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2話 あらたなる輝き、レイ・ブレイド ①

「ここが創磨の家なんですね」

 破魔との戦いを終え帰宅すると、逢夢はコートを俺に返しキッチンやお風呂など、部屋のいたる所を見ていく。嫁の家にあがる姑というよりかは、なんにでも興味を示す子供のようだ。

 

「そんな見るもんないと思うけど」

「この世界と創磨が創り出した世界、その違いを知りたくて」

「違いはありそうか?」

「今の所はあまり変わりがないように思えます」

 逢夢を活躍する物語は現実世界をベースに構築している。そのために違和感なくほとんどのものをみれているのだろう。

 

「逢夢の部屋はここで。生活していくには足りない物もあるだろうからその都度言ってくれれば買いにいくから」

 逢夢の部屋は本棚やグッズがやら置かれている現在倉庫になっている部屋にした。まだまだ買い足すかもしれないと広めの部屋を用意しているので狭過ぎはしないはずだ。

 押入れを開き、圧縮袋にいれてあった布団をとりだし中央の空いたスペースへと敷いた。


「すいません、部屋まで用意してもらえるだなんて」

「逢夢のせいじゃないからきにするな。そもそも衣食住がない状態でこの世界に来てるんだ。その中で俺だけが今は逢夢の助けになってやれる、だから遠慮なく頼ってくれ。ここを逢夢の家だと思ってくれればいい」

 逢夢のことは俺も考えていかないといけない。

 あの魔王ディアボロスや破壊王ベインがどうであれ、暮らすには家がいる。それはどこも変わらないことだろうしな。

 

「わたしずっと与えられてばかりますね。名前も、設定も、物語も、この世界に来られたのも創磨のおかげ。わたしもなにかお役に立ちたい、家事はわたしに全部任せてください」

「さすがに全部任せるわけには……手伝うってくらいな感じでいいよ。全部押しつけてる感じにならない方が俺も気が楽だ」

「料理、洗濯、掃除、どれが一番やって欲しいことでしょうか」

「その中だと料理かな。普段は時間をかけたくないから鍋や冷凍食品なんかの決まったものが多くて……他人に食べてもらう感じではない。申し訳ないと思うくらない逢夢に頼みたい」

 逢夢に満足いくような料理を作ることは難しい、それならば逢夢に頼んだ方がいいという判断だった。

 

「解りました。ではわたしが料理をつくりますね」

「食材は率先して買ってくるよ。すまないな、料理だって本当は頼ってもらえたら良かったんだけど」

「料理はお任せを。わたしも創磨に頼って欲しいと思っていますので」

 頼ってくれとか言っておいて、これだとかっこつかないな。もっと料理しとくべきだったか……いや、今からでもやってみるか。

 

「俺も少しは作れるようにする。逢夢に喜んでもらいたいし」

「創磨の手料理ですか、すごく楽しみです」

「俺も逢夢の手料理、すごく楽しみだよ」

 凝ったものでなくていいから、作れるようになりたい。逢夢がいるからそう思えていた。


「そろそろ部屋に戻るよ。執筆のことも考えて読み直したいしな」

「創磨、わたしも読んでみたいです。書き終えたものを読んだことがなくて」

「いいぞ! 俺の部屋でみようか」

 俺が創った物語を逢夢のが読むのが嬉しくて、顔をほころばせた。

 

「すごく嬉しそうですね」

「一番読んで欲しいと思っていた人に読んでもらえるんだ。そりゃあ嬉しいよ」

「もう……創磨はずるいです」

 死ぬほど可愛い逢夢の照れ顔を見て、俺までつられてにやけてしまいそうになる。

 逢夢の笑顔もずるい、ずるいな。

 

 逢夢を連れ、自室へと入る。

(俺が創造したキャラクターが俺の部屋に中にいるんだよな)

 自分の部屋に逢夢がいることで、変に意識をしてしまっている。逢夢が理想の姿をしてるっていうのもあるんだろう。

 棚の上に置いてあるタブレットを手に取りデスクトップパソコンと接続。クリエイト・レイターズのテキストデータをタブレット内にいれた。

 

「このアプリを起動して、このフォルダー入れたテキストデータを開けば読めるようになるな」

 そう言ってタブレット手渡そうとすると、それよりも早く逢夢がベットの上に座った。

「隣で一緒に読んでみたいです」

 あまりにも予想外のことで、一瞬思考がフリーズした。

「できないことはないけど、いいのか?」

「創磨だからいいんです」

「なら、失礼させてもらうよ」

 俺は逢夢の隣に座り、逢夢が見やすい位置でタブレットを持った。


(なんか無駄に緊張するな)

 逢夢の顔がこれまで以上に近くさらに緊張が増した。目元や肩にかかる髪の毛がはっきりとみえる。物語の中で描いているキャラクターとして身近に思っていたはずなのに、今は一人の女性として逢夢のことを捉えていた。

 

 逢夢の眼差しが俺に向けられ、顔を覗き込んでくる。やたらと唇が色ぽっくかんじた。

「創磨の部屋で、こんなにも創磨の近くにいられるなんて夢みたいです」

「夢だったのか、逢夢にとってこの状況は」

「遠くからずっとわたしは見ることしかできませんでした。だからこうしてあなたの側にいて、あなたが創り出した物語を読むことが夢のようです」

 逢夢の純粋さを見ていると、意識している俺が馬鹿らしくなってくる。今はこの状況を俺も素直に楽しもう。

 

