這いずる。
ーーえ?アルベール?
もちろんよく知ってるさ。
エバースは若いモンが少ないからさ、同年代はみんな幼馴染なんだ。
そうだなあ…アルベールはその中でも昔から特別だったな。
いま思えば勇者の素質っつーの?
そういうモンが子供の時から光り輝いてたね。
剣の型は一度見れば覚えちまうし、スピードも力も頭2つ3つ…もっともっと抜きん出てた。
そのうえバケモノみてえな体力の持ち主ときたもんだ。
俺はさ、アイツが負けてるとこなんざ見たことないね。
それどころか、この村の人間じゃあ相手にすらならなかった。
都から来た騎士様がまだ子供だったアルベールに負けたこともあるんだぜ。
すごいだろ?
アイツもう人間じゃねえよ。
ま、ちょいとばかし単純なのが玉に瑕だけどな。
そんなことは問題にならねえくらい強かったなあ……
ーーえ?ルルカ?
アイツはいつもアルベールに引っ付いてたけど…まあ、おとなしい奴だったよ。
手芸屋で働いてるらしいからその辺に…っと、そうだそうだ、都に引っ越したらしいな、アイツ。
目立たないからすっかり忘れてたぜ。
……とまあ、とにかくだ!
そんなアルベールの好物がこの『勇者パン』ってワケだ。
勇者様はたっぷりの木苺ジャムとバターをはさんだこのパンに目がなかったんだ。
1つ…2つ…も1つオマケして3つ!
どうだいお姉さん、出来立ての『勇者パン』買っていってくれよ!
+++++++
あー……アルベールね……
なあに?アナタ、勇者サマのファンなワケ?
アタシいま忙しいのよ。
早く買い出しから帰らないとお姑さんがうるさくって……
え?お礼?
やだあ、悪いわねえ。
ま、ちょっとなら時間とれなくもないけど?
ーーで、アルベールのことね。
そうね…アタシは歳が少し上だからそれほど仲良かったワケじゃないのよ。
ルルカだっけ?あの地味な子……アルベールと付き合ってるらしいから、あの子に聞いたほうがいいと思うけど……
アタシはね、どっちかって言えばギルバートの方を可愛がってたの。
だってギルは賢くて顔も良くて優しいんだもん。
村の女の子たちはみーんなギルのファンなのよ。
あー…そうそう、アルベールの話ね。
ん〜……あ、そういえば北の森にある見張り台が襲撃された時、まだ12歳だったアルベールが魔族をやっつけちゃったことがあったのよ。
真夜中に見張り台の鐘の音が村まで届いてね…その日の見張り当番が父だったから、アタシもう心配で心配で……
アルベールはすごい気迫であっという間に魔族を倒しちゃったって。
気味が悪いくらい強かったって。
お父さん、言ってたわ。
だからすっごく感謝してる。
今だって、世界平和のために戦ってるんでしょ?
あー、魔族なんて早く倒してくれないかしら?
アタシ、魔境の向こう側にあるシーリンカって国に旅行に行ってみたいんだよねえ。
+++++++
アルベール?
確かにアレは私の子だけど。
ああもう!
なんだい?アンタ、息子のファンなのかい?
え?村長に頼まれて役場で仕事をしてる?
村長がどうとかそんなことどーでもいいよ。
村長なんかより母親の方が偉いだろ?
なんてったって、勇者を産んだのは私なんだからさ。
私はそろそろ出かけなきゃなんないんだよ。
今夜は新しく知り合った男が都の芝居に連れてってくれるんだ。
つまらないこと話してる時間なんてないんだよ。
さあさあ、さっさと帰っておくれ!
+++++++
やあ、おかえりなさい。
村の観光は楽しかったですか?
その手に持っているのは……ああ、勇者パンですか。
あまり美味しくないですよ、それ。
ーーところで、今日は村の至る所でアルベールとルルカの情報を収集していたようですね。
村人たちが教えてくれましたよ。
ルルカのことはともかく、アルベールのことなんて『文字』に関係してくるとは思えませんが……
まったく貴女は仕事熱心だなあ。
アルベールのことなら僕に聞いてくれれば良かったのに。
僕とアルベールは唯一無二の親友なんですから。
ああ、またその顔……
気づいてますか?
貴女は何かを誤魔化そうとする時、そうやって目を見開いて愛想笑いをする。
今の貴女は、何を誤魔化そうとしているんです?
誤魔化さなくてはいけないようなことを貴女はしているんですか?
それとも、これからするのでしょうか?
いいんですか?
貴女はまだ24歳でしょう?
病気のお母さんを支えないといけないのでしょう?
自分の身を大切にした方がいいのでは?
一度知ってしまった秘密はね、無かったことにはできないんです。
そう、永遠の眠りにでもつかない限りは………
読んでくださってありがとうございます!!!
話が暗いのでっ!!!!
閲覧のお礼くらいは元気に明るく伝えたいと思ってます!!!!!!!