2話 あらたなる輝き、レイ・ブレイド ④
「あたしの家、ここからめちゃ近いから」
絵麻の案内され、絵麻の自宅を目指す。
「入って入って」
喫茶店から歩いて5分くらいの場所に絵麻の家はあった。
綺麗な青い外壁、二階建てで何人か泊まることができるくらいには大きい。
「絵麻、先にご両親に伝えてきたらどうだ。休日にあがりこむわけだし」
休日に家にあがりこむとなると、それなりに広い家といえどきになる存在。勢いできているようなものなので、了承くらいは得ていおかないとな。
「中学生までは一緒に住んでたけど、今はやりたい仕事があるからパパとママは海外にいる。だから1人暮らしなんだよね」
「一人暮らし、それは大変だな」
「色々やってもらってたとこはあるけど、もう高校生だしね。パパとママには自分のやりたいことをやって欲しいから」
絵麻は両親のことを応援し、イラストレーターとしても活躍している。
学生の頃なんて俺は自分が楽しいことだけしか考えていなかった。
俺よりも若いけど、俺よりもすごい娘だな絵麻は。
絵麻のことを尊敬しつつ、玄関の扉を開けて中へと入った。
家の中をみると、彼女の違う一面が見えてきた。
玄関の入口はきれいだったが、その先の廊下に読み終えた本や着終わった服が乱雑に置かれている。廊下や部屋という区分はされていない。広いはずなのに足の踏み場を考えなければいけない程に散らかっていた。
(片付けた方がいいといいたいとこだけど、それを聞いてくれるタイプではなさそうだよな。黙っておこう)
誰か整理をしてくれる人がいればいいのに、それくらいには家の中は散らかっていた。
「こっちこっち、地下に撮影部屋があるんだよね」
階段を降りていくと、撮影部屋は確かにあった。
部屋の中はさきほどいた廊下よりも整理されており、動き回れるくらいには広い。撮影機材なんかも置かれ、普通の家では考えられない光景だった。
「どうして撮影部屋なんてあるんだ」
「あたしのママがモデル兼デザイナーで、パパはカメラマン、それでかな」
聞けば納得という回答であるが、普通じゃないのは事実か。絵麻が美人で服なんかのセンスがいいのは親の影響というのはありそうだ。
「逢夢、そこの椅子に座って」
「こうでしょうか?」」
「うん、そんな感じ」
逢夢が椅子に座ると、絵麻の視線が逢夢に集まった。
「/////////////」
はじめてモデルみたいなことをしたからか、逢夢は赤面して恥ずかしそうにしていた。
「ちょ、えろ!」
照れてる姿を見るだけでこの反応、かなり絵麻の頭はお花畑すぎやしないか。
「恥ずかしがることないぞ。リラックスしていこう」
「そ、そうですよね。せっかく描いてもらえるのですから、可愛い姿をみせなければ」
「見られたがりだけど恥ずかしがり……これが本家本元の反応。可愛い姿なら、さっきの恥じらう感じでいて欲しいな」
「恥ずかしそうにする……ど、どうしましょう。ずっと恥ずかしい姿でいるのは難してくて」
「めちゃくちゃ恥ずかしいことをずっと考えてみるといいんじゃない」
「は、恥ずかしいこと、恥ずかしいことですか」
逢夢は絵麻の要求に答えようと、恥ずかしいことを考えはじめてた。
「/////////////」
湯気でもでていそうなほど、顔が真っ赤になっている。かなり大胆なことを考えていそう。これでもかというくらい妄想で恥ずかしがっていた。
「かぁ~めちゃ可愛い! おぉおおし描くぞぉおおおお」
よだれでも本当にたらしそうなくらいニヤニヤした顔で、絵麻はペンタブとタッチペンを手に逢夢をモデルに絵を描きはじめる。このやる気のスイッチの入り方はイラストレーターらしいともいえるのか……いや、さすがにそれは失礼か。