「ならその夢を叶えてあげないとだな。音読でもしようか」

「あ、それならわたしが。物語に描かれた言葉をあなたに聞かせたいので:」

 タブレットに表示されたクリエイト・レイターズを逢夢が読み着かせはじめた。

 普段物語でどんな話ているか想像しながら、物語を書くことがたくさんあった。

 文字だったものは声となり、俺の中に響く。

(本当に夢のようだな)

 いつまでも逢夢の声を聞いていたくなる、この夢心地のような時間に浸る。

 

 逢夢との読書時間はあっとういうまに過ぎ去り、きずけば小説を読み終えていた。

「すごく面白かったです。創磨が創った世界でやってきたことは無駄ではなかった、そう思えます」

 タブレットを胸に押しつけて、とても満足げな表情をしている。逢夢にも楽しんでもらえたようだ。

「無駄ではなかったか。逢夢だからこその答えだなぁて感じたよ」

 逢夢は当事者でもあり、そんな解答の仕方が面白い。キャラクターとして活躍していなきゃでてこないような言葉をもっと聞いてみたい。


「少し質問いいか?」

「なんでしょうか」

「詳しく書いていない部分、たとえば日常生活でなにをしていたのか逢夢は覚えてるものなのだろうか?」

 色々と知りたくなるというのが作者の常。書かれていない部分をどのように解釈しているのか質問をしてみる。読者視点からすれば普段の日常を書きすぎても退屈するし、膨大な文章量になってしまう。そのためにも省くものなのだが物語の登場人物にとっては必要不可欠なもの。それがどうなっているのかがきになった。

 

「ぼんやりとしたものでしかないため内容は覚えていませんが、家族や友達と会話した記憶はありますね。夢の中であったとしてあの場所でもわたしは生きている、そんな風に思えるくらいには創磨の物語の中でわたしは生きています」

 逢夢は夢であったとしてもその中に生きている実感があったのか。俺がクリエイトワールドにいた感覚と似てるのかな。あれは夢だという認識だったけど生きている感覚もあったしな。


「記憶という点でしたら、鮮明に覚えていたはずのものが消えたと思ったら、新しい記憶に変化していたり、そちらのほうが印象に残ってますね」

「書き直してるのバレバレなんだ。それって逢夢的にはどうなんだ?」

「書き直すのはもっと面白いものをつくりたい、わたしを輝かせたいと思ってくださっているからこそ。だから嫌ではありません。むしろ良いことだと感じているくらいです。新しい記憶は以前のものよりも納得できたり、すごく熱くなれるものばかりでしたから」

 書き直していることは逢夢も良いことだと思ってくれてるのか。

「編集者の方と話したら、また色々大幅に変わるかもしれないけどその時はよろしく頼む」

「はい、楽しみに待っていますね」

 夢の中で逢夢と話すのが楽しかったように、この世界で話すのもすごく楽しい。

 逢夢が創造であるからこそきずける世界、それをこれからはもっときずかせてもらえるんだろうな。


「この棚にある本は創磨が気に入っている本なのでしょうか」

 逢夢は部屋の中にある本棚に視線を向けている。まだまだたくさん本を読みたいと思ってくれているようだ。

「資料で置いてある本もあるけど、だいたいそんな感じかな」

「やはりそうでしたか。テラステラがあったのでそうだと思っていたんですよ」

「興味があるなら読んでみるか、てか読んで欲しい」

「いいんですか! ぜひ読んでみたいです」

 今まで夢の中では読んで欲しくても読んでもらえなかった本をバックに入れて、逢夢に渡した。


「ナイツ・オブ・リバイブ、天上先生の作品を読むのははじめてなので楽しみです。とても有名な作家だそうで」

「そのあたりの知識もあるんだ」

「なんとなくという程度です。そろそろ戻ります。部屋の中にあった本も読んでもろしいでしょうか」

「構わないよ。好きに読んで欲しい。その端末にも電子書籍がはいってるから借りたままでいいから。後、財布もわたしておくよ。買いたいものがあったら買ってくれていいから」

 電子書籍とお金が入った財布も逢夢に手渡しておく。これでこの世界でもたくさんの作品も読んでもらえるようになるのか。感想とか言いあえたら楽しいだろうな。


「創磨はこれからまた執筆をされるのですよね」

「そのつもりでいるけど」

「少しの間、その姿を見させていただけませんか」

「いいよ」

「ありがとうございます」

 逢夢が見ている中、俺はパソコンの前へ座り執筆をはじめていく。

 キーボードが叩く音、それはいつもと変わらないはずなのに逢夢が隣に立っている。

(いいな、こういうのも)

 いつもと変わらない日常に逢夢がいること、その変化を嬉しく思った。


「では、そろそろわたしは……」

 逢夢が部屋の扉からでようとすると、俺のほうへ振り返る。

「あなたの家で過ごせることが夢でした。これからの新生活もっと幸せをお互いに感じあいましょうね」

 頬を赤く染めながら笑顔を向け、逢夢は扉を開けて部屋の外へと出た。


 ニヤけたくなるというのは、こういう時にある言葉なのだろうか。

「さて、やることやっていくか」

 ニヤけた顔になるのを抑えつつ、椅子に座り直して執筆作業を進めていく。

 もっと面白い物語にしたい、読者にも逢夢に喜んでもらいたい。

 逢夢との出逢いで俺のモチベはあがっている。

 これからの逢夢との新生活が楽しみだ。

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