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2話 あらたなる輝き、レイ・ブレイド ⑪

 転移した場所は薄く靄がかかった赤い空と、真っ白なノートのように白い地面がどこまでも広がっている。周辺には赤い瓦礫がまばらに積まれていた。生き物はいない、風すらも吹いていなかった。異様な光景であり、到底現実世界ではないのはみただけでは解る。

「なんだここは?」

「現実世界とクリエイトワールドの間、アウターワールドと呼ばれていたようです」

 答えて欲しいがために問いかけたわけではなかったが、逢夢はその答えを知っていた。

 

 呼ばれていたか……俺がクリエイトブックの知識を知った時のように、逢夢はこの世界に来た瞬間にこの世界について思い出したのかもしれない。

「ええ? 展開についてけてないんだけど」

 絵麻は落ち着かない様子であたりをキョロキョロと見回していた。

 いきなりこんな所に転移されたら、絵麻でもそりゃあ受け止めきれないよな。心構えがあったとしても非現実的なことが続きすぎて、これが現実であることを認識できない。常識的な判断というのは常に現実的な問題に対して行われるものだと痛感させられる。

 

「なにやら客人が混じっておるようだが」

 瓦礫の影から出てきたのは魔王ディアボロスと二人の骸骨剣士だ。

 骸骨剣士は赤い破壊球がお腹に埋め込められている。大きさは三メートルほどあり、手には巨大な剣と盾をもっていた。

「俺が呼んでおいたのさ。臭うだろ、赤く濁った破壊力を」

「使うかどうかは、我が判断させてもらおう」

 ベインが舌打ちをしても、ディアボロスはまったく動じることはない。この二人にはおそらく信頼関係をきずくという意思すら感じない、利害関係は一致しているだけみたいだ。

 

「ディアボロス。破壊力を利用してなぜ俺達を狙う」

 以前できなかった対話を試みようとするも、

「言ったはずだ、我ら魔王達の願いを叶えるためだと。行け、破魔共」

 ディアボロスは二体の巨大な骸骨剣士をけしかけてくる。

 

「なに、これってどういうこと?」

「今は説明している時間はない。逢夢、変身だ」

「はい!」

 戸惑う絵麻を置き去りに、物語を書く時のように逢夢と意識を同調させる。

 

「創造の輝きよ、未来を創る力となれ」

「レイター・ブリリアントチェンジ」

 逢夢はクリエイトブックの桜の紋章をタッチ。

 光輝く白いドレスに身にまとい、創造の輝きをその身にやどして桜色のバトルコスチュームへと変身をすると、

「未来へ続く創造の輝き、レイ・クリエイト」

 左手を胸にあて右手は腰の高さに合わせて手をのばし決めポーズをとった。

 

「――逢夢が変身した!」

 夢のような光景に感激し絵麻は一瞬言葉を失っていたが、どっと押しよせてきた感情を爆発させてはじけ声をあげた。

 物語みたいな展開みたらそうなるよなぁと思いつつも、今はそれにいちいち突っ込みをいれてる暇はない。

 

 あの骸骨剣士は俺の物語にはいないものだ。おそらくあの魔王ディアボロスが独自に創り出し新たなる魔王の配下ということになのだろう。ボスよりも苦労はしないが考えて闘う必要はある。少なくとも雑魚敵ではない。魔王の配下ともいえる実力はそなわっているとみるべきか。

 

「二体いる。まずは一体を確実につぶそう」

「わかりました」

 闘う方針を伝えると

「はぁあああ」

 クリエイトは骸骨剣士へ向かって跳躍。


「創造の衝花、クリエイト・インパクト」

 創造の輝きを手のひらに集め、その輝きを至近距離でぶつけた。、

 骸骨剣士は盾で攻撃を防いでいたが、その盾をいともたやすく粉砕。骨でつながった腕すらもバラバラにした。

 

 これが動きが止まる。そう思えていたのだが……

(まだ動けるのか)

 骸骨剣士は倒れることも痛みも感じる気配すらなく動き続け、右手に持った剣でクリエイトを斬ろうとした。

 腹を狙って振るわれた斬撃、クリエイトは剣が接触するよりも早く体を大きくひねった蹴りで右腕の骨を吹き飛ばし対応。

 両腕を失った骸骨剣士に再びクリエイトは攻勢にでようとした所、骸骨剣士は大きな口を開いてクリエイトを噛み砕こうとしてきた。

 

