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3話 魔王と創造 ⑨

 転移先は現実世界とクリエイトワールドの間にあるアウターワールド。

 ディアボロスの後ろには巨大な光の壁が広がっている。それだけみれば以前となにも変化がないように思えたが、白い地面をみるとドームの大きさくらいある巨大な赤い魔法陣が展開されていた。

 

「我は魔王達の破壊力であのブリリアントウォールを破壊し、クリエイトワールドにあるブリリアントツリーへと辿り着く。どうするレイター共」

「そんなこと、見過ごすことはできません」

 普段みせている花のようなやさしさはすでになく、心が茨で覆われる。逢夢はディアボロスを刺々しい形相でにらみつける。

「そんなことさせるつもりないから」

 ブレイドもすでに決心をかためている。決断するべきは俺の方か。


「闘うしかないのか、もう解り合うことはできないのか」

「できぬ。我はすでに別の道を貴様達に示した。だが貴様達はそれを拒否した。であるならば、闘うしかない。我らの力をもって貴様らを捻り潰してくれるわ」

 赤い魔法陣が輝き、その中に溜まっていた魔王達の破壊力がディアボロスにそそぎこまれた。

 

「これが魔王達の力……」

「今までとは違うようですね」

 明らかに今までとの破壊力と違う。破魔とは比べものにならない量の破壊力を感じる。


「破壊力を増幅させる術をみつけたのか」

「以前送り込んだ破魔達、そこから得られたデータによってな」


 ディアボロスは赤い鎧を輝かせ、

「見るがいい、これが我らの本当の力だ」

 天に向って拳をつきあげた。

 

 呼びかけに応じ、鎧から赤い煙が吹き出していく。

 今の魔王の鎧はマグマに近い。その怒りに触れるだけですべてを溶かし、すべてを滅ぼそうとしている。これを鎮めることができなければ、俺の創造を守ることができないのか。


「滅びるがいい、レイター共よ!」

 魔王ディアボロスは激昂しながら、正面に突き出した右手から赤い破壊球を発射した。


「創磨!」

 逢夢が飛びついて抱きかかえてくれたから、赤い破壊球に当たることはなかった。


 目標を見失い地面に着弾した赤い破壊球が爆発音を轟かせると、そこに存在していたものを跡形もなく消滅している。

「マスターいくよ」

「創磨も」

 このままなにもしなければ、ただ魔王に消されるだけか。


「無抵抗なままではいられないか…………変身だ、逢夢」

「ブレイドも、お願い」

 戦いたくはない、戦いたくはないがこのまま無抵抗にやられるわけにもいかず、逢夢達を変身させるしかなかった。

 

「創造の輝きよ、未来を創る力となれ」

「創造の輝きよ、すべてを斬り裂く力となれ」

「「レイター・ブリリアントチェンジ!」」

 二人は創造の輝きをみにまとう変身をはじめ、

「未来へ続く創造の輝き、レイ・クリエイト」

 逢夢は桜色の戦闘コスチュームを身にまとったレイ・クリエイトに、

「すべてを切り裂く創造の輝き、レイ・ブレイド」

 ブレイドは蒼い剣士服を身にまといレイ・ブレイドへと変身した。

 

「クハハハ、そうだ。我らは闘う意外の道はない。覚悟するがいい、レイター共」

 ディアボロスの赤い鎧から闇の炎が燃え上がり、真正面から飛びかかってきた。白い地面を蹴った床が赤く焦げ、アクセルを限界まで踏んだレースカーのように勢いを増して接近。赤く煙があがった腕を叩きつけてきた。

 

 大ぶりなわりには素早く動きが洗練されている。クリエイトはバックジャンプを二回して回避できたが油断できない。

「まだだ」

 ディアボロスはバックジャンプで攻撃を回避したクリエイトに対し、かざした手から赤い破壊球を放った。


 クリエイトはバックジャンプした先を読まれたことで破壊球を回避することができず、手をクロスさせてガードする。辺り一帯を破壊の色に染めてしまうほどの攻撃ではあるもののその攻撃をなんとか防ぎきる。ただこれを受け続けるというわけにはいかない。蓄積すれば大きなダメージとなる。 

 

「どうして魔王が消えるだなんてことを望む。その先に幸せな未来はない」

「幸せな未来だと、何の苦労もなく幸せを手にしてきた者達がいいそうな言葉だ!」

 考えを改めてくれるかもしれない、そんな期待を感じることすらなく魔王ディアボロスに言葉は届かない。

 

「そこ!」

 届くのはブレイドが振るった蒼輝刀剣のみだ。クリエイトに攻撃している隙を狙っておりきずいた時には魔王ディアボロスの懐に入って振るわれていた。

 

