11話 託されし使命 ⑦
「もう二時か」
「さすがにお腹空いたね」
「ちょうどカフェがみえてきたな。食事でも食べるか」
シンリンオオカミを見終わるった先にカフェがあったので、そこで食事を食べることにした。
カフェ内は混雑というほどではないが、注文するためには列を並ぶくらいには人はいる。
「コアラカレー二つと動物アイス、うさぎのストロベリーを一つお願いします」
少し列で待って注文、水を紙コップにそそいでから席に座ると番号札が呼ばれるのを待った。
「あいからわずのかわいさですな~」
番号を呼ばれうさぎアイスを手に戻ると、絵麻がスマホで写真を撮ってSNSにアップロードしている。
周囲に目をやると同じように写真を撮ってる人もいる。子連れのお客さんは落ち着かない子ども達の世話で大変そうだ。同じ年代くらいのカップル達はスプーンですくったアイスを食べさせあっている。あれが本当のいちゃいちゃか……どっちも笑顔で幸せそうだな。カップルぽいことができて特別な感情が芽生えているとでもいうのだろうか。
「ああいうのやってみたいの?」
絵麻に指摘されると、カップルからすぐに目をそらす。
「どんな気持ちなのか、観察しているだけさ」
「それも創作のためってことね」
「まぁな」
こういった場所だけではなく考えごとをしている時は常に創作に使えそうなことを考えていたりはする。この場所がどういった雰囲気な、どんなことを思っていそうなのか無意識に考えることはもう当たり前になっていた
「やってみないと解らないことってあるかもしれないよ」
好奇心からなのか、絵麻がアイスをすくったスプーンを口元に近づけてくる。興味がないかと言われるとそうでもないのだが、やはり絵麻がどう思うのかはきになる。
「好奇心だけでやるようなことじゃないきもするが」
「二人っきりでデートみたいなことしてるんだし、今更きにするようなことでもないきがするけど。それに花見でも似たようなことしたじゃん」
花見にいった時、絵麻にサンドイッチを食べさせた。その延長線と言われればそれまでだが状況が違う。
「みんなでやるのとは違うと思うが」
「それも試してみないと解らないって思うんだよね」
「絵麻がいいなら……って、こういう言い方はよくないな。俺がやりたいから、試しにやってみよう」
絵麻に全部押しつけるうような言い方は改め、自分もそのきだということをアピールはしておく。
「あ~ん」
改めて絵麻がスプーンを口元に近づけてきた。心臓の鼓動が早くなり、周りの視線はすごくきになる感じする。周りからみたらカップルだと思われるようなことはしている。そういった自覚がより強くなっているからだろう。
アイスを口の中に入れると、スプーンから口を離す。
まだ真夏とはいえないけど気温は充分に熱い。特に顔がすごい、甘さが口だけじゃなく全身に広がっていく。絵麻をみているとそれをより強く感じてしまう。
「どんな味」
「熱くて、冷たくて、甘いな、予想以上に」
甘い気分に浸るっていうのはこういう感覚なのか。これは体験してみないと解らないことなのかもしれない。
「絵麻も試してみるか」
俺だけやってもらう形になってしまったので、絵麻にも聞いてみる。嫌がったらそれはそれで問題ないって感じだ。
「やって欲しいかも」
嫌がる様子もないし、勢いに任せてみるか。変に意識するとやれなくなってしまう。
「あ~ん」
もうひとつ用意されたスプーンを手に取り、アイスをすくったスプーンを絵麻の口持ちに近づけた。
絵麻は俺の目を一度みてから、アイスを食べてくれた。
「うん……熱くて、冷たくて、甘いね」
(なんだよ、めちゃくちゃ可愛いな)
笑顔をみせてくれる絵麻が輝いてみえる。本能ってやつが絵麻を女性であることを意識させ、甘い雰囲気ってやつにのまれてしまいそうになる。
