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4話 共に未来へ ④

 創造を届けた瞬間に意識がつながりあい、ディアボロスと共に創造球が創り出した物語の中にいる。

 クリエイト・レイターズ第1巻、最終局面。ちょうど俺が書き直している部分だ。

 

 ディアボロスとクリエイトの激戦は続き、両者すでに満身創痍の状態。

 殴りあい、攻撃を受けるたびに強烈な音をひびかせる。勝つためのスマートな立ち振る舞いをせず、お互いの譲れない者のために意地を張り合う。ただ相手をねじ伏せようとするディアボロスに対して、必死にクリエイトはくらいついていた。

「たくさんの人々を楽しませてくれている、魔王に消えてほしくない。ディアボロスだってその一人です」

「それは人間側の理屈だ、それを押しつけるなと言っているのがなぜ解らぬか!」

 ディアボロスの大ぶりの一撃を腕を十字にクロスさせてガード、クリエイトは攻撃を受け止めた。


「きずいていますよ、これが押しつけがましいことは。それでもすべてが消えてしまうよりかはいい」

 拳をおろし、胸に当てクリエイトは訴える。

「あなたが目指す誰もが不幸にならない世界に笑顔になってくれるキャラクターはいますか? 同じような楽しさを感じてくれるキャラクターはいますか? いないはずです、すべて消えてなくなってしまうのですから」

 眼の前にいる魔王のために、どれだけ拒絶されようとも歩み寄る。

「魔王とも、そしてあなたとも、わたし達は共に歩める未来を描きたい。そのためならわたし達は自分勝手にもなります。あなたとたくさんの未来をつなげ創造の花を咲かせたいですから」

 覚悟を決めたクリエイトは、誰も幸せのなれるような笑顔を届けた。

 

「闘うことしかできぬ我と未来と歩むだと。そんなことできるわけがない」

「できますよ。今からそれを証明します。全力をぶつけあいましょう。それが魔王との闘い、そして、この先にも必ず未来はあります」

 実力差がけしてあるわけではない。ギリギリだな闘いをしいられている。

「戯言を。今からそれを証明させてやる。貴様をあとかたもなく消すことでな」

 ディアボロスの力は魔王達により増幅されている。それはいつこの身が震えあがってもおかしくはないもの。

「消されませんよ、あなた共に歩む未来のために!」

 クリエイトは楽しそうに笑っている。この闘いすらも楽しんでいた。


「クリエイト・バスタァアアアアアア」

「オメガ・フレイム」

 創造の輝きをこめた一撃と魔王の意思がぶつかりあう。

 光と闇のエネルギーはぶつかりあった直後は互いに反発していたものの、徐々に魔王の意思が光にも飲み込まれていく。

「この我が貴様に押されているだと……ありえぬ、そうなれば我は」

「不安になる必要はありません。わたしはあなたを創造します。あなたの未来の姿を」

 光輝く創造をぶつける中、ディアボロスの新しい姿を届ける。

 赤い鎧をまとった魔王の憎しみに囚われてない、少女の姿。

 それがディアボロスと共に生きる未来、その未来をクリエイトは創造した。

 

         *         *         * 

 

 創造球が創り出した物語とのつながりが消え、現実世界に戻っていた。

「こんなものをみせた所でどうなるというのだ。ずいぶんと都合のいい押しつけをしおって」

「ならなぜあなたは嬉し涙を流しているのですか」

 クリエイトの言葉は紛れもない事実を示している。

 魔王ディアボロスの去勢をはりながら、兜の目にあたる部分から赤い涙が流れている。

 心に届いた。確かに届いたんんだ俺達の創造が。


「嬉し涙を流したのは、ディアボロスが求めているものだったからだよ」

「都合がいいくらいディアボロスのためになろうした。それがマスター達のしたいこと。そんなの見せられちゃ嬉しくなちゃうよね~」

 絵麻とブレイドは自分達なりの感性で魔王ディアボロスに想いを届ける。

 都合がいいくらいその人のためになれれる、魔王のためになれる。

 物語だから都合よくどんなものも扱える、理想を叶えることできるんだ。


「ディアボロス、わたしはあなたと物語の中で闘い、その強さに諦めそうになったこともありました。それでもあなたと闘うのは楽しかった。強者として君臨したあなたがいたから物語を読むページを止められなかった、わくわくした気持ちでいられた。そんな魔王がいる物語が大好きです。好きだからあなたと共に歩んでいきたい」

 クリエイトは魔王が好き、物語が好きという気持ちをぶつけていく。

 きっとそれもまた身勝手な想いだといえるのかもしれない。魔王自身はそんなことを思って欲しいとは思っていないだろう。

 それでもあの時ああ思えたから、好きでいられる。好きだからこそ笑顔にしたいと思えた。

 その気持ちは俺だって同じだ。魔王が好きだから共にいたいと思った。


「それはできぬ。そうでなければ…………我は魔王達を裏切ることになる」

 苦しそうに拒絶する姿、それはディアボロスの今まで隠してきた一面。

 

