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4話 共に未来へ ⑥

「やっぱりこんな程度か。できそこないからできたものは、できそこないでしかねぇな」

 闘いが終わった直後、特にベインは悔しがる様子もない。挑発的な言葉で煽ってきた。

「そのできそこないを創ったのは、貴様の力によるものだが」

「あれが? クッハハハ、おいおい舐めてもらったら困るなぁ。あんなの倒せて当然。なにせてめぇはまだ世の中のやつに見られてすらいないお粗末な創造だったんだからなぁ」

 ベインはティアを見下し、馬鹿にした。どこまでも苛つく態度だ。


「まぁいいか。レイター共ができそこないを倒してくれたおかげで、てめぇらとの闘いを続けられる。まだまだ退屈せずに済みそうだ」

「それだと、まるで感謝してるように聞こえるが」

「だってそうだろ。つまらねぇもんをみさせられるよりかはずっと良い。退屈すぎると生きてる感じがしないんだよ、俺は。本気と本気がぶつかりあう闘いがみてぇんだ。そうじゃないと楽しくならねぇ、そこは解ってもらわねぇと」

「ベイン、おまえはなんなんだ。何を目的にしている」

「それを考えるのがクリエイターってもんだろ。種明かしはいずれしてやる、いずれな」

 ベインの目的がいまいち読めない。今解っていることがあるとすれば、膨大な破壊力を持っていること、俺達の闘いを楽しもうとすることくらいか


「手駒もなくなったし今日はここまでにしておくか。この俺、破壊王ベインがお前達を破壊するのは決定事項だ。これからも楽しませてくれよ、レイター共」

 ベインは背中を向けてニヤリと笑うと、違う異空間に転移した。

 魔王獣を倒したがすべて終わったわけではない。むしろここからがはじまりなのかもな。

 

「いやぁああああ、なんとかなるもんだね~」

「だいぶ危なかったけどな」

 破壊の意思を浄化でき、いっきに張り詰めていたものが消え去り、絵麻は腕をだらりと下げ、俺は空をあおぎみた。このまま大の字で倒れてもいいくらいの疲労感だ。

 何度も諦めそうにもなったがなんとかなった。本当によく頑張った。

 

「ブリリアントウォールもよく耐えてくれました。待っていてください、輝きを取り戻す手助けをしてさしあげますから」

 クリエイトはブリリアントウォールに触れて、

「創造の再花、リクリエイト」

 すると靄がかかった空の上から桜色の花びらが雪のように降ってきて、破壊の意思で損傷した箇所に付着。赤く染まった白い床やブリリアントウォールを修復していく。


「こんなこともできたのか」

「そうみたいですね」

 この力は俺が創りだしたものではない。逢夢がクリエイトワールドとつながることできずいた力なんだと思う。クリエイトブックの時と同じだと思っておけばいいか。

 クリエイトとブレイドは変身を解いて、これで全員一息つけた感じか。


「腹も減ったし帰ろうか」

「みんなで食事を食べませんか。今日はお鍋にしようと思っていたので」

「いいね~それ。めちゃ食べたい~」

 ブレイドはいつも通り、のほほんとした表情に戻っている。

「なら決まりですね」

 闘いを終えた俺達は逢夢の力で俺の家へと転移した。

 

 

 リビングの窓から差し込む夕日が差しこんでいる。それはいつもの日常に戻ってこれたことを意味していた。

「ティアちゃ~ん!」

 絵麻は自分が創造した可愛さにいてもたってもいられなかったのか、いきなりティアに抱きついている。

「ロリかわすぎだよぉ! ここも、ここも、超ぷにぷにしててあたしが創造した通りじゃん!」

 二の腕、お腹周り、ふともも、ほっぺ、それぞれ順々に触っていく。自分が創ったキャラだからそりゃあきになるのは解る。解るのだが、隅々まで調べようとされているのはやりすぎか。


「な、なんなのだ、いきなり……や、やめんかぁあああああ」

 ティアは無理やり絵麻を両手で引き離さうとするも、

「ツンツンしちゃってかわいい~!」

 可愛さの虜になり、聞く耳すらもっていなかった。

 肘打ちまでするようになり、ティアの怒りのボルデージが上がってしまっている。怒りが爆発する前に対処しておこう。

 

「おーい、そこまでにしておけよ」

 腰をつかんで強引に引き離すも、

「ああ~いいとこだったのに」

 絵麻は頬をふくらませて反省の色はまったくなかった。

「ティアが嫌がってるだろ」

「いやいや、これはツンデレなだけだって~」

 ティアは無言の圧をかけて、そこにデレなんてあるはずないのだが、

「ティアちゃん、そこでじっとしてて。この絵麻お姉ちゃんがティアちゃんのロリ可愛い絵を描きまくってあげるから」

 自分勝手な解釈を続ける絵麻は能天気な笑顔をふりまいて、次なる欲求を叶えるためにティアの絵を描きはじめていた。あの激戦の後だっていうのに絵麻はまったく変わらねぇな。


「な、なんなのだ、あやつは」

「ロリ……いや小さくて可愛いものをみたら、ああなってしまうじゃないのかな。ハハハ……」

 呆然とするティアに対して苦笑して合わせるものの、

「小さくては余計だ」

 失言のせいで俺まで睨まれた。ロリや小さいは禁句ってことらしい。


「ブレイド、包丁の扱い方上手ですね。普段から料理していそうですね」

「マスターのためにってやつだね~逢夢も当然してあげてるんでしょ」

「はい。嬉しくなりますよね、自分が調理したものを食べてもらえるのって」

「わかる~どんどん甘やかしたくなっちゃうよね」

 逢夢とブレイドはキッチンで野菜を切っている。仲の良い友人同士って感じで、安定感あるな~二人とも。見てて和む。

「逢夢、なんか買い出しするものとかあればいくけど。人数一気に増えたし」

「足りない野菜とお肉を買っていただければ……これですね」

「ティア、一緒についてきてくれないか」

 逢夢からメモをもらいティアを買い物に誘った。


「よいぞ、ここにいても誰かさんの視線がやたらときになるだけなのでな」

「きになるって、あたしのことを! もう、早く言ってくれればいいのに。そっか~あたしのこときになちゃったか」

「なにを勘違いしておるのだ、貴様は。むかつくという意味で言ったのだ!」

「解ってる、解ってる、ツンデレすぎて素直になれないだけだよね!」

 ティアの悪態すらも絵麻はポジティブに捉えている。可愛いものに対して目がなさするっていうのも考えものか。

「ティア、いこうか」

 なにも解っていない、そう言いたげなティアの眼差しを目にしながらその場を離れた。

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