(ブレイドのことを考えろ。よくないよ、こいういうのは)
水を一気に飲んで頭を冷やし、
「水とってくるよ」
「うん」
その場を一度離れた。好奇心からしたことだとはいえ、いったいなにしてるんだろうな俺は。
「コアラカレーきたぁ!」
水を飲んで一息ついていると番号札の呼び出しがあり、コアラカレーを机に運ぶ。
耳と鼻がチキンんナゲット、目がグリンピース、ほっぺが丸いハムが白いライスの上にトッピングされたコアラの顔にみえるカレーライス。動物園らしい一品。
子供も食べられるように控えめな辛さで食べやすく、ランチタイムとして食べるならほどよい量。お腹も減っていたのですぐに完食をしてしまえた。
「ちょい写真みせて」
「いいぞ」
スマホをわたし、俺が園内で撮った写真を絵麻にみせた。
「ペンギンとトカゲ多いね」
「そんなことないきが」
「めちゃくちゃ連射してるよこのあたり」
「いいだろ別に」
「あたしのこともちゃんと撮ってくれてるよね」
「いいだろ別に」
「えへへへ」
なんだろな、どうにも絵麻のペースになっている感じがする。あまりこういったことが不慣れなせいかもしれないな。
「休憩もできたしいこうか」
「うん」
カフェを離れてすぐ近くに園内ショップがある。
「中みてこうぜ」
そのショップの中はお菓子、ぬいぐるみ、タオル、ポーチ等の定番のお土産が並んでいる。その中から買いたいものがあったのでそれを購入した。
ショップを出ると、再び園内にいる動物達をみていく。
「こっからめちゃ鳥ちゃんゾーンだよ」
「楽しそうだなぁ」
「トカゲちゃんゾーンではしゃいでるお子様よりかはましでだと思うけど」
「そんなはしゃいでないだろ」
「いや、はしゃいでたから。あ、ココちゃんだ、めちゃかわいい」
「でかい鳥もいいな、迫力あって」
「でしょ~」
みたいなやりとりをしつつ、タンチョウ、カワセミ、コンドルといった鳥たちをみながら進み、ゴリラやチンパンジーもみていく。
「これがコドモオオトカゲか」
「さっきのトカゲ達の比べたら、すごく大きいよね」
「だろ。うわ~もっと近くに寄って来てくれないかな」
その付近にあるコドモオオトカゲが見られる場所で、また子供のようにはしゃいでしまった。でもこんな姿を見せてもいいと思えるのは絵麻だからなのかもしれないな。
「もう戻ってきちゃったね」
「最後にショップの中だけでも見て帰るか」
きがつけばば園内を一周し終えて入り口の方まで戻ってきいたので、入り口の一番近いショップにはいった。そこにはたくさんの園内の中にある動物達にちなんだお土産が並んでいる。
お菓子やらお土産として渡せそうなものから、ぬいぐるみなんかの可愛らしい置物まで。人気のある動物達のグッズを中心に置かれていた。
「トカゲのグッズがあるぞ。これはコドモオオトカゲ効果だな」
「良かったね~あって。買ってくんでしょ」
「記念にな」
「あたしは適当にぶらつきながら待ってるね」
絵麻が俺の隣を離れてから、別の場所もいちよう見ておく。買っておきたいものもあった。
「お、あったあった。これも買っておかないとだな」
絵麻のためにもなにか買ってあげたい。今日見た動物の中でかなり思いれができた動物のグッズを手にとり、トカゲのグッズ合わせて購入をした。
「おまたせ。先にこれ渡しておくよ」
「え? なになに」
「絵麻にプレゼントしておきたいなと思ったものがあって。受け取って欲しい」
ショップでラッピングしてもらったお土産を絵麻に手渡すと。
「すごく嬉しい。なに入ってるんだろう?」
想定していなかったのか絵麻は目をキラキラ輝かせながら喜んでくれた。
「そこは開けてみてのお楽しみってことで」
「うん、そうするね」
忘れられない思い出をつくってくれたそのお礼。ブレイドのことを感じられるように、そんな想いが伝わればいいだけどな。




