2話 あらたなる輝き、レイ・ブレイド ⑬
「レイ・ブレイドやちゃええええ!」
喜びまじりの叫び声をだした後、ものすごい風圧と共にブレイドが疾走する。
その素早い身のこなしは獲物に襲いかかる狼そのもの。長い振り袖が揺れる中、一瞬で骸骨剣士の懐まで近づくと蒼輝刀剣で破魔を斬りつけた。
右腕と左腕を同時に粉砕。
「いまのうちだよ」
「助かります」
囲まれていたクリエイトと一緒に後ろへジャンプしてしきり直す。
あの骸骨剣士は素早いブレイドの攻撃に反応できていなかった。めちゃ強いじゃん。
「再生しちゃう相手、どうする創磨」
ブレイドがめちゃくちゃ強くて頼もしいんだけど、あの骸骨剣士達は倒せそうにない。なんかあいつら再生ばっかしてきて、決めてがないんだもん。あんなのどうしやいいのよ。
「二人なら倒せる。チャンスは一瞬、それさえ逃さなければな」
創磨が提示する案が流れこんでくる。これなら確かにいけそうかも。
「わたしゃが骨の剣を相手にする、ブレイドは骸骨剣士をお願い」
「わかりました」
創磨の提示した案を実行するべく、クリエイトは骸骨剣士の方に、ブレイドは骨をつなぎあわせた剣の方へ飛びかかった。
早く接近したのはブレイド。狼が獲物を噛み殺す寸前、後数秒もあれば巨大な骨の剣に埋まっていた赤い破壊球に、蒼輝刀剣を振り下ろすことができる距離まで近づいていた。
赤い破壊球が輝きだすと、接近していたブレイドの動きに対応。骨の剣が分裂しはじめ、分裂した骨達は鋭い矢となりブレイドに向かってきた。
圧倒的な物量、それはとても常人では対応しきれない。でもあたしのブレイドなら……
「そんなもので!」
次々と襲いかかってくる骨の矢をブレイドは次々に蒼輝刀剣で砕き、赤い破壊球を狙って蒼輝刀剣が振り下ろされた。
振り下ろされた斬撃は破壊球に直撃、白い床に叩きつけることに成功した。
斬撃の衝撃により破壊球は動きを停止しているが、このまま放置していたらまた再び動きはじめてしまう。
「創磨、いける!」
そうさせないための準備はすでにできている。
「ああ」
離れた所で闘ってたクリエイトも準備完了。骸骨剣士の動きを止めれていた。
よし、いっちょあたしもがんばりますか!
クリエイトにはクリエイト・バスターという必殺技がある。こいつらを倒すにはそれと同等の力が必要。
「必殺技、そんなんの考えてるに決まってんじゃん!」
頭の中ではずっと考えていた。あんな必殺技をやってみたい。こんな必殺技もやれるって、見てもらえないことに不安を覚える前からずっと。
破壊球は骨を集めて巨大な骨の盾になった。強力な攻撃がくると予感してのことか。だったらそれごと砕き飛ばす。
どこまでも蒼く澄みきっている月がみえる。
風の音、呼吸の音、ブレイドの心の音が聞こえ、これが一つになることなんだって理解する。
あたしが理想とする剣士は狼のような気高さを持っている。孤高でありながらも存在感を放ち人を導く存在、それを強くイメージしていく。
そしてそのイメージを形にしていけばいい。
ブレイドは左手だけで蒼輝刀剣を持つと、右手に創造の輝きをまとったペンを創り出した。
あたしも左手に創造の輝きで創った剣を、右手にはいつも描いてるペンを持ち創造力をまとわせていく。
意識を同調させ、呼吸を揃え、同時にペンを振り抜いた。
「くらえ、あたし達の蒼の輝き!」
左手に持っていた剣の刀身が、右手の創造の輝きをまとったペン先に触れている。
ペンから刀身へ、ペンにやどった創造力が蒼輝刀剣に付与された。
蒼い月夜で狩りをする気高い狼をイメージした剣技。描くうえでなんどもなんども創造したその形をそのまま行えばいい。
ブレイドは両手で蒼輝刀剣を握り、破魔に向かって疾走。
「「蒼破天狼撃」」
創り出した技の名を叫ぶと同時に振り抜かれたブレイドの蒼輝刀剣は、蒼い軌跡を描き、巨大な盾に変化した破魔を切り裂いた。
蒼き狼の力を宿した斬撃により破壊球は分断、蒼く輝く炎となって破壊の意思は消えていく。
「クリエイト・バスター」
あたし達が破魔を攻撃したのとほぼ同時、創磨とクリエイトも創造の輝きを集めた光を放ち、破壊の意思を消滅させた。