「そうか! ディアボロスは他の魔王のために願い叶えなければならないと思ってたのか」

「だとしたらなんだというのだ」

「ディアボロスはやさしいな、そこまで誰かを想いやれるなんて」

「な、なにを! 馬鹿なことをいうな!」

 声がうわずり明らかに恥ずかしがっている……やっぱりやさしいやつだな、俺が創った魔王は。

「馬鹿になんてしてないさ。魔王達の復讐心すらも大切にする、それも魔王らしさだ」

 このやさしい魔王の気持ちに応える方法。それは自然と浮かんでくる。まるでそうなることが解っていたかのように。

 

「それなら、なおさら魔王達を消すわけにはいかないな。魔王達が復讐したいっていう気持ちも大事な創作の種。もしその種にきずくことができなかったらディアボロスも創ることも、俺が創り出した物語の展開がこうなることもなかった。すべては必要なものだ。だから魔王は消させない。それでいいんだよ。裏切ることで守れる想いがある。その想いを俺は尊重するぜ」

 たぶんそれは思いがけない言葉であり、ディアボロスにとって救いだったのであろう。

 兜から流れる涙は止まらず、流れ続けていた。

 

「本当に身勝手だな」

「けれど、それが創造だ。物語の中だから、どんなことでも創造できる。こだわり続けられる。そんな未来を俺は描きたいんだ」

 言葉を重ね、ディアボロスの心に届く想いを言葉として伝えた。

 復讐の炎に燃えた鎧の炎が弱まり、憎しみが和らいでいる。

 

「おいおい、まさかお前はその都合の良さをあっさり受けるつもりかよ」

 もう少しで魔王の心を変えられる、そう思った時に俺達の様子を見ていたであろうベインが介入をしてきた。

 

「ずっと見てたんだぜ、お前達の闘いを。俺が介入したら盛り上がった空気が冷めちまうからなぁ、楽しい楽しいショーだった。この展開も悪くはない。だがな、これで終わったらつまらねぇ、だから盛り上げにきた」

 ベインはディアボロスの選択を否定も肯定もしない。ここへ現れたのは自分がそうしたかったから、それだけの理由。

 

「ディアボロス、本当にそいつは信用できるのか。魔王達を裏切っていいのかよ。お前のせいで魔王は倒され続ける運命から逃れることはできなくなるんだぜ」

「我は……」

「自分で判断できないのなら、お前に教えてあげるよ。お前の中にある破壊の意思をなぁ!」

 ベインは魔王ディアボロスに破壊力をそそぎごみはじめ、魔王の鎧から赤い破壊力が大量に噴き出しはじめた。

 

「もう遅い、遅いのだ! 我はすべてを……」

 ディアボロスは苦しみ、自らの復讐の炎で心を焦がす。復讐の炎でその身を焦がした先にあるのは絶望の未来。俺はそんなディアボロスを見たくはない。そのままにしたくない。

「遅くなんてない。ディアボロスは変われる。物語の時のように俺達が未来を創りだす」

 理屈なんていらない。ここからは創造すればいい、この破壊の意思を浄化しうるものを。

 

「クリエイト、絵麻、ブレイド、力を貸してくれ」

「はい、創磨」

 破壊の意思に抗うディアボロスの元に全員が集まり、共に手をのばし俺の中でイメージした創造を共有する。

 

「我は誓う、なんじを楽しませることを」

 俺とクリエイトがディアボロスの左手を、

「我は誓う、なんじと共に歩むことを」

 絵麻とブレイドが右手を掴み、

「我は創る、新たなる魔王を――その名はティア、未来を描け創造よ!」

 全員がつながりあうことで、ディアボロスの新しい未来を創り出す。

 赤く染まった破壊の意思は消え、創造の輝きにディアボロスが包まれると、破壊力で創られた鎧は消え去り、ティアとなり生まれかわった。

 

「我は、我は……」

 笑顔で涙する少女は絵麻を中心に創り出した姿になっている。

 黒いチェックが入った薄紅色のミニスカートを履き、白色のノースリーブの上に黒いケープコートを着ている。身長は中学生くらいには低いが胸は高校生かと思うくらいには発育が進んでいる。紅葉のように赤い髪をツインテールでまとめ、ルビーのように輝く赤い瞳を輝かせていた。

 魔王であって魔王でない、愛おしいその姿をみて、涙が止めどなく溢れてくる。

 

「ティア、あなたはひとりではありませんよ」

「共に歩もう、この先もずっと」

 創造し俺達みんなで笑顔にしたいと決めた。それを叶えることができたんだ。

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