五百円で得た情報
へへへ。へへへへ。
笑いが止まらないっていうのは、こういうことだねぇ。へへへへへ……。
いいなぁ。僕はこの世界に来て幸せだ。ありがとう。僕の小銭無双!
ドンと二十万を寄付した僕は、いっきに称号が十も増えて、ランクもCになった。あとは仕事系と戦闘系の称号を増やして、買い物もたくさんしてポイントためて、救助で貢献度をあげていけば、ランクBにはすぐなれるって話だ。
ちなみにランクDに上がると、買い物はボイクド国内にいるかぎり、加盟店のどこで買っても3%オフ。ランクCなら5%オフだ。イオンの感謝デー並みのサービスを受けれる。ふふふ。
ランクBなら10%オフらしいので、早くBになりたいもんだ。消費税を免除されてる気分になれる。
5%オフになったところで、雑貨屋に行って、薬草や、もっといい薬草を買いまくった。
経験値稼ぎのために魔物を呼びよせる、魔物の草笛も買った。草笛なんで、一回ずつの消耗品。
あと、最後にお祈りした街や村に一瞬で帰れる“旅人のお守り”や、ダンジョンの途中から地上に脱出できる“旅人のドアノブ”は大量に買った。旅人のお守りは僕には必要ないけど、あとでみんなにくばっておこう。
それでも一万円ほどにしかならなかったが。
じゃあ、お待たせの情報屋だ。
怪しいキャラバンについて何か聞けるかもしれない。
情報屋は二階のかたすみにあった。
ちょっと見すごしてしまいそうな廊下のつきあたりだ。
たぶん、ヒゲだらけの冴えない感じのおじさんが受付なんだろうなと思ってたのに、そこに座っていたのは、いかした冒険者風のお姉さんだった。カウガールっぽいウエスタンスタイルで、鞭をぶらさげた赤毛の美人だ。
「は、初めまして。情報が欲しいんですが」
「情報レベルは?」
「えーと……初めてなんで、よくわからないんですが」
「情報の機密度によって値段が違うんだよ。冒険者ランクによっても聞ける話は違うけどね。とりあえず、何について聞きたいか言ってみな」
うーん。男口調のカッコイイお姉さんだ。
「じゃあ、最近、あちこちで街や村を襲ってる怪しいキャラバンについてです。今、この街の近くにいるはずなんですよ」
お姉さんはしばらく考えこんだ。
「じゃあ、情報料に二百円払いな」
はいはい。払いますよぉ。二百円なんて、チョロいんだもんねぇ〜。
*
「あのキャラバンは勇者狩りの前後に街に現れる。どうやら勇者狩りをしているのは、やつらのようだ」
僕はハッとした。
ある意味、ビックリした。
「えっ? 今さら、そんな情報?」
お姉さんはムッとしたようだ。
「じゃあ、どんな情報ならいいの?」
「今どこにいるかが知りたいんだよ。やつらはここへ来る途中、コビット族の村を襲って、村長の娘をさらったんだ。人間に見世物にしてやると言ってたから、街か村にいるはずだ。それで、通り道で一番近いのがこの街。ついでに言えば、コビット村を襲ったのは、魔物のくせに人間と戦わないからだって。やつらの正体は魔物だったって、コビットの証言がある」
お姉さんはすばやく、それらを手帳にメモした。おいおい。
「貴重な情報、ありがとう。ギルド貢献ポイント100と、“情報通”の称号をあげる」
「あ、ありがとう……」
ポイントだけたまってもなぁ。
情報が欲しいんだけど。
「じゃあ、お姉さんはキャラバンがどこにいるか知らないの?」
「ルベッカよ。あたしの名前はルベッカ」
「ルベッカさんは知らないの?」
お姉さんは鼻で笑った。
「待ちな。坊や」
ああっ。こういうお姉さんに坊やと呼ばれるの、決して嫌いじゃない!
「情報屋をなめないでくれる? 五百円出せば、もっといい情報をあげるよ」
「はい。五百円」
「じつは昨日の昼ごろ、この街に旅のサーカスがやってきたんだ。馬車三台のサーカスで、ピエロと動物と、調教されたモンスターがいた。ウワサに聞く怪しいキャラバンの特徴に似てるんだよ」
「そ、それだ! そいつらに間違いないよ」
「そうだろ?」
「そいつら、今、どこに?」
お姉さんはカウンターの向こうから片手を伸ばしてきた。追加料金を払えというのか。いいだろう。僕は五百円玉を出して、お姉さんの手ににぎらせた。
ルベッカさんはニヤリと笑う。
うーん。カッコイイ。
清楚系美少女もいいけど、アダルトなお姉さんとの旅も楽しそうだなぁ。
ルベッカさんは仲間にはならないのかな?
「東の森のなかに夜営してるようだ。あそこに行けば会えるんじゃない?」
「ありがとうございます!」
「なーに。どうってことないよ。情報屋を見くびってもらっちゃ困る」
「ですね!」
「そうそう。あんたには特別にイロつけてやろう。となりの仕事斡旋所に行ってみな。キャラバン関係の依頼がいくつか来てる。対決するんなら、受けられそうな依頼、受けてから行きなよ。依頼主の話聞くと、また別の情報も手に入るしね」
「なるほど」
僕らはさっそく、となりの部屋へ——行こうとしたんだけど、ふと好奇心がわいた。
「あの、今一番高額な情報っていくらですか?」
「五万ってのがある。でも、これはトリプルAランクにならないと教えられない」
「ああ、そっか。じゃあ、ランクCで教えてもらえる最高額は?」
「二千円」
「はい。二千円」
「…………」
つかのま、お姉さんは千円玉二枚を見つめた。
「いいよ。教えてやろう。裏切りのユダを知ってるかい?」
「魔王の四天王の一人でしょ?」
「そう。そいつの姿を見たって男がいるんだ。シルキー城の兵士だったらしい。シルキー城を襲ったのは、ユダの手先のようだね」
鬼教官トーマスだ!
あとで絶対、お見舞いに行かなくちゃ。




