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2話 あらたなる輝き、レイ・ブレイド ③

「ちょうど来たようだな。紹介したい奴がいる」

 正谷さんはスマホに目をやってから店の外へ出ると、アイドルかと思うくらいの美人な女の娘を連れ戻ってきた。年齢が若く見える、高校生ぽいな。


「えぇえええ! すご! そっくりじゃん!」

 手の届かない学園のマドンナ、そんな印象でいたのだがそれはすぐに崩れ去る。

 その女の子は逢夢の姿をみた瞬間、猫がボールに飛びつくかのように逢夢にとびつき手を握った。騒がしそうな娘だ、そんな第一印象に早くも変わった。

 

「自己紹介を頼む」

「は~い」

 もう少しじっくり逢夢の手を握っていたそうにしていたが、正谷さんの冷静な態度をみて快活な少女は逢夢の手を離し自己紹介をはじめた。

 

「あたしは才藤絵麻さいとうえま。イラストレーター『ハガサネ』として活動中。よろしくね!」

 サファイアのように美しい瞳から放つウィンクからはどんな物事に対しても飛び込んでいくエネルギーを感じる。

 すらっとした顔だちや体型、逢夢ほどではないが胸周りもほどよく膨らんでいてスタイルが良い。膝がみえるほど短い青色のミニスカートの下には、寒さを和らげるために黒いストッキングをはいている。上着は黄色のニットの上にベージュのコートを着ていた。

 スポットライトのように光輝くオレンジブラウンの髪は、サイドアップと呼ばれる髪の一部を束ねて後ろ髪は垂らす髪型でまとめられている。おしとやかな印象を与える背中を覆ってしまうほどの後ろ髪と、今にでも自由に動きだしそうなイメージを与えるサイドテール。正反対な要素がギャップとなり、そのギャップが可愛さを創りだしていた。


「遠坂創磨です、よろしくお願いいします」

「桜木逢夢です、よろしくお願いいします」

 アイドル級のキラキラしたハガサネ先生の自己紹介に圧倒されながらも、俺と逢夢は無難な自己紹介をした。


「なんでこんなに作中の逢夢と似てるの? 名前まで同じだったし!」

「桜木さんをモデルに描いたそうだ。物語が好きな親戚同士、二人で共に暮らしているとか」

「なにそれ! めちゃくちゃドラマティックな展開じゃん!」

 絵麻はさらにキラキラと目を輝かせ、穴が空くんじゃないかってくらい逢夢はじっと見ていた。

 

 そして……

「まじで物語の中に登場した逢夢みたい! めちゃ可愛いよ!]

 ハガサネ先生は逢夢に背後から抱きついて、ほっぺをすりすりしはじめている。初対面にするようなスキンシップじゃない、あまりにもフレンドリーすぎるな。


「初対面だぞ、困惑するだろうが」

「いえ、わたしは別に……」

「困ってなかろうが過剰なのは拒否しろ。周りの目もあるからな」

 突き刺すような正谷さんの視線が向けられると、空気を読んでは~いとハガサネ先生は言ってから着席した。

 

 少しは反省して萎縮してしまう、そう思っていたのだが

「あなたがソウマ先生ですよね! これ、ソウマ先生の作品を見てあたしが描いた逢夢です。すごい似てるでしょ!」

 元気良くハガサネ先生はスマホに表示されたイラストを見せてきた。

 

「ここまで似てるなんて、驚きました」

「それね~ソウマ先生って、テラステラの勇気未来が好きだったりします?」

「あ、はい。一番好きなキャラクターですね」

「やっぱそうなんだ。特徴がやたらと似てたので寄せてみたんだよね。それがいい感じに似る要因みたいになったのかも。他のイラストも見てみますか。昔は勇気未来の絵なんかも描いてたりしていて」

 ハガサネ先生はさらにイラストを次々に見せてきた。描いたイラストをたくさんの人にみたもらいたい、アイドルが自分の姿をみてお客さんに喜んでもらいたいと思うように、絵麻も自分のイラストみて喜んで欲しいんという強い意思を感じた。


「ハガサネ先生のイラストは、テラステラの絵がきっかけでSNSで拝見しています。センスを感じる服の着せ方と爽やかな色づかい、自らの強みが発揮されたこだわりの感じるイラストばかりでみていて楽しいです」

 多くのイラストレーターが数多くいる中で目を引くのは、ファショナブルな着こなしと爽やかな色づかい。ハガサネ先生はまだ活動して日が浅く、フォロワー数という意味では長年活動しているイラストレーターよりも少なかったが、もし自分の小説が出版されるようなことがあったらこの人にイラストを描いてもらいたい、そんな妄想をする内の一人だった。

 

「正谷さん、事前にあたしがやるって言ってましたっけ」

「しゃべってないな」

「それじゃあ、あたしのこと知ってくれてたんだ! 超嬉しい!」

 読者のハートを射止めてしまいそうなキュンとくるまぶしい笑顔。こんな笑顔をみせられるとさすがに可愛いとは思ってしまう。ただ俺はこの娘よりも歳上で、これから仕事の仲間にもなる。可愛いとばかり思ってはいられない。適切な対応をしていかないとな。

 

「今回担当させてもらえることになったので、要望あったらその都度教えてください。あたしもガンガン言うつもりなので」

「解りました。ハガサネ先生にお伝えすることがありましたら、そうさせてもらいます」

「あたしから早速要望があります」

 学校で挙手するみたいな感じで、絵麻が手をあげた。

「なんでしょうか」

「あたしのことを絵麻って呼んで欲しい。肩の力抜けれる関係の人とは、できるだけそうしたいんだよね。駄目かな?」

 これからの付き合いを考えていくと、ここはハガサネ先生……いや絵麻の意向に合わせたほうがいいかもしれない。変にかしこまってもこの娘場合はそれが良い方向に行くとは思えない。それなら自由にやらせてあげたほうが良さそうだ。

 

「絵麻、これでいいか?」

「OK、創磨」

 初対面にしては距離感が近すぎるようなきもするけど、絵麻に満足げなウィンクとOKサインをされたらすべて許せてしまえた。

「逢夢もあたしのこと絵麻って呼んでいいからね」

「絵麻」

「うわぁ、超かわいい!」

 恋人に名前を呼ばれたからのように絵麻は限界化していた。それほどに逢夢の名前呼びというのは破壊力がある。相手のことを大切に想っている、それが伝わってくるからだろう。俺もはじめて名前を呼ばれたときは嬉しかったしな。


「二人ともあたしの家に来てよ! 逢夢みながら描きたい!」

 正谷さんに了解をとるかのような視線を絵麻は送ると、

「どうですか、ソウマ先生」

 すかさず援護射撃を正谷さんはしていた。

「構いませんよ」

 ここまでお膳立てをされずとも断るつもりは最初からなかった。逢夢を参考に絵を描いてもらえるなら大歓迎だ。

「いったん店をでるか」

 この後どうするかも決まったところで喫茶店での会計を済ませ、退店した。


「後のことは三人で決めてくれ」

「ありがとうございました」

 正谷さんに感謝し頭をさげる。良い意見をたくさんもらえた。それを活かして投稿した時よりも魅力的な作品を創らないとな。

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