘘みたいに明るくなっている。急変したことに疑問は残ったけど、追求した所でさゆちぃを困らせるだけなきがする。


「もうこの戦闘シーン完成でよくない?」

「まだまだ、これじゃあなんか微妙な感じすんだよね」

「えまちぃきびしすぎ。頑張りすぎだよ」

「そうかな~あたし的には微妙なままにしとく方が嫌なんだよね」

「えまちぃすごいな~」

 さゆちぃ的には今のあたしの漫画でもいけてる感じみたいだけど、あたし的にはまだまだ伸ばし所がたくさんある。

 締め切りがあるなら多少の妥協はしかたなしだけど、今はそういった状況でもない。

 もっと良いものを描くために、すべきことはしないと。


「後、こっちの方も見て欲しいんだけど」

「今度は文章だね。これがもしかして書いてもらったやつ」

「そうだよ」

 さゆちぃは創磨が創ったあたしの物語を見ていく。

 

「イラストレーターと剣士の関わりあい、こんなの書けちゃうんだ。絵咲ちゃんもいるじゃん」

「それ、看板娘を漫画で書けるのも楽しみでさ~」

「羨ましいな~これならすぐにでもこれを元に漫画を描けそうだけど、まだ満足してないんだよね?

「特に創磨が納得してない感じ。すごいよね~あたしのことなのに全然妥協するきないなんて」

「ふ~ん、そこまで信頼できるんだったら、大切なことだっけ、それも考えてもらえばいいじゃん」

 漫画の出来栄えをみた後だからか、再度創磨に頼んでみればいいとさゆちぃは言ってきた。


「妥協したくないからあたしに任せたいんだと思う。さゆちぃ的にはやっぱあたしに無理して欲しくないって感じなままぽいよね」

 以前学校で話した時と変わってない感じか。心配してくれるのは悪いことではないんだけど、あたし的にはちょっと複雑。応援して欲しいっていうのが本音かも。


「才能がないのに無理して頑張るなんてやめた方がいい、そう思うのが普通だと思うよ」

「それが思うのが普通かも、でも、それをしたらあたしらしさが薄くなる。だからあたしは挑戦するつもり」

 確かに才能があった方がいいとは思うけど、頑張らない理由にしてはいけないと思う。

 描きたいものを描くためには妥協しない、あたしはあたしでいたいから。

「さすがマスターだよ~」

 それをブレイドは受け入れてくれている。ブレイドのためにも頑張らないとだね。

 

「ブレイドさんも資料作りに参加されるんですか」

「もちろんだよ~マスターのためになることがわたしゃの使命なんだ~」

 本来の目的である資料づくりへと着手するために撮影部屋へ。

 そこにはすでに衣装が用意されており、着替えてもらった。

 

「絵麻がデザインしたバトルコス、めちゃ可愛いじゃん」

 絵咲ちゃんのバトルコスチュームをさゆちぃは着てくれた。あたしのデザイン、きにいってくれたみたいで嬉しいな~

「ちょい胸周りがゆるい感じがするから、盛り盛りしますか」

 さゆちぃはないわけではないんだけど、ちょいあたしよりも小さめ。ただ背丈はほとんど同じなのでバットをいれたら違和感なしだ。

 

「さゆちゃんめちゃ可愛いよ~」

「そんなことないって。も~う、照れちゃうな~」

 さゆちぃは意外と照れ屋で、可愛いと思われること慣れない感じでいる。


「ブレイドさんも、めちゃ可愛いですね」

「マスターが創ってくれたからねぇ。マスターのおかげだよ」

 ブレイドはいつも変身しているものと同じ青いバトルコスチュームを着ている。あたしが創造した通りの服の質感を再現しており、見た目だけなら本物と同じクオリティだ。

 

「写真撮らせてもらっていいですか

 コスプレ会場のノリでさゆちぃは写真を撮りはじめている。楽しそうにしてくれて良かったなぁ。まぁこれから頑張ってもらうわけだけどね。

 

「それじゃあばしばしはじめちゃおうか」

「よろしくおねがいします」

 資料作りのために、さゆちぃとブレイドは剣をぶつけあうふりをしてくれる。

 

 さゆちぃの剣の振り方はブレイドと違って基本ができていない。剣を振るう機会なんてない、できないのが当たり前。しかしそれが資料づくりには必要なこと。

「こんな感じでいいの?」

「うん、変にうまぶらなくていいからね。素人くさい感じのほうが剣に振り回される感じだせそうだし」

「そのためかい! まぁいいや、めちゃ楽しませてもらってるしね」

 素人ぽさをだしてくれた方がいい。さゆちぃは持てるすべての力を使って、ブレイドとばしばしやってくれた。

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