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3話 魔王と創造 ①

 ブレイドがこの世界に来てから1日が経過、色々と落ちついてきた所でこれまでの事情を説明するために絵麻の家に再び訪問していた。

 雲一つない夜空の下、余分に空いている駐車場に車を止めて家の扉の前にあるチャイムを押す。

「待ってたよ~入って入って~」

「おじゃまします」

 玄関で出迎えてくれたのはブレイド。靴を脱いで絵麻の家の中に入れば以前訪問した時とは違い部屋の中や廊下が片づけられている。これがブレイド効果か。

  

「あ、来た来た! それじゃあ色々と聞かせてもらおうじゃないの創磨達のこれまでの歩みってやつをね!」

 タブレットでなにか描いていたのをを止め、絵麻がウキウキとした表情で見てきた。新しい小説や漫画を読み始める前くらいの期待感を寄せている。

 それに見合うかどうかはさておいて、昨日できなかったディアボロスや破壊王ベインについて、逢夢がこの世界に現れた経緯について、絵麻とブレイドに説明した。


「やばい! めちゃくちゃ熱い展開じゃん!」

 話を聞いている最中の絵麻は物語を楽しむ時のように、驚いたり楽しそうに聞いてくれていた。もし逆の立場だったとしたら俺も絵麻のように楽しそうに聞いていたのかもな。

 

「これまであったことは理解してもらえたみたいだ」

「うん、だいぶ解りやすい話の流れだったしね」

 絵麻満足そうに両手を伸ばした後、目線を俺に向ける。まだ話すことはあるのかそう問いかけるかのように。

 

「それをふまえて、ベインとディアボロスにどう今後対処していくかを考えていきたい」

 俺は小さく相槌をうち、真剣に考えなければならない話題へと移行。ブレイドが用意してくれた紅茶を飲み、緩んだ表情を戻した。


「ベインについては解ってないことが多すぎるよね。創磨が創造したキャラクターってわけでもないし」

「ディアボロスと同じ目的で動いているかどうかも怪しいです。あの方は共闘しようとせず常に傍観者としてわたし達の闘いを眺めていました」

「なに考えてるか解らないけどさ~あのベインってやつが力をディアボロスを与えたんだよね。だったら、わたしゃ達の敵ってことは間違いなんじゃないのかな~」

 絵麻、逢夢、ブレイド、それぞれの意見を聞いた後、

「俺もベインが元凶だとは思う……だけど、こちらに直接手を出してこない以上は後回しにするしかない。今は積極的に動いているディアボロスについて中心に考えたいかな」

 こちらの意向を伝える。それには納得してくれたみたいで、反論は特になく皆それぞれうなずいてくれた。

 

「ディアボロスって、創磨が創造したキャラクターなんだよね~」

「そうだけど」

「ならディアボロスについて情報が欲しいな~まだ創磨の物語を読めてないんだよね~」

 ブレイドは絵麻や逢夢とは違い、ディアボロスが物語の中でなにをしているのかさえ知らない。

「小説を書く時、設定を確認する際にキャラクターについて一通り情報はまとめてある。その中に魔王ディアボロスについてまとめたテキストがあるから、これをみて欲しい」

 タブレットの中にあらかじめ用意しておいた、魔王ディアボロスのことについて書かれたテキストを見せた。


 魔王ディアボロス

 魔王達の意思が集まり創り出された、赤い鎧につつまれし魔王。

 物語の中で倒されてしまった魔王達の怨念によって創りだされ、創造主を恨んでいる。

 研究施設で創りだした魔王の配下達を使って逢夢を襲う。

 努力家で日々研究と鍛錬を続けている。

 異空間をつくり、そこで様々な実験をしている。

 創作を創りだす原因の一つである出版社を襲うが、逢夢に阻まれ倒された。

 

 戦闘

 近距離は格闘戦。中遠距離は魔法攻撃を使用し闘うオールラウンダー。

 

 魔法

 オメガ・フレイム

 闇の力を帯びた炎球を飛ばすことで攻撃。小さな炎球は数を重視、大きな炎球は威力重視で使い分けることが可能。

 オメガボルト

 闇の力を帯びた雷を手から飛ばす。速度、射程ともに優秀。

 オメガ・フィスト

 創造力で創りだした拳を異空間から出現させることで攻撃。

 包囲と設置の使い分けも可能。

 