「この二つの破魔はお互いに共鳴していた。だったら同時に倒せばいいだけのこと」
「これで復活はできないわよ」
創磨がたてた仮説どおり、同時に破魔を倒すことで破魔は再生されることはなかった。
「再び我が敗れることになろうとはな」
魔王ディアボロスは敗北したことを予期していたらしく、負けた事実は受け止められてる感じはする。けど底知れない憎しみは止む気配はなさそう。
「まぁまぁ楽しめたぜ。まさか、破壊力を持ってるお前がレイターを創り出しちてしまうなんてね」
そんなディアボロスとはうってかわって、ベインという存在はニヤニヤと笑っている。味方が負けたっていうのに不気味な奴。
「あんたらにとって不利なことなのに、なんでそんな楽しそうなのよ」
「予想外な事が起きたほうが創造ってやつは楽しいだろ。お前はそれをしてくれた。楽しむのは当然じゃねぇか」
「なにそれ」
ベインとやらからは嫌味こそ感じない。本当にあたしがしたことを楽しそうに笑っている。
「今日はバレンタインデーらしいじゃねぇか。パッキー、俺からプレゼントしてやる。大丈夫、ほら毒見はしてるだろ」
チョコがのったスティク菓子パッキーを一本食べた後、パッキーを食べさせようとしてくる。
もちろんそれは受け取らない。ノリは嫌いじゃないけどね。
「貴様はなにしておるのだ」
ベインの態度にむかついているのか、ディアボロスの声に静かな怒りがこめられている。
「楽しませてくれた相手と交流をしてるだけさ、俺のことを覚えてもらうためにもね。ディアボロス、お前と違って俺は戦ってねんだ。アピールはしておかねぇと」
「ふさけたことを……お前のことをすべて理解しようとせぬ方が、良さそうだな」
「俺としては、理解して欲しいんだがなぁ」
ディアボロスとベイン、仲がいいわけではなさそうだよね。
「ディアボロス、お前は俺達の何が気に食わない。創りだした俺がそうさせてしまったのか? どう思われたっていい。俺はディアボロスのことをもっと考えたい、だから……」
ふざけた態度のベインとは違い、胸に手をあて創磨は必死に想いを伝えようとしていた。
創磨は魔王ディアボロスを創りだした。だからこそ、敵になってしまった理由を聞き、あたしにしてくれたように考えようとしてるんだ。
「考える、ならば我の願いを考えてみよ。できぬだろうな、自分達のことしか考えれない貴様では」
確信を持つことができないのか、創磨は黙ったままでいる。ディアボロスが何を考えているのか、創り出した創磨にも理解し難いものになっているのかな。
「いつまでも仲良しごっこはしておれぬ。次こそは必ず貴様らを倒す」
「だってさ。せいぜい頑張ってくれよお前達も、俺を楽しませるためになぁ」
魔王ディアボロスはいらいらとしながら、破壊王ベインは陽気な笑顔をみせながら、どこかへ転移した。
これで一見落着って感じだと思ってもよさそう。あいつらとの戦いが終わりってわけじゃなさそうだけどね。
「うしゃぁあああ、あたし達の勝ちだよブレイド」
「マスター、お疲れさま~」
真面目モードは終わり。ここからは元気百倍! 変身を解いたブレイドに抱きついて逢えたことを喜んだ。
あたしが書いたキャラが目の前にいるとか、やっぱめちゃ嬉しいよ。
「助かったよ、絵麻、ブレイド」
「わたしゃらもだよ~」
あたし達の元に駆け寄ってくれた創磨と逢夢にブレイドが向けたのは、寝ぼけたような顔と声。こののんびした感じ、安堵感が半端ない。
「さすがでしょ、あたし達」
「本当、よくやってくれたよ」
これにて完全勝利! 創磨に褒められて気分もよきよきだ。
「闘いも終わったし、自己紹介でもしようかな~わたしゃはブレイド、マスターに創造された剣士だよ~のんびりのんびり生きてきたい、あ、でもマスターのお世話はちゃんとやるよ。今後ともよろしく~」
創磨と逢夢はブレイドと握手を交わした。いい眺め、仲間と共に闘う決意を決めるシーンとかめちゃいけてるよ。
「一旦絵麻の家に戻りましょうか」
クリエイトがあたし達を転移させてくれて、あたしの家に帰ってこれた。




