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3話 魔王と創造 ⑩

「調子にのるなぁあああああ」

 深い憎しみがこもった雄叫びをディアボロスあげた。

 勢いにのる俺達を止めるためなのか、それとも攻撃され続けて怒りが溜まったのか。深淵をみたものにしか出すことのようなできない声に身震いをしてしまう。

 

 それと同時に赤い鎧が光輝き、赤い衝撃波が魔王ディアボロスの周りで発生した。

 それは離れている自分達に伝わるほど。クリエイトとブレイドは発生した衝撃波によって後方へ弾き飛ばされていた。

 

 体がえぐれたり強いダメージを背負ったようには感じない。吹き飛ばすことに特化していたのでダメージはないようだ。しかし攻勢の流れはいったん遮られ、しきり直しにされたのは事実。ここからまた魔王ディアボロスの放つ炎や雷を回避しながら接近しなければならないのか。

 

「こんなものではないぞ、我が魔王達の力は」

 ディアボロスの腕から赤い煙が火山が噴火した時のように勢いよく噴射。赤い破壊の噴煙が形を成し、腕に巨大な赤い籠手が創られていく。

 それらはおぞましいほどの破壊の塊、魔王の破壊の意思そのものだ。


「また破壊力を膨れ上がった……」

 さらに強力になった破壊力を前に、クリエイトは厳しい顔つきになっていく

「いくぞ!」

 ディアボロスは闇の炎を足にまとわせて飛んだ、そう思った瞬間にはクリエイトの背後にいる。破壊力が増し、今までと段違いのスピードにディアボロスはなっている。

 

 クリエイトはその動きには反応していた。とっさに裏拳をディアボロスにぶつけようとするも、

「くぅううう」

 それよりも一瞬早く魔王ディアボロスの巨腕に腹を殴られ吹き飛ばされた。


「みえてるぞ、貴様も」

 攻撃の終わったタイミングを待ち構えたかのように狙ったブレイドの剣閃も巨腕で受け止めている。すぐさまそれを見て、ブレイドは距離をとる。

 

 戦闘能力の向上、それだけは終わらない。

「我のこの拳、受けきれるものならば受けてみよ。オメガ・フィスト!」

 ブラックホールのように暗い穴が無数にクリエイトとブレイドの周りに生まれると同時に、、

その穴から破壊の意思で創られた巨大な拳が出現した。

 空間から出現する拳は絶え間なく撃ち出され続けていく。半身くらいある撃ち出された拳を避けようと横へ飛んで回避をするものの、回避した次の瞬間には別の撃ち出した拳に狙われていく。

 

 あれは俺が物語で創り出した技。どんな攻撃が来るのかは解っていても、圧倒的な数の前では解っていても対処難しい。

「クリエイト!」

 クリエイトは両腕でガードするので手一杯。サンバックのように殴られ続ける。

 ブレイドはなんとかすべてを避けているものの、防戦一方なのには変わりがない。

 

 一方的にやられている状態。このままじゃまずい。

「さっきまでの魔王と全然違うじゃん。どうするのこれ……」

 絵麻は必死に対処法を求めて、軽くパニックになっている。蓄えられた破壊力によって、ディアボロスの力は想定よりも上だった。

 

「全力で倒すしかない、クリエイトも創磨も解ってるよね?」

 ブレイドの鋭く尖った視線は俺やクリエイトにも向けられている。いい加減、倒す決断をしろ。青く燃える炎の飛び火する。それはすべて決断を遅らせているせいだとでもいうのか。

 

 ディアボロスを倒す、それはこれまで描いてきた物語と同じ結末。

 いろいろなことを考え、魔王の楽しい記憶をみたけれど、なにも未来は変えられていない。

(本当になにも残されていないのか、倒す以外にもう方法はないのか)

 自問自答を繰り返すも、答えはみつからない。


「迷いは捨てて」

 ブレイドは忠告を残すと、巨大な腕の嵐から逃れるためにディアボロスの方へ向かって飛びこんでいた。俺達を信頼しているからじゃない、一人でこの状況を止めるつもりでいるようだ。

 

 このまま加勢しなければ、ブレイドに危険がおよぶ。

 だから倒すのか、ディアボロスを。それは違う。違うはずだ。

「無理だ」

 ブレイド意に反し、力なくそうつぶやく。

 最後まで自分の意見にこだわり続け、迷いは捨てることができなかった。

 

「なぁ、ディアボロス。お前は本当に消えたいのか。誰にも見られてくないっていうのかよ」

 わがままな自分をさらけだし、ディアボロスに訴える。

 言葉で変えれないものはない。変えれるはずだ。解ってもらえるはずなんだ。

 

 信念を貫きこだわりを捨てなければ、その先には明るい未来がある。

 今まで描いてきた自分の物語はそうだった。自分の思い通りにうまくいった。

 自分が信じたものが叶う世界。それが自分の描いた創造。

 でもそれは現実には起こりえない。その意思は必ずしも理解されるわけではない。

 

