まだまだ友達にボラれる僕
クマりんのコーディネートは完璧になった。
ぽよちゃんも完璧だ。幼稚園児みたいだけど完璧だ。
そのまわりを意味もなく、たまりんがふよふよしている。
もしかして……自分も欲しいんだろうか?
これまで、たまりんは火の玉だし、何かが着れると考えたことすらなかったけど、もしかして着れるのか?
試しにモニターを見てみると……あれ? 着れるぞ。青銅のよろいはムリだけど、前にぽよちゃんが着てた手編みのケープは着れる。軽装備なら可能ってことか。
もしかして……?
「あっ、やっぱり。クマのヨダレかけ、装備できるんだね」
「ヨダレかけは体形に関係あらへんさかいな」
「防御力……それでも40か。ただのヨダレかけなのに。銀の胸あてが45なんだよ? ヨダレかけが40。銀の胸あて作った職人さんが泣くよ?」
「愛情こもっとるさかいなぁ」
うーん。三村くんって天才なのかもしれない。いや、現実でもプロレベルにフィギュア製作うまいけどさ。
「人形師って得意技なんだよね?」
「せや。一段階が人形作り。二段階で人形の服作り。三段階はまだ到達してへんけどな。おれが作る服には心がこもるんや」
「その得意技もいいね。けっこう使える」
たまりんはヨダレかけと赤いリボンが装備可能だった。物理攻撃無効を持ってるとは言え、魔法攻撃やクリティカルから身を守るためには、防御力をあげとかないと。
「じゃ、ヨダレかけと赤いリボンください」
「まいどあり。三千五百円やで」
「まけてくれないんだ」
「しゃあないなぁ。まけへんけど、オマケにコレつけたるわぁ」
黄色にピンクのラインの入ったサポーターをくれた。防御力は5だけど、付加価値がスゴイ。攻撃力、クリティカル率プラス5%ってある。
装飾品なんで僕にもつけられそうだけど、もしかしなくても、ぽよちゃんに装備可能だった。ぽよちゃんの前足に履かせてあげることにする。ちゃんと足の裏は出るから走るのにジャマにはならないぞっと。
みんな、可愛くなったよ。
クマのアップリケのついたヨダレかけと赤いリボンをつけた火の玉が可愛いとしたらだけど。まあ、夜中に出会って、思わず「人魂だー!」と叫ぶことはなくなった。
ついでに僕も、ぽよちゃんの装備してた銀の胸あてに着替えたから、防御力が30近くも上がった。
それにしても、ものの三十分で総額二万二千五百円をしぼりとられたのだった。
フェニックス行軍で拾った小銭ぶんくらいだね。
三村くん、そこんとこ計算して作ってるんじゃないかなぁ?
*
仲間モンスターたちが劇的に可愛くなったころ。
ようやく、スズランの旅支度が整った。ひざ丈のローブみたいなものの上に銀の胸あてをまとっている。そして、背中に大きな弓と革の矢筒を背負っていた。彼女、弓使いかぁ。エルフっぽくてカッコイイなぁ。
足元は革の編みあげサンダルだ。
肩からななめがけの革のバッグがスズランさんのマイバッグなんだろうな。
銀のひたい飾りが巫女らしくていいね。
あれ? でも、まだ、スズランのステータス見れないや。NPCなのか。
「わたしの得意技は転職の祈りです。どなたか旅の途中で転職したくなったら、いつでも言ってください。転職しても、それまでにその職業でたまったポイントはリセットされませんから、安心していろんな職業にチャレンジしてくださいね」
歩くマーダー神殿づれの旅!
「まあ、スズランに戦わせることなんてないよ。馬車でクマりんやぽよちゃんと遊んでればいい」
蘭さんは請け負った。
そうだよね。
じっさいには僕や三村くんより、ぽよちゃんやクマりんの装備品のほうが優れてるけど、女の子や可愛い系モンスターに戦わせるより、そのほうがいい。ケガは魔法であとかたもなく治せるけど、痛いもんは痛いし。
というわけで、馬車の外には男四人。でも、これからは馬車をふりかえるたびに、可愛いクマや可愛いウサギとたわむれる美少女が見れるんだ。そこ大事!
安藤くんの装備は何やら暗殺部隊の特注品のようで、黒い革製品の服のような、よろいのようなものだ。初期に買える皮のよろいとはまったく違うもので、防御力も35と、この段階ではけっこう高い。軽く素早く動くことができるように開発されたもののようだ。
なので、アンドーくんにはお金をかけずに、そのまま出発することに。
「お師匠さま。必ず戻ってまいります。それまで神殿をお願いいたします」
「任せなさい。なんの心配もいらんよ。そなたも道中、気をつけるのじゃぞ」
「はい。行ってまいります」
マリーさんや神殿の神官さんたちに見送られて、僕らは旅立つ。
やっと……やっと当初の目的のボイクド国へ。
へへへ。強くなった僕らを見て、ワレスさんも少しは見なおしてくれるかな?