12話 創生、二つの奇跡 ①
変わりたい、今を変えることでしかなにも守れはしない。
「どうした、その程度か」
「まだいけます」
その決意の中でわたしは鍛錬を続けていた。
破壊力は恐ろしいものだ。今もこうしてわたし自身を支配しようとしている。それこそが創造の本質であるかのように心を荒ぶらせようとする。
負けるな、破壊力に負ければ誰も守れなくなる人はいなくなる。
ティアが用意した防衛システムはブレイク・リングを模倣したもの。破壊力こそ劣っているかもしれないが、動きは模倣されている。
リングのすべてが攻撃してくる、あの攻撃をすべて叩き落とす。それは今までのわたしの力ではできなかったこと。
「ではいくぞ」
「お願いします」
創造の輝きで創られたリングがすべてわたしに向かって襲いかかってくる。
四方八方から打たれる銃弾と違って、避ければ消えるというものでもない。再び旋回してこちらを狙ってくる。
防御だけしていても、攻めてにはならない。
ブレイドがいた時はブレイドが避けて近づいてくれたから、こちらが防御したうえで攻撃ができた。
あの時の闘い方は二対一だからこそできた戦法。
しかしブレイドがいない今、防戦一方というわけにはいかない。攻撃をされているときは反撃することも常に意識しなくてはならない。
近づいてくる創造のリングを、ブレイドがやったようにすべて撃ち落としていく。
もっと早く、もっと早く動けるようになるんだ。
「はぁあああああああ」
最後は装置が創り出した巨大な創造の盾を、破壊と創造の力で消滅させた。
「だいぶ動けるようになってきたな。休憩をとるか」
一度休憩をとるためにティアの所へと戻る。用意されているお茶を飲み椅子へと座った。
「まだまだ、ブレイドのようには動けませんね」
「ブレイドのようにか……破壊力を借りたことによってだいぶパワ-はあがってきておる。もう少し力を制御できたなら、自らの限界を超えた力も使いこなせであろうて」
目指すべき場所というのはだんだんとみえているだけでも、違ってきている。まずはこの力を使いこなせるよにしないと。
「変身システムの改良テストは上手くいってますか?」
「従来の方式はあまり成果はでておらぬ。それとは違う、新しい方式に取り組んでいる」
「新しい方式ですか」
「これは保険みたいなものだ、逢夢がきにせんでもよいぞ。ブレイドに対してはなにもしてやれなかった。そうならないためにも、使える手段はすべて使えるようにしておきたい。それが今の我にしてやれることのすべてだ」
ティアもティアなりに変わろうとしている。その力に少しでもなれたらいいのだろうけれど、どうにもできない事というのはある。今は信じて待つしかないですね。
「逢夢よ、体はいいとして心はどうだ。だいぶ心労もたまっていそうだが」
「大丈夫ですよ」
空元気に近い返答するも、
「まぁそういうでない。無理をさせてしまっておるからな。吐き出せるものは吐き出しておけ」
ティアはわたしに寄り添おうと、やさしさを見せてくれる。
ティアは強くなること以外にも、様々なサポートをするために親身になってくれている。そんな相手だから、ティアだから、話していいかもしれない。
「ブレイドが消えてしまってから、キャラクターが消えてしまうことについて考えることが増えました」
ブレイドの一見から考えていたことを語りだす。物語のキャラクターが消えてしまうこと、それはわたしもけして例外ではない。
「読者としてならキャラクターが消えてしまう、その悲しさや辛さを楽しさに変えてしまうことができる。フィクションだから、わたしもそうやって物語を楽しんでいます……でも当事者として関わっている今、消えてしまうことをどう受け止めていけばいいか解らなくて」
「キャラクターとして物語を楽しんで欲しいと想い、消えて欲しくなかったという想い、その二つが混在しているから矛盾を抱えているということか」
心の中に広がっていて、黒いわだかまりを吐き出す。
ティアは同じ物語のキャラクターの立場だから、消えてしまうことによりこの矛盾を受け止めてくれている。
「我らキャラクターは物語を楽しませるために、どんなことでも受け入れていく。それでもそこに悲しみがないわけではない、辛さがないわけではない。我らが悲しむから消えて欲しくなかったと思うから、読者もまた共感してくれるのだ。それはしていいことだ、そう思っても良いのだぞ」
してはいけないことではなく、してもいいこと。わたしはずっと狭い視野で物事をみていたのかもしれない。
「そう思ってみることにします」
話せておいて良かった、心の突っかかりがだいぶ消えてすっきりした。
「後、聞いておきたいことが――ベインについてです、ティアがここまで戦力の増強を急ぐのは……」
今までずっときにしていた、ベインについて聞こうとしたら、
「ああ~聞こえるか。潜伏先がおおよそしか特定できねぇから、一方的に伝えておく」
この周辺全体に精神波を送り届けることで、わたし達に語りかけてくる存在がいた。
「よう、ひさしぶりだなぁ……いや、ひさしぶりでもねえか。誰か解ってるんだろ、そう俺は破壊王ベインだ。ギリギリの所で俺は生き残ることができた。本当に紙一重だった。あることをしなきゃ生き残れなかっただろうよ」
声の主はベイン。やはり消えていなかった、わたしの読み当たってしまったみたいです。外れていて欲しかった。
「俺が生きている、それは闘いのはじまりを意味している。今すぐアウターワールドへ来い。創造主が待っている。早くこいよ、早くこねぇと一方的に消しちまうかもなぁ!」
ベインは伝えたいことだけを伝えると、精神波に干渉がなくなった。
「ベインは消えていなかったのですね」
「生きている可能性は限りなく0に近いはずだったのだがな。どうやって消えずに存在したのか、我にも解らぬ」
確証はなかったゆえに、ティアはベインのことは話せなかったのだろう。
もしベインが消えていない可能性があるとすれば、ブレイドのしたことは無駄だったということになってしまう。それではあまりにもつらすぎる。
「伝えたなかったのは確証がなかった。そして、創磨や絵麻の気持ちを考えてくださっていたからなのですよね」
「余計な心配はかけさせたくなかった。無論、貴様にも」
「ありがとうございます。おかげで雑念にとらわれず、強くなることができました。行きましょう、創磨が待っています」
闘いの続き、それはベインとの決戦を意味している。
成長したとっても、実力差はまだ埋まってはいないのだろう。
現実は苦しくて厳しくて辛いものだ。
それでもわたしはその現実から逃げはしない。守ります、創造を。




