銀行からのプレゼント
僕はそこで、ふと気がついた。
さっき、受付のお姉さんが、冒険者ランクを上げると、お店で安く買い物できるって言ってたよな?
それで、ランクを上げるためには、救助をしたりギルドに寄付するといいって。
もしかして、僕、今すぐランク上げられるんじゃないか?
でも、まずは貯金だ。
銀行の貯金が百万を超えると何か貰えたはず。それに、貯金の額が多いほど、小銭拾いの金額も上がる。まずは僕自身のベースを底上げしといたほうが、のちのちお金集めが楽になる。寄付はそのあとだ。
僕は銀行へ急いだ。
銀行は地下にあった。金庫室に直結してるようだ。
「お金、預けに来ました!」
「はいはい。かーくんさんですね。いくらお預けになりますか?」
「百万!」
「百万……ですか?」
あっ、インテリそうなメガネかけたおじさんが、不信の目で僕を見ている。
「うん。百万」
僕はミャーコポシェットから財布をとりだし、カウンターの上にザラザラと金貨を山積みにする。
ああ、気持ちいい。
おじさんのビックリ目が心地よい。ふふふ。
「——九十八、九十九、じゃあ、これで百万ね」
「た、たしかに承りました。少々、お待ちくださいね」
おじさんは金貨をお盆に載せて金庫室に運んでいく。金庫番の立つ金庫の扉の前に機械があって、それでお金を読みとった。たぶん、贋金とか調べたり、金額に間違いがないか確認するためだろう。
数えおわると、帳簿係が記録して、僕のお金たちは金庫室のなかへつれられていった。
バイバイ。元気でね。お金ちゃん。
貯金されても、いつでも僕とつながってるからね。
やがて、インテリ風受付のおじさんが帰ってきた。
「お待たせいたしました。現在、かーくんさんからは百七十五万円お預かりしています。かーくんさんの貯金が百万円に達しました。妖精の羽衣をさしあげます」
「はい。ありがとう」
「かーくんさんの貯金が百五十万円に達しました。妖精のネイルをさしあげます」
「はい。ありがとう」
「次は二百五十万円に達したときに、オリハルコンのよろいをさしあげます。お楽しみに」
「はい。楽しみです」
ヤッター!
今回も二つも粗品を貰ってしまった。
*
銀行から貰った二つの粗品。
前回もそうとうにいいものだったから、今回も期待してしまう。
妖精の羽衣は、背中に透明な蝶の羽のような飾りのついた、キラキラしたキレイな布地でできたワンピースだ。ワンピースというか、ローブの一種なんだろうけど、見ためからしてそうかなと思ったら、やっぱり女の子専用装備だった。なんで僕に装備できないものをくれるかなぁ。
守備力65。炎属性、氷属性のダメージを25%軽減。魔法ダメージ30軽減。
うーん。今、着れるとそうとうに頼もしい防具なんだけど。魔法ダメージ30軽減ってことは、30以下のダメージなら実質ノーダメージってことだ。
ま、いいや。これはアレだ。
スズランちゃんにプレゼントしよう。
「あら、ありがとう。かーくんさん。かーくんさんって優しい上に気前もいいのね」なんて言ってくれるかもしれない。もしかしたら、ほっぺチューくらいは……あっ、ダメダメ。期待しない。
ちなみにモンスターには着れないんだろうか?
ぽよちゃんは……着れないみたいだ。
そうか。ぽよちゃんは男の子なのか。知らなかった。
あ、あれ?
たまりんが……着れる。
たまりん、女の子だったのか……し、知らなかった。
たまりんの魔法ダメージが30減るって、それはもうクリティカル攻撃以外で、たまりんが倒されることはなくなるってことじゃないか?
ど、どうしよう。
これはスズランさんに……でも、でも、たまりんが物欲しそうに、じっとこっちを見てる。たまりんも女の子だから、きっと可愛い服が着たいんだ。今、ヨダレかけだもんな。
うっ、うう……。
「た、たまりん」
ゆらり。
「この羽衣、着たい?」
ゆらゆら、ゆら〜り。
「うん……そうだよね。着たいよね。じゃあ、これは、たまりんが着ていいよ」
ゆらゆら〜
ヒュードロ!
ああ……さよなら。スズランさんのほっぺチュー……。