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5話 残されし想い ⑧

 土曜日、創磨とティアと共に駅へと向かう道を歩いていた。

「絵麻とブレイドはこられないのですね」

「漫画の方を今回は優先させるそうだ」

 配信活動のことばかり考えていたので周りのことをきにする余裕はなかった、絵麻も新しいことを頑張っている最中のようです。


「ティアは今日どこへ行くか、聞かされているのでしょうか」

「当たり前であろう。でなければ、わざわざ行くきにはならん」

「ティアは秘密にしたら、誘いを断れると思ってな」

 創磨はティアに対して、行く場所を話しているらしい。

 

「逢夢には伝えておらんのか」

「秘密にした方が想像の余地があると思って。どこに行くと思うか、今日までずっと考えてくれてそうだけど」

「さすが創磨です、わたしのこをを解りすぎています」

「逢夢を創り出したのは俺だからな。逢夢が楽しめる方がいいと思っただけだよ」

 創磨のはからいによって、今もどこへ行くか楽しみになり、

「早くいってみたいです」

 道沿いを歩くスピードは自然と早くなる。

 ティアが行きたがって、創磨が案内したい場所。想像するだけで楽しみでしかたがありません。

 

 道沿いを進み、大きな横断歩道を渡ると希望ヶ丘駅にたどり着いた。

 そこから待ち時間を含めて電車を乗り継ぎ三十分。上前津駅に到着した。

 

「ここはずっとわたしも行きたいと思っていました」

「有名な場所だから逢夢も知ってたか」

「ここは、名古屋のオタク街『大須商店街』がある場所です」

 駅の名前、それがアナウンスされた時にはすでにきずいていました。早く色々なお店を回ってみたいです。

 

 大須商店街は日本三大オタク街の一つ。

 食品や雑貨、食べ歩きのお店、様々な多国籍料理等、一般向けのお店も数多く並んでいるが、それに加えて、アニメグッズ、フィギュア、漫画、ラノベ、トレーディングカード、レトロゲーム、同人誌、コスプレグッズ等を扱う、ショップも数多く並んでいる。

 創磨がここへ通っていた記憶はわたしの中にも残っており、この駅を出てから見覚えのある場所だと感じてしまうほどだ。


「早くいきましょうよ」

 今のわたしはきっと、はじめて創磨がこの場所に来た時と同じような表情をしているのだと思う。早くこの場所を歩いてみたい、ワクワクした表情を隠すことなく歩みを進めた。

 

 駅から少し歩いていくと招き猫の像、そして屋根つきアーケード街の通りが見えてきた。

 『大須新天地通』という看板、それを通りすぎていくお店の数が一気に増え、

 飲食店やドラッグストアそういったお店と共に、『駿画屋』と書かれた看板が見えた。

 アニメグッズ、プラモデル、フィギュア、DVD、CD等、各階層に何が置かれているのか、書かれている。

 

「まずはここに入ってみるか」

 ビル中に入り、エレベーターで店内へ。


「お~、こんなにもたくさんのプラモデルとフィギュアがありますよ」

 店内には多くの棚が置かれ、そこには中古のプラモデルとフィギュアが箱の状態のまま並んでいる。

 創磨の家の付近にはこれほど多くのフィギュアを扱うお店は存在していなかった。見てるだけでテンションがあがります。


「これは、限定販売されたものではないか」

 それはわたしだけではなく、ティアもロボットが描かれたパッケージを見て、唸り声をあげていた。


「とってもかっこいい見た目をされていますね」

「当然だ。この見事な駆動部と造形美、これほど完成度が高い機体は中々ない。すべてが原作を再現しきっておる。変形機構のギミックも鮮やかだった。シンプルな動きだけそれを完結する技術力、これは他社にはだせぬものだな。原作でこの機体は……」

 と、ティはある程度語った所で、急に顔を真赤にして我に返り口をつぐんだ。


「あれ? どうされましたか」

「しゃべりすぎてしまっているのではないかと思ってな。うざいと思っておらぬか」

 自分だけが一方的に話してしまったことを、ティアはきにしていたみたいです。


「全然思ってませんよ。好きなものを語ってくれのは、大歓迎です」

「聞いてみたいな、もっとこの機体のことを」

 ティアの話をもっと聞きたい、そうお伝えすると

「貴様らがそれほど聞きたいというのなら、話してやろうではないか」

 腕を組んで、再び熱弁をふるってくれる。そんな姿をわたし達は微笑ましく見てしまうのだ。

 

「こんなにもフィギュアもあるだなんて」

 フィギュアの棚にいくと、フィギュアの箱がずらりと並んでいる。

 わたしが知っている有名な作品のものもあれば、わたしが知らない作品のフィギュアもある。

 それが所狭しと並んでいる姿は圧巻だ。


「他の店にも行ってみるか。まだまだここ以外にもお店たくさんあるし」

「そうしてみたいです」

 他の店がどうなっているかもきになり、駿画屋を出て、大須新天地通を再び直進し次の店を目指す。

 