「戯言を! まずは貴様から消してやろう」

 ディアボロスは苛立ったまま、俺に視線を向ける。

 そこにあるもまた、わがままな信念。自分の意思を貫こうとする瞳は俺となんら変わらない。

 違うのは、その意思が真逆なものであるということ。俺達とはけして交わることのないもの。

 

 ディアボロスは俺に向かって巨大な破壊力を内包した闇の炎の塊をぶつけようとしていた。

「こいつはさきほどの物とは違うぞ。さらに破壊力を集めた闇の炎。たかが人間の貴様に防ぐことも避けることもできぬわ」

 さきほどまで使っていたものと同様の大きさではるものの、闇の炎の中で渦巻く破壊力がさきほどの何倍もある。あれもすべて破壊力が増幅された結果だとでもいうのか。

 

「消えろ、創造主。オメガフレイム」

 ただの人間である俺には魔王の攻撃は防ぐことも避けることもできない。圧倒的なまでの破壊の力を防ぐ方法がどうやってに導きだせない。

 こんな所で消えるのか、消えるのかよ。


(消えたくない、消えたくない、消えたくない)

 闇の炎が迫りくる恐怖により、消えたないという想いが全身に広がっていく。

 体が硬直する、絶望で冷や汗が止まらない。消えるってこんな気持ちなのか。

 これが魔王が感じていた恐怖。これが魔王の……

 

「消させない、消させませんよ」

 クリエイトは飛び上がって俺の前に立つと、、

「創造の盾花、クリエイト・シールド」

 創造の輝きで大きな花びらの盾を創り出した。消えたくない、その強い想いによってクリエイトは突き動かされたのか。

 創造の輝きが創りだす光の壁によって闇の炎の攻撃は防げてはいるものの、さっきみたいに闇の炎の威力が衰えてはいかず光の壁を侵食。破壊の意思で創造の輝きが赤く染められていく。


(たのむ、防ぎきってくれ!)

 助かりたい、そう願っても赤い破壊の意思の侵食が止まらない。

――破壊する、破壊する、破壊する

 創造の輝きと破壊力が干渉しているからか、魔王の意思までもが伝わってくる。

 魔王としてこれまで幾度となく倒された記憶、人々を虐殺しては世界を支配する記憶、とても笑顔になれるようなものではない。

 

――創造が我らをこうした

 破壊力を生み出す魔王達は、これまで人間達が創りだしてきたもの。

 身勝手に消してもいい、そうやって魔王を扱い続けてきた歴史。


――創造は我らを都合よく使う。そして都合よく切り捨てる。ふざけるな、ふざけるな!

 たくさんの魔王が今なお創造主から生み出されているのは人気がでたから。

 人気だから使い、売れなければ捨てられる。

 たくさんの魔王の骸がこちらをみている。憎しみが喉元まであがり、首を締められいるかのように苦しかった。

 

(悪いのは俺達なのか。消えるべきなのは俺達なのか?)

 迷いが心を侵食しはじめ、創造の輝きで生み出した光の壁が徐々にひび割れていく。


「く、このままでは」

 まずい、そう思った時には遅かった。魔王達の破壊の意思によって創造の輝きでつくられた光の壁が破られた。 

 闇の炎が迫ってくる。威力はだいぶ衰えているとは思うが、人間が耐えられるものではない。消える。今から俺は消えるんだ。


「くぅうううううう」

 そんな想いをまるで受け止めるかのようにクリエイトがその身を闇の炎で焼かれ苦痛な声をあげた。俺の身代わりになった。こんな俺のために。やめろ、クリエイトには消えてほしくないんだ。

「クリエイトは消させない」

 創造力を右手に集め、クリエイトを焦がす闇の炎は鎮火できた。ブレイドが創り出した創造壁によって闇の炎の破壊力はだいぶ抑えられていたおかげでもある。

 

「っち、消しそこなったか」

 闇の炎にクリエイトは耐えきったが、歯を食いしばり激痛に耐えるのが精一杯。かなりダメージを負ってしまっている。もう闘えるような状態じゃない。

 

 このままじゃクリエイトが消される。それだけは嫌だ!

 クリエイトの前にでようとした時、

「逃げるよ」

 ブレイドにその手をつかまれた。

 

「逃がすものか!」

 魔王ディアボロスは赤い光弾で俺達の動きを束縛しようとするのと同時に

「蒼の幻影、蒼霧」

 ブレイドは刀から姿が見えなくなるほどの濃い蒼い霧を発生させた。

 視界が蒼い輝きで染まりなにも見えない。魔王ディアボロスが同じ状態ならこちらを見失っているはず。

 その間にブレイドは俺達を抱えてその場から撤退した。

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