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2話 あらたなる輝き、レイ・ブレイド ⑤

「あたしがきたぁああああ」

 着替え終わった二人が撮影スタジオに戻ってきた。やたらと絵麻はテンション高いな~そんな風に思いつつ二人の姿をみていく。

 逢夢が着ているのは作中の桜色のバトルコスチュームを再現したもの。本物かと思うくらいのクオリティの高さだ。

 

「このバトルコスチュームは絵麻が作られたのでしょうか?」

「自前でコスは用意することあるけど、今回は違うかな。あたしが創ったバトルコスチュームの意見をもらいたくて見てもらったら、ママが作ってくれたんだよね」

「すごいクオリティだよな」

「さすがだよね~」

 絵麻は鼻を高くして母親のことを褒めている。自慢の母親だっていうのが言わずとも伝わってくるな。、

 

「絵麻もバトルコスチュームぽいの着替えたんだな」

「創磨の作品みたら自分のもデザインしたくなったんだよね。これめちゃかわいいでしょ!」

 絵麻は黄色をベースとしたバトルコスチュームに着替えていた。

 

 上半身は太陽の下で咲ているかのような向日葵色ののキャミソール。肩だけでなく背中も半分露出されている。胸元の周りには白いレース、両腕の手首と二の腕にそれぞれ黄色のシュシュをついていた。

 

 下半身は黄色のフレアスカートの上にベルトが巻かれ、左側は刀をさせるように右側は太めのペンがさせるようになっている。橙色のブーツには白い翼の飾りがついていた。

 おそらく逢夢の衣装に触発されてつくったであろうコスチューム。特に剣士のような刀と爽やかな黄色が逢夢とは違う独自の色を創り出していた。

 

「とってもかわいいと思います」

「剣士ぽい要素もあってかっこいいよな」

「でしょ~これ絵咲ちゃんのバトルコスチュームにしようかなぁて思ってるんだよね」

 褒められてかなりの上機嫌。絵麻はくるりとまわって衣装をみせつけてくる。

 

「絵咲ちゃん?」

「あたしの看板娘だよ。みてみて」

 絵麻はスマホをとりだし、SNSにあげていた絵咲ちゃんのイラストをみせていた。

 

 看板娘というのはイラストレーターが描く、オリジナルキャラクター。いわゆるうちの娘というやつがあり、めちゃくちゃ愛情をそそいでいる人が多い。

 とくに可愛い女の娘をメインに描くイラストレーターは、看板娘を描いていることは多い。

 

「絵麻みたいな女の娘ですね」

「でしょ~これ、あたし自身をモデルにしたんだ。物語の中にあたしがいたらみたいな感じで、小さい頃から描いてた」

「絵咲ちゃんも、とっても可愛いと思います」

「そう言ってもらえて、めちゃ嬉しいよ!」

 絵咲ちゃんの髪型は絵麻と同じサイドアップ、見ている人を笑顔にしてしまう明るい印象の女の娘。少し幼い印象を受けるのは小さいころから描いているからか。

 自分みたいなキャラクターを描いてみたいと思えるのは、自分に自信があるからなのかもな。

 

「逢夢、作中みたいに闘うふりってできそう?」

「やってみますね」

 限られた空間をつかって、逢夢はキックやパンチを繰り出していた。

 体重移動はもちろんのこと、目の前に敵がいるかのように闘うのがうまい。回避行動といったものをまぜながら、闘う演技を続けていく。

 打撃音が聞こえてきそうなほどの迫力、動きにキレもあった。


「めちゃ良い動きするじゃん! なんかやってたの?」

「え~と……」

「子供の頃に空手道場に通ってたんだ! そうだよな、逢夢」

「あ、はい! そうでした」

 質問され、困ってそうな逢夢を慌ててフォローをしておく。

 

「へぇ~そうなんだ」

 お互いに苦笑いをうかべてしまっているが、なんとかごまかすことができた。

 

 絵麻はワクワクした表情を浮かべ続けながら、戦闘シーンを描いていく。

(アクションもこんなにも描けるのか

 剣士が素早く刀を振るうかのようにペンを動かし、またたく間に躍動感のある絵が完成されていく光景にすっかり見惚れてしまっていた。


「ううぅうううう、疲れました」

 逢夢は絵麻の指示どおり戦闘シーンを何度も何度もやったことでだらりとスライムのように顔がぐにゃりとさせてぐったりしている。さすがに変身しないまま急激に体を動かして疲れてしまったようだ。

 

「お疲れ、手を抜かずに動いてくれてありがとな」

「えへへへ、そう言ってもらえて頑張ったかいありましたよ」

 スライム顔のまま嬉しそうにニヤリと逢夢は笑った。

 

「これ! 超めちゃいい感じでしょ」

 疲れてふにゃふにゃモードの逢夢とは違って、絵麻はまだまだ元気ハツラツ。自分が描いた絵を見せびらかしてくる。

 

「躍動感がすごくいい味をだしてると思う」

「でしょ~」

 絵麻の描いた絵は漫画のようにシーンがつながっており、体の動かし方や空気感を感じる表現が上手い。なによりすごい楽しんで書いてくれているのが伝わるものだった。


「二人とも、出前とるから夕食食べてかない。ママ達がいた時はそうしてたし」

「一緒に食べてくよ。ただしお金は出させてくれ、学生に奢ってもらうわけにはいかない。なにがいい?」

「なんでもいいよ~」

「それが一番困るんだが……出逢った記念ってことで寿司にしとくか。祝いの席って感じな方が特別な感じでそうだし」

「見栄はってない?」

「これから仕事仲間になる相手だ。ケチな所を見せたくない。こっちは社会人だしな」

 学生相手であり、これから仕事をしていく関係。雑な扱いはしたくなかった。


「創磨がいいならそれで。ありがとね。あたし達は着替えてくるから創磨はリビングで待ってて」

 逢夢達が着替えている間に階段を昇った先にあるリビングへで出前を済ませると、ふと目の前にある本棚に目を向けた。

 

「天上先生の作品が多いな……あの躍動感。天上先生を意識してたのか」

 天上先生が書いた漫画が本棚にはおさめられている。絵麻のあの躍動感のある絵は天上先生を意識したものだと思う。簡単に真似できるようなもんじゃない。才能があるからこそ同じような躍動感をだすことができるんだろうな。

 

「憧れてる作家のようになりたく頑張っているのか。羨ましい……なんて思うのは駄目なんだろうな」

 若さと才能、そんな2つを輝かせている絵麻のことを羨ましく思ってしまうのは、自分には才能なんてないと思っているからだろうな。

 

「戻ってきたよ」

 絵麻達が着替え直し、リビングに戻ってきた。


「出前が来る前に片付けするか」

「あ、そうだよね」

「わたし達も手伝います」

 散らかっているリビングを綺麗に整頓、出前が来るのにそなえた。

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