「クリエイト!」

 攻撃はしてこない、そう思っていたから反応は遅れた。きずいた時には手の届く間合いまで巨大な顔が近づいている。赤く光る骸骨の目はすでに一死報いたと思っているのか笑っていた。

 

 しかしクリエイトはそんな笑いすらも吹き飛ばす。

「創造の衝花、クリエイト・インパクト」

 避けることができないのなら攻めればいい。創造力をまとった拳の衝撃で骸骨頭を粉砕、あばらと背骨の間にあった破壊球をも砕いた。

 どんなに壊されても動き続けていた骸骨剣士も、破壊球が砕かれれば動くことはない。

 

 力量差はある。一体目を片づけたとなれば二体目も容易に片づけられそうな感じはする。

 しかしなんだ、あのディアボロスの余裕そうな態度は。砕かれた骸骨剣士をみても危機感を感じている様子はない。

(どうしてそういられる?)

 疑問が喉につきささる。クリエイトも同じようなことを思っているのか腕を構え警戒を続けていた。

 

「一体目の破魔の破壊球は砕きました。残り一体もそうさせてもらいます」

「やってみるがいい。できるものならばな」

 二体目の破壊球が強く光り、巨体とは思えない速度で骸骨剣士が走りだすと、地響きと共に白い床がひびわれた。

 なにか嫌な感じがする。あの破壊球が光っているからか? 余裕すぎるディアボロスの態度もきになる。なにか見落としているのか。

 

(あれは……)

 二体目の骸骨剣士から目をそらし周りを見渡すと、一体目に埋め込まれていた砕いたはずの破壊球が赤く輝き、骸骨剣士が再生をはじめている。

(クリエイト!)

 俺の意識が流れこんだことで、クリエイトも一体目の骸骨剣士が再生していることにきずいた。

 

 二体目の骸骨剣士の斬撃が振り下ろされ、クリエイトはそれを素早く横へ飛んで回避。さきほどであれば攻撃をしているタイミングだが様子見してくれてる。

 そして次の瞬間には、一体目の骸骨剣士が巨大な剣の形に変化し、クリエイトの背中に突撃をしていた。

 クリエイトはその攻撃をバク転で回避。

「再生能力持ち……助かりました、創磨」

 クリエイトがバク転で回避できたのは、一体目の骸骨剣士の動きに警戒していたからこそだ。

 

「ふん、避けよったか」

 腕を組みながら魔王ディアボロスは鼻息混じりの声をだした。この攻撃は当たると思っていたらしい。準備を整え、圧倒的な力に対しても物怖じしない。それは紛れもなく俺が創り出した魔王そのものだった。

 

「あまりも余裕な態度だったんで、警戒させてもらった」

「作者の勘というやつか。だがそれは一時的に攻撃をしのいだにすぎぬ」

 骸骨剣士と浮遊する巨大な骨の剣は同時にクリエイトを襲う。

 

 こいつらのやっかいな所は攻撃そのものではない。一つ一つを粉砕した所でまた再生される、再生能力にある。

 攻撃をしていれば消耗するのではなく、攻撃をしてもほぼ無意味。

 防御をほとんど考えなくていい相手は攻撃に専念すれべ良く、自然と防戦一方になっていく。


「再生されると解っているから、攻撃もできぬようだな。破魔達よ、誰にもみられず苦しめられた想いをぶつけるがいい」

 ディアボロスの言葉をトリガーにして破壊球はさらに強く輝きだすと、破魔の動きが鋭く早くなっていく。クリエイトも動き回ることでなんとか対応はできているが、このまま消耗戦をしかけられたら不利だ。

 

「さて、そろそろ我も動くとしよう」

 魔王ディアボロスと視線が合う。やばい! ベインとは違ってこいつは見守っているつもりなんてないのか。

 

「創磨!」

 クリエイトは破魔に足止めされて身動きができない。

 ディアボロスは走りだし、赤い鎧がこすれあう音が響く。人間の走る速度よりもあきらかに早い、あれからは逃げられない。

 

 身構え魔王ディアボロスの接近にそなえるも、

「無駄だ」

 なに一つ抵抗することもできず首元を掴まれた。

 

「がはぁあ」

 首をつかまれた衝撃で息が詰まる。こ、こんな簡単に。

「つかまえたぞ」

 ディアボロスに掴まれて身動きが完全にとれない。こんな所で終わりなのかよ。


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