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3話 魔王と創造 ⑧

「どうやら、すべての記憶の再現は終わったようですね」

 記憶の再現は終わり、元いた場所へ意識が戻っていた。

「魔王の楽しさ、めちゃ伝わったてきたよ。あたしのも良かったけど、創磨のも良かったね。特に黒歴史の所とか!」

「とんでもなく楽しめちゃう黒歴史だったよね~」

「そこは掘り下げなくていいからな」

 思わずチョップ頭にいれたくなるくらいには、逢夢とブレイドは俺をちゃかしてくる。このいじりまでやめて欲しいのだが。まぁ黒歴史も楽しさの一つ……だとはやはり思いたくないな。


「ブレイドにも魔王の楽しさは伝わっていただろうか」

「そうだね~楽しそうにしてそうかな~くらいには思えたよ」

「だがそれだけです。今回の出来事は魔王の楽しんでいたことを証明していたにすぎません」

 セラフ様は浮かれた表情すらみえない。冷静に今の状況を見据えている。


「確かにセラフ様の言う通りです。でも、それが一番重要だった。それが伝わっていなければ、この先に進むことはできていませんでした」

 今までのことはすべて布石。この楽しさを武器にして闘うのは、ここからだ。

「まずはセラフ様が提案したことについて、俺なりの見解をお伝えします」

 これまで見てきた記憶、それが俺の言葉を後押しする。

 

「魔王には消えてほしくない、この世界にいて欲しいです。魔王達にはたくさんの楽しさを教えてもらえた。それを創造を通して他の人にも届けたい、そう考えています」

 セラフ様とは真っ向から対立する意見、それはずっと考えてきたことだ。

 

 今まではそこに確固たる理由が足りなかったが、今は違う。今まで触れてきた創造が俺達に楽しさを教えてくれた。それが俺の意思の支えとなっている。

 他人の目なんてきにはしない。おのが意思をつらぬき通す魔王のように我を通す。なりたい自分に俺はなることで意思を示した。


「そうですか。その意思はもう変えるつもりはないということですね」

 セラフ様の瞳は揺らぐことなく、まっすぐ俺を捉えている。


「はい。貫き通すことでしか得られない未来があるのならば、こだわりを貫き通す。それが俺というクリエイターのあり方です」

「本当に残念です……黙って我の思惑通りに動けばよかったものを」

 それはあまりにも唐突な出来事だった。

 

 声に怒気が増したと思ったら、セラフ様の体から赤いオーラが放出され、悪寒が全身を駆け巡る。それはかつて感じたことのある殺気、それと同じもの。

「ここで滅びるがいい」

 セラフ様から赤く輝く閃光がきらめいたと思った瞬間、その光をブレイドが蒼輝刀剣で撃ち飛ばした。

 

「な~にをしるのかな~」

 ブレイドは鋭い眼差しをセラフ様に送っている。警戒心を強め、次の行動にそなえている。

 

「不意打ちです。うまく懐に入れていたので決まると思ったのですが、あなたはやはり警戒していましたか」

 セラフ様はまるでたいしたことでもしていなかのように、話を続けている。


「いつもなんか狙ってる感じしてたんだよね~」

「セラフ様、どうしてこんなことを。創磨に危害を加えようとするだなんてやりすぎです。話し合いで解決するおつもりではなかったのですか」

 逢夢はセラフ様に訴えかける。どうしても解りあったのだという気持ちは俺も同じ。それなのにその願いは叶わない。

 

「もとより話し合うつもりなどありませんよ。わたし、いや我は自らの願いを叶えるために行動したまでのことよ」

 赤い輝きが全身を包みこんだ瞬間、大きな衝撃波がセラフ様の周囲に発生した。

 衝撃波は嵐のように荒れ狂う強風となって襲いかかり、体がうきあがり吹き飛ばされた。幸い吹き飛ばされたことによる怪我はない。バランスを崩した程度だ。

 見上げた先にいるセラフ様の姿はない。見えるのは赤い鎧。


「な、なんでディアボロスが!」

 驚愕の声をあげる絵麻。逢夢もあまりの出来事に言葉を失っていた。


「ディアボロス、お前はセラフ様になりすましていたのか」

「どうやらようやくそのことにきずいたようだな」

 セラフ様はディアボロスだった。その真実を思い返してみると腑に落ちる点もある。

 

 記憶が残っているのも、ディアボロスだから。

 破壊力を扱えたのも、ディアボロスだから。

 記憶の中で嬉しそうにしていた瞬間があったのも、ディアボロスだからだ。


「どうしてこんなことをしたんだ」

「決まっておろう。我の願いをかなえるためだ」

「願い……それって、もしかして」

「そう、この世界から魔王をすべて消し去る。それが我の願いだ」

 ディアボロスは願いを宣言する。そんなこと願って欲しくなかった。この世界に現れたのはそんな願いを叶えるためだっていうのかよ。

 

「名も知らぬ魔王をけしかけたのは、この世界に魔王は不要だと思わせるためだったのか」

 声を荒げ、理性を保ったまま自らの中にある感情を爆発させる。

「セラフ様になりすましたのも、魔王側にも賛同者がいると思わせるためか」

 怒りではない、やるせなさが辛い表情をつくりだす。

「俺達と闘っているのも魔王をこの世界から消し去る、全部そのためだったっていうのかよ」

 強く、強く、荒れ狂う感情だけが虚しく響く。叫んでも叫んでも、状況は変わらない。

 真実は残酷だ。俺が見つけたかったのは、こんな真実なんじゃかったのに。


「解らぬやつだな。貴様達にとっても魔王が消えるメリットはある、そう伝えたはずだが」

「俺達も伝えたはずだ。魔王の楽しさを」

「そうであったな……ここで言い合っていてもしょうがない。穏便にことを済ませぬことができぬというのならば、我らに残された手段は闘いあうことだけだ」

 ディアボロスは転移魔法を初動作せ、俺達を違う世界へ誘う。

「いこうではないか、我らの闘いの地へ」

 転移術式が起動し、俺達はディアボロスの転移を受け入れた。

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