はじまり方こそ真剣とは言い難いものだったが、描き進めていくうちに絵麻のニヤケ顔はなくなっている。完全にお仕事モード、描くことだけに集中している。
(プロのイラストレーターが描く姿を動画でみたことはあるけど、まったくそれと同じ……いや、それよりも早いかもな)
線を引いたと思ったら、また次の線が引かれている。
迷いが一切ない、最初から完成した絵の姿がそのまま解っているみたいだ。
それでいて適当には描かれいない。質感が解るように線に強弱がつくられ、やわらかいタッチが逢夢のイメージにあっている。
色がない白と黒の世界で逢夢という一人のキャラクターを完全に表現し、あっという間に描きおえていた。
「見て見て、今の逢夢に合わせてちょい大人ぽくしてみた。イラストの中の逢夢もめちゃ可愛いでしょ!」
椅子に座ってはじらう逢夢のイラストは、本人の特徴をよく捉えている。色はついていなくても立体的にみえ、照れている表情芝居も完璧だった。
「すごく可愛いと思う。描くスピードも早くて驚いたよ」
「でしょ~そこも自信あるんだよね」
「わたしにもイラスト見せてください」
「いいよ、いいよ」
絵麻にイラストをみせてもらうと、逢夢は頬を緩ませ心を踊らせていた。
「とってもとっても素敵なイラストを描いていただきありがとうございます。もっと描いていただけるとわたしも嬉しいです」
「も~う、そんなこと言われたら、どんどん描きたくなっちゃうよ」
見せたがりだけじゃなく、描かれたがりな一面を逢夢はみせている。キャラクターだからこそもっと描かれたいと思う逢夢らしい反応だった。
「二人ともこっち来てよ」
絵麻の手にひかれて入った隣の部屋には、服が見渡すかぎり置かれていた。
「ここは衣装部屋。ママが仕事で着たのもあれば、コスプレ用で着ている服もあったりするよ」
「こりゃあまたすごいな。充実しすぎだろ」
「それあたし自身も時々思うんだよね。さすがパパとままだよ」
美しく高いデザイン性を誇る服の中に、アニメや漫画でありそうな服が混じっている。これだけの服があるのはそういった理由か。
「でてこ~い」
たくさんの服が入っているクローゼットの中から、絵麻はその一つを手にとった。
「これ、着てみて!」
「これはバトルコスチューム!」
絵麻がクローゼットから取り出しのは、作中で逢夢のが着ている桜色のバトルコスチュームだった。かなり精巧につくられていて本物かと思うくらいだ。
「あたしが頼んでパパがつくってくれたの。これ着てみてよ」
「喜んで」
「よしゃ! あたしも自分でデザインしたの着ようかな~」
二人のやりとりを微笑ましく思ったのもつかの間、
「な!」
逢夢と絵麻は俺がいるのをお構いなしに着替えをはじめた。
逢夢は白いブラジャーを、絵麻は黄色のブラジャーがみえるほどに上着をたくしあげている。
女の娘らしい可愛い下着、みずみずしい柔肌、そして深い谷間がみえている。
おっぱいというものをみると、本能がどうしてもそこに目を向けてしまう。どうしてこれほど魅力的に感じるのだろうか……とか思って場合じゃねぇ。
「はわ、はわわわわわわ」
逢夢は下着を姿をみられて悶えながら、
「////////////////////////」
酔っぱらってしまったのかってくらい、顔が真っ赤に燃えあがっていた。
「あ~、パパがいても目の前で着替えてたからそのノリでつい……見たいなら、見ててもいいけどね!」
絵麻は気まずそうな顔になることなく、ウィンクするくらい余裕な態度。なんでそんな冷静なんだよ!
「そんなことしねぇよ!」
このまま居続けることなんてできず、捨て台詞ぽいことを言いながら慌てて部屋から脱出した。まさかラッキースケベみたいな展開をすることになるなんてな。