 大須商店街は大きな商店街ということもあり、10人程度歩いても大丈夫な程度には通りの感覚が広く、左右に店が立ち並んでいる。

 パソコンショップ、カードショップ、飲食店、雑貨店、ゲームセンター……様々なものが立ち並び、老若男女関係なく多くの人が行き交う。どこに視線を向けても活気に満ちていた。

 

「ここだな」

 しばらく直進していくと、大きなテナントビルが見えた。

 スーパーのように横に長く、様々なお店がそこで出店している。わたし達が目指すのはその二階。

 

 アニメグッズ、漫画、同人誌、フィギュア、プラモ、これでもかというくらい中古のグッズ類を扱う『らしんがん』というショップがあり、店内へと入った。

 

「なん……だと……」

 通路を歩いても歩いても、途切れることなく大量のアニメグッズやフィギュア達がびっしり並んでいる。

 陳列の仕方も見事だ。カテゴリー別けがしっかりされ一目でなにがあるのか、その作品のキャラクターが映える飾り方をしてくれている。

「ここは天国ですか」

 あまりにも良きすぎて、天国に迷いこんでしまったかのようだ。


「テラステラやナイリバもこんなにフィギュアを出されているんですね」

 プライズ品の比較的な安価なものが多いが、中にはスケールフィギュアという高いフィギュアもある。

 学生服、水着、変身した姿、原作を再現したシーン、様々な形でフィギュア化されていた。

 

「さきほどのお店もそうでしたが、今の作品ばかりではなく、昔の作品も扱ってくださっているのいいですよね。今でも大切に作品のことを思ってくれている感じがして」

「思い入れのある作品って、見える形として残して置きたいっていうのがやっぱりあるからかな。大切にしたいっていう想いは簡単に消えるものではないから」

 大切にしたいから手元に見える形で残しておきたい。フィギュアやアニメグッズなんかがあるのは人間のそんな願いが生み出してくれたもの。

 

「わたしそんな風に大切にされてみたい……わたしもフィギュアになってみたいです」

 大切にされたいという想いがこみ上げて、物語のキャラクターとしてフィギュア化されてみたいという願いを自然とつぶやいていた。


「あ~それは絶対みてみたいなぁ」

「変身前、変身後もあって、戦闘シーンもみたい。後はこのフィギュアみたいな和服、水着なんかもいいですね」

 フィギュアの箱達をみながら、自分がフィギュア化された姿、そしてそれがたくさんの読者にみられる姿を想像した。


「みんなに飾られて、あんな所やこんな所まで見ていただけるのですよね……」

 見られたい、見られたい、そう思うたびに

「///////////」

 顔を真赤にして照れてしまった。

 

「なにを考えておるのだ貴様は」

「ティアはあんな所やこんな所まで見られたくないんですか」

「そんなわけなかろう。まさか貴様は見られたいと」

 こくりとうなずくと

「////////////」

 たくさんの人に見られることに照れて恥ずかしくなってしまうのだ。

 

「エロガキめ」

 ティアはわたしではなく、創磨の方を軽蔑するかのような視線で睨んでいる。これはわたしがなんとかしなければ。

「創磨はエロくなんてありません、健全なんです!」

 ティアの主張に完全対応、創磨のフォローを完璧にしうる宣言をした。


「っていうことにしとこうか。それに、逢夢が照れている姿を見てエロいだなんて思う方がエッチだと思うけどな~」

 確かに、そう思わせるような創磨の発言がティアを襲う。

「ぐぬぬぬぬぬ」

 ティアは歯を強く噛み、真っ赤なりんご顔になっている。エロいことを自覚されてしまったよう。そんなティアも可愛いです。


「これもこれも欲しいのばかりで……」

 ティアが照れて真っ赤になっている間、かごの中に勇気未来のグッズとフィギュアが入っていく。手が止められません。

「逢夢も未来のこと好きだよな~」

「創磨がたくさんグッズを持っているの、羨ましくて。わたしも欲しいな~と思いまして」

「似たようなものが創磨の部屋になかったか?」

「ティア、これは推し応援したいから買いたいんだよ。同じものじゃない、逢夢が決めて逢夢が推したいから買うんだ」

 推しを推すために、さすが創磨です。わたしの心理理解してくださっています。


「ティアも買いたいのあったら買ってもいいぞ。ほら、ここにたくさんセラフ様のグッズあるし」

「それはすでに持っておる……まぁこれは持っておらんが」

 ティアはわたし達の目をきにしながらも、推しであるセラフ様のグッズを購入されている。それは見ているだけで幸せな光景。

 推しを推すために、いつかわたしもこんな風に誰かに押されてみたいですね。

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