 ディアボロスはあえてそれを片腕で受けた。完全に攻撃が届いた、そう思ったのもつかの間、赤い煙によってブレイドが振るった蒼輝刀剣はさえぎられていた。そして、そのまま近づいてきたブレイドを捕まえようと手を伸ばした。


「させない」

 ブレイドはディアボロスの手が届く前に頭上に飛びあがり、間一髪の所で捕まるのを避けられた。風が通り抜けるかのような攻防、スピートのテンポが明らかに違っている。

 

「オメガフレイム」

 ディアボロスの攻撃は止まらない。ニメートルはゆうにある巨大な闇の炎の塊を掌に出現させ、ブレイドに向かってそれを解き放つ。最初はゆっくりと進んでいたが、ロケットのようにだんだんと加速していく。

 その攻撃はブレイドの着地を狙っている。ブレイドならば余裕で避けることができるかもしれないが、次なる攻撃も控えている可能性があり避け続けるのは困難な可能性はあった。


 クリエイトはブレイドを守るために前へ。

「創造の盾花、クリエイト・シールド」

 クリエイトと共に手をかざし創造の輝きを目の前に集め、体全体を覆うことができるくらい大きな花びらの盾をクリエイトは創りだした。

 創造の盾に闇の炎がぶつかりあった瞬間に白と赤の光の粒子が火花のように激しく飛び散ったが、創造の輝きで巨大な闇の炎を防ぐことができた。

 

 やはり破魔以上の力を魔王ディアボロスからは感じる。動きを止めて話すためにも、ディアボロスを抑えこみたいがその糸口をつかめない。このまま甘い考え方をしていていいものなのか……いや、まだ諦めるような段階じゃない。

 楽しいと思ってもらえるようにしたい、その想いを信じなくてどうする。

 

「二人同時にいきましょう。わたしは右から、ブレイド左からお願いします」

「まかせて」

 クリエイトとブレイドが同時に走る。

 両側からの同時攻撃、的を絞らせることのない一手。

 

「オメガボルト」

 そんなクリエイト達の攻撃に対して、魔王ディアボロスは二人を同時に狙うことを選択した。両手から放たれた雷撃は一直線に突き進んでいく。その速度はクリエイトやブレイドが走るスピードよりも圧倒的に早かった。

 

 到達するまでの猶予はある。クリエイトとブレイドはそれぞれ横っ飛びをして回避を狙う。

「曲がった」

 しかし雷撃は意思を持っているかのように曲がった。


“バリン”

 雷撃が当たった後に炸裂音が響く。いくらレイターといえど直撃はまずい。そんな事が頭によぎったがクリエイトは創造の輝きを集めた右手で、ブレイドは抜刀して雷撃そのものを刀で受け止め雷を防御していた。

 直撃こそ避けられたものの、破壊の意思がそそぎこまれた雷撃は二人の体に触れており、創造の輝きが一瞬揺らぐほどにはダメージを受けた。

 

「こっちだよ」

 さきほどの雷撃のお返しとばかりにブレイドは

「蒼の風、蒼刃斬」

 蒼輝刀剣から蒼いかまいたちを飛ばした。

 蒼いかまいたちは魔王が放った雷撃とほぼ同じ速度。空気を切り裂く音がかすかに聞こえたと思った時には魔王ディアボロスの鎧に直撃していた。


“ガガガガガ”

 赤い煙を貫通し赤い鎧が削れる音が響き渡る。風とは思えないほどの鋭さを秘めており、風そのものが剣になったかのような威力だ。


「創造の衝花、クリエイト・インパクト」

 さらにクリエイトの追撃。創造の光を集めた拳で魔王ディアボロスの赤い鎧を殴りつけた。

 赤い鎧からにじみ出た煙を吹き飛ばし、鎧にまで創造の輝きが届いていた。その衝撃はかなりのもの。ディアボロスの体は宙に浮いた。


「これでもまだわたし達と闘いますか」

 逢夢は俺の意思を汲みとって、ディアボロスに戦意があるのかを尋ねている。実力差をみせつけることで争いを治めようとしてくれていた。

「当然であろう。我がこの程度で諦めるとでも思っているのか」

「なぁ、ディアボロス。なんでそこまでして魔王を消したがる。ここまでしてやることなのか」

「そうしなければ、不幸になる魔王達がいる。貴様達のような存在がいる限り闘いは終わらない」

 ディアボロスがさらに破壊力を燃え上がらせる中、


「それはディアボロスも同じだよ」

 ブレイドは気配を消して、ディアボロスの懐へとすでに飛び込んでいる。

 闘うことをやめるように説得する俺や逢夢とは違って、ブレイドはディアボロスを倒すことでこの闘いを終わらせようとしていた。

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