 元々のテキストにはより多くの魔王ディアボロスのことについて書かれているのだが、今は見やすいように要点だけをまとめておいた。情報過多になりすぎないくらいがちょうどいいはず。

 

「ディアボロスの攻撃方法まで解るの便利~異空間から拳を出現させるオメガ・フィストという技は特にやっかいそうだよ~」

 タブレットにを止めて、ブレイドは眉をくの字に難しそうな顔になる。


「包囲攻撃を嫌がって接近した所に設置されていた腕が飛び出してくる、とにかく近づきづらくて苦労しましたよ」

「そっか逢夢はクリエイトとして、物語の中で闘ってるんだ~」

 ブレイドは逢夢に注目、安心したかのようにほっと息をついた。


「一筋縄では中々いかない相手でしたね。魔法が強力なんで、もし闘うことになったら的を絞らせすぎないようにすることが大事かと。こちらは二人いるのでうまく連携とをとって的を散らせたいですね」

「左右同時に攻めるみたいな感じ?」

「それが良いと思います」

 ブレイドは逢夢と共にディアボロスとの闘いをシュミレーションしていた。

 現実世界でディアボロスと直接戦闘になる可能性はある。今のうちなにかしらできることを探っておくのは悪くなさそうだ。


「ディアボロスとの闘い方を考える以外に、なにか事前にやっておけることってあるかな?」

 とりあえず疑問をなぎかけてみるが、即答する者はいない。微妙な質問をしてしまったと思いそうになったが、

「あんまり重要なことじゃないかもだけど、魔王のことについてもっと知っておきたいかな~闘う相手なのに魔王につていわたしゃは知らないんだよね~」

 紅茶を一飲みしてリラックした表情でいたブレイドが答えてくれた。

 逢夢とは違って、ブレイドは物語の魔王がどんなものか知らないみたいだ。

 

「魔王について知らない……それってどれくらいなんだ。まったく魔王が登場する作品を見たことないとかなのかな?」

 まずはどの程度ブレイドが魔王について知っているか探ってみる。

「全然見てないってことじゃないよ~魔王がひどい扱いを受けて恨んでる、それが解らないって感じなのかな~マスターもだよね」

「え、そうなのか」

 ブレイドだけじゃなくて、逢夢も魔王がひどい扱いを受けているとは感じていないようだ。

 

「実はそう。だって魔王ってかわいいじゃん!」

 絵麻は鼻を高くしながらにやりと笑い、実に絵麻らしいとも思える発言をしてきた。

 これはたぶんジェネレーションギャップ、魔王の見え方っていうのは年代によって違ってる可能性があるな。


「絵麻って古い作品はあんまり見てないって感じか」

「そうだね~そんなには見てないよ。でも、ディアボロスを描く時は資料として読んだりはしたかな~古いのは有名どころしかみてないけどね」

「古いとか新しいとか、関係あるの?」

 ブレイドは話を聞いてる最中に、疑問に思っていることを尋ねてきた。


「古くからいる魔王って、巨悪で醜い姿すらしていることもある。可愛さは皆無な奴らも多い。元々は神話に登場しているものが創作のモチーフになっていた名残だと思う」

「あ~そういう古さね~あ、本当だ。魔王で検索したらでてきたよ」

 ブレイドはスマホを触り、古くからいる魔王のことを調べていた。


「他の魔王もきになる~物語に登場する魔王のことを知るなら、色々な作品を見てけばいいのかな~」

 俺達の反応みて、さらにブレイドは興味をもったらしい。魔王のことを知りたがっていた。

「時間はかかるけど、その方がより魔王のことを知れると思うよ」

「本屋に一度足を運んでみるというのもどうでしょうか? 今もどれくらい魔王が登場している作品があるのか、ある程度ならわたしも伝えられますよ」

 魔王のことを知るために、逢夢が本屋で探すことを提案すると

「本屋か~まだ行ったことないし、みんなで行ってみたい~」

 ブレイドも甘ったるい声をだし、それを望んだ。、


「今日はもう遅いし、本屋に行くのは日曜日にしないか」

「あたしはそれでいいよ」

「では、日曜日にまた本屋で」

 絵麻と予定を合わせ、今週の日曜日に本屋に集まることになった。


         *         *         *

 

