2話 あらたなる輝き、レイ・ブレイド ⑦
記憶、いやこれは夢か……我が今いるのは創造主の物語の中のようだ。
魔王達の力を借りることができるようになった我は、作者と共謀し創造を届けようとする愚か者達が多くいる出版社のビルの上にいた。
「消えるがいい、愚か者共よ」
我は愚か者達に裁きをくだす業火を創り出し、出版社を粉々にしようとしていた。
「はぁあああああああ」
その前に現れたのはレイ・クリエイト。いつも我の邪魔してきた創造の戦士。そいつは我が創り出した火球を消滅させてきおった。
「ディアボロス、あなたはなぜこんなことをするのですか」
「決まっておろう、我らを愚弄する奴らを消すためだ」
「それは誤解です。魔王を大切にしてくれる人達はいます。あなたが消そうした、あの出版社の中にもです」
こやつはいつも自分が正義だと言わんばかりの発言を繰り返しおる。不愉快だ、不愉快だ!
「それは違うな。奴らは我らを利用し続けているにすぎない。魔王達のことは都合の良い駒としか考えおらぬのだ!」
愚かなるクリエイトに制裁を与えるため、魔王達の力を込めた拳を叩き込む。
「どうして、どうしてそんな風にしか考えられないんですか」
それをクリエイトは防いできおった。魔王として覚醒した我の力に抗うとはな。
いいだろう、徹底的に貴様を破壊してやる。
クリエイトとの戦いがはじまり、お互いの力と想いがぶつかりあう。
「そんなもの貴様達が多くの魔王を倒してきたからではないか! 倒されるのが当たり前の存在、そこに大切にしたい気持ちがあろうはずない」
「いいえ、そんなことはありません。大切にしたい気持ちがあるから、こんなにもたくさんの人が楽しんでくれているんです」
激闘は続く中、徐々にではあるが我の力が押されはじめる。
創造主の主張、それがまかりとおる世界。それがこの物語。
「それはとっても暖かくて……」
そんなものは知らぬ。
「力を与えてくれるもの」
そんなものは知らぬ!
振りかざされる理屈は我を満足させるものではない。そして……
「あなたが力ずくですべてを変えようというのなら、わたしはあなたを倒し、読者と共に歩んできたかけがえのない未来を守ります」
クライマックス、憎しみの力で強くなった我を倒そうと、クリエイトは創造力を集めた。
この世界はすべてが創造主の意思で決まる。それですべての勝利と敗北は決まる。
「クリエイト・バスター」
我を倒す一撃、それにより我の憎しみは潰えた。
「ぐぁあああああああ」
絶叫し、抗えない力を前に消えていく。
我はもういらないものだというのだな、創造主よ……
ふざけるな、ふざけるな。ふざけるな、ふざけるな。
これが大切にするということか、こんなことが大切だというのか。
(こんな不幸な目にあわせないために、我は……)
憎しみは消えない、消えることなく続いていく。それが我の願いを創り出す。
「くだらぬ夢だ……」
膨らみきった憎しみが強い衝撃を与え、目が覚めた。
現在居住地としているのは異空間につくりだした研究施設。
室内は禍々しい破壊力から創り出された赤い煙が広がっており、我が創り出した大量の装置がそこらじゅうに転がっている。
破壊力を集めた端末はすべてケーブルでつながり、中央にある巨大な破壊球と四角い制御端末
に接続され、管理、コントロールされていた。
制御端末には状態を表示するためのディスプレイ、情報を入力や指令を送るためのキーボードボタンが設置され、そのの扱い方は作った我にしか解らない。
「いい具合に破壊力が強くなってきておるな」
破壊力増強装置により、以前よりも強い破壊力を保持した破壊球がもうすぐ創られようとしていた。
「この2つを分離させたうえで、破魔を作り出せば」
破壊力が共有された状態であれば、また面白いことができそうだ。
「仕事熱心だなぁ、あれだけ小さかった破壊力をここまで強くできるだなんてよぉ」
「ベイン、なぜ貴様がここにいる」
我が研究成果を元に思案していると、気配を感じさせることもなくベインが背後に現れた。
この場所はやつにも知らせておらん。どうやってここを。
「俺が破壊力を与えたんだ。レイター共がきずかない外界から隔離された場所とはいえ、その破壊力をたどればお前がいる場所はすぐに突き止められる」
「なにをしにきた」
その説明で納得はしたものの、ベインは歓迎する相手ではない。協力関係にあるから話を聞いてやる、そんな程度の相手。
「退屈だから、ちょっかいを出しにきただけさ。、成果をみるついでにな」
手に持っているコーラを飲みながらベインは答えている。自分のやりたいことをやりにきただけ、そんな感じなのだろう。
「アウターワールドにもお前は顔をだしてるみたいだな」
「貴様が与えた記憶とやらが教えてくれた。本来の目的はあの場所を破壊すること」
「そこまで解ってるなら、そろそろ動いてもらいてぇな。楽しませてくれよ、この俺をな」
ベイン楽しそうに笑いながら、肩を叩いてきおった。
なにを考えている解らない、その微笑みは不気味さを感じる。
「きやすく触れるな、我は魔王であるぞ」
叩かれた手を払い、魔王としての威厳をみせる。いくら創造を破壊する協力者だといえ舐められるのはプライドが許さなかった。
「威勢がいいねぇ、それくらいの意気込みで頼むぜ」
ベインは憎たらしく思えるような笑みをうかべながら、その場から消えた。
「やつめ、いちいち勘に触るやつだ。まぁいい、今は協力してやる。この我の願いを手にいれるためだ。待っていろ創造主共、我が研究したこの力で捻り潰してやるわ」
フッハハハ、高笑いをあげ、憎しみをさらに燃えあがる。
我の願い、それを叶えるために利用できるものを利用する。
それがたとえ、どんな不愉快な相手だろうともな。