 あれから数日、レイター共に破魔が敗北した後も破壊力の研究は研究所で休みなく続けられ、

「これで我が破壊力はさらなる高みを目指せる」

 破魔と闘ったデータをもとに研究成果を確実にだし、破壊力の増強をさらにすることができるようになっていた。

 

「調子がいいみたいじゃねぇか、ディアボロス」

 じゃがりんこを食べながら現れたのはベインだ。我の背後に転移し様子を見に来ていた。心配してきたわけではない、なにか楽しいことを待ち望んでいるにすぎない。

 

「帰れ、貴様にはようはない」

「お前にはないかもしれないが、俺にはあるんだよ。こうやって進捗を確認するのも楽しみの一つなんだからよぉ、仲良くしようぜ。仲良くなぁ」

 仲良く等できるか! そう言いたい気持ちを抑え、平常心を保つことを心がける。

 

「ブリリアントウォールを破壊する手段も考えておる」

「ほう、そこまで準備してやがるのか。いいねぇ、それでこそ楽しみがいがある。でも早いとこ動きだしてくれよ。そうしないと暇つぶしにここを破壊しちまうかもなぁ。ある程度は待つが、あまりにも待たされるのは好きじゃないんだよなぁ」

 急かすのは待たされるのは嫌だから、こやつは自分の都合しか考えられぬやつだな。

 

「聞いておきたいことがある。なぜ貴様は加勢をしない。あいつらが倒すべき存在だから我を手駒にして使っておるのだろ」

 二度の闘い、ベインは破壊の意思という力を与えたが闘いに参加することはなかった。そのことをは疑問に思っている。なにか裏があるのではないか、そんな風にさえ思っていた。

 

「これは楽しめる闘いでなければいけない」

「あやつらを倒すためではないと」

「いいや、倒すだめじゃないとだめさ。それこそ完膚なきまでに」

「こう聞けばいいのか。なぜ貴様は手を抜くようなことをしておる」

 疑念に思っていたことをディアボロスはぶちまける。顔さえみたくない相手ではあるが、なにを思っているか観察するためにもベインを睨んだ。

 

「最高に楽しめるショーにしたいんだ、解ってほしいなぁ、魔王ってやつはそのために存在してるんだから」

 我が見たもの、それは自分勝手な笑顔をふりまくベインの姿だ。

「貴様に理屈を問おうとした我が間違っていたようだな」

 ベインについて知ろうとしたが、すべてはぐらかされるのだと悟りこれ以上問うことはしない。我のことを馬鹿にしているような態度はなによりも気に食わない。

「せっかくの余興だ、楽しいものにしてくれよ。アハハハハ」

 ベインは言いたいことを言い終えると、その場から消えさった。

 

「我らの闘いがショーだと、馬鹿にしおって」

 玉座に我は座ると、怒りを吐き出すかのように玉座を叩いた。

 ショー等という言葉をいえるのは利用している立場だからこそ。ベインと創造主も変わらない。ただ楽しむために利用しようとしている。腹の立つやつらだ。

「もう少し実験を重ね確実なものにしたかったが……頃合いか。これより破壊力増幅装置の起動シークエンスへと移行する」

 我が指令を伝えると、増幅装置自らがその声に反応し装置を起動させていく。

 つながれた無数の赤い破壊球が輝きだした。


「創造主共に利用されし魔王達よ、我らが利用されぬまま終わる存在ではないことをみせつけようぞ」

 破壊力増幅装置がこの世界の魔王達の意思を抽出、ケーブルを介して玉座に座っている我にこの世界の魔王達の破壊力が届けられていく。

「ぐぉおおおお」

 苦悶の声をあげると同時に、鎧からマグマのように熱い赤色の液体が吹き出した。

 赤く燃える煙も噴出、研究所が赤い煙で染まっていく。

 赤い液体は魔王達の破壊力の根源、それがぐつぐつと煮える鍋のように鎧を溶かし鎧をさらに強く成長させた。

 

「もう少しこの力を馴染ませる時間はいりそうだ。それまでの間に策をこうじておくか。この作戦が成功すれば、我が願うは叶う……それできなければ我が最強の力を持って闘うのみ」

 ディアボロスは自らの願いを叶えるために、次なる行動へと動きだす。

 ありとあらゆる手段を使って願いを叶える、その覚悟を決めていた。

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