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東堂兄弟の冒険録〜悪のヤドリギ編〜  作者: 涼森巳王(東堂薫)
第三部 サンディアナの攻防 七章 怪しいキャラバン
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出立のとき



 たまりんは、そういえば、レベル1のときに、すでにMPが10あった。きっと魔法使いむきなんだ。オール1と2の成績のなかでは、知力だけ唯一3だったし。


 たまりんは今、レベル8になっていた。

 HP25、MP40、力5、体力5、知力30、素早さ5、器用さ10、幸運1。

 かたよってるなぁ。

 やっぱりMPと知力だけが高い。

 典型的な魔法使いタイプ。

 しかも、幸運がまったく成長してない。極端に運が悪いキャラだ。まあ、死んでるからな。それが死亡の原因かも……。


 マジック

 冷たくなれ〜(°▽°)

 呪ってやる〜(๑꒪ㅁ꒪๑)


 呪ってやる〜の顔文字が怖いんだけど。白目むいてるし、よく見たら、ほっぺのマークが呪いの“の”だ。恐ろしや。


 得意技は以前と同じだ。


「これで今度こそ全員ですね」と、スズランさんが笑った。

 ああっ、美少女の笑顔!


 微笑みかえした蘭さんのそれは、少しさみしげ。


「じゃあ、僕らは出発するよ。スズラン。元気で」


 ああ、そうか。お別れだからか。

 出立のときはスズランさんとの別離を意味している。


 スズランは何か言いたそうに蘭さんを見つめる。

 よく似た顔の美男美女が、じっと見つめあうのって、なんだか妖しいふんいきだなぁ。


「スズラン……」

「お兄さま……」

「元気でね」

「はい。お兄さまも……」


 あきらかに別れが悲しそうだ。

 スズランちゃんもいっしょに来ればいいのに。


 すると、そこへ師匠のマリーさんがやってきた。


「スズラン。ほんとはおまえも旅に出たいんじゃろ? 行きなさい。行って、その目で広い世界を見てきなさい」

「でも、お師匠さま」

「ほれ、このとおりじゃ。ババがすっかり元気になったでの。祈りの仕事はわしがやるわい。そなたは行くがよい。きっと、そなたのために良き経験となるじゃろう」

「あ……ありがとうございます! お師匠さま!」


 ほんとに、ありがとうございます!

 お師匠さま!

 僕も弟子入りしちゃおうかな。



 *



 僕らだけなら、すぐにでも出発できたんだけど、スズランは女の子だし、いろいろ支度がある。

 僕らはその準備が整うまで、神殿のなかを歩きまわった。


 神殿に到着したときとは、そこに集まる人たちの情報が違っていた。

 宿には年老いた夫婦が泊まっていた。


「わしら、北のウールリカから逃げてきたんじゃ。あの国はもうダメじゃー。魔物にやられてしもうた。やつらは街を襲って、若い者たちをみんな、つれていってしもうたんじゃ」

「勇者狩りですね。でも、勇者じゃなくてもつれていって、どこかに集めてるってウワサですよ。やつらはキャラバンに化けてやってきました。見かけたら近づかないように気をつけてください」


 怪しいキャラバンの話は前にほかの旅人もしてたね。


 また別の旅人は、

「知ってますか?」


 どうでもいいけど、なんで、みんな『知ってますか?』って言うんだろ?


「義のホウレンが昔、武闘大会に出たことがあったらしいんですよ。優勝商品が欲しかったんですかねぇ?」


 義のホウレンって、魔王の四天王の一人か。まあ、デマだろう。魔物が人間の大会に出るはずがない。


 こんな人もいた。

「この世には三人の巫女がいるそうですよ。祈りの巫女。予言の巫女。夢の巫女だそうです」


 ふうん。スズランちゃんが祈りの巫女だよね?

 ほかにも二人、巫女姫がいるのか。いいなぁ。会ってみたいなぁ。みんな可愛いのかなぁ?


 一番、大変なことを言ったのは、この人。

「ミルキー城の近くで、こんなものを拾ったんだ。なんだか怪しいことが書いてあるけど、どうしたらいいんだか」


 そう言って、牛乳ビンみたいなガラスの容器に入った紙きれを渡してくる。コルク栓をぬいて紙をひろげる。そこには、血文字のような赤黒い字がのたくっていた。



『正気を保てる時間が日に日に短くなる。心のなかに別の誰かが……私はあやつられている。助けてくれ。ブラン』



 えっ? ブラン? ブラン王のことじゃないよね?

 蘭さんの顔がいっきに心配そうに。

 やっぱり仲は悪くても実のお兄さんだもんな。


「この手紙、僕にください」

「ああ、いいよ」


 蘭さんは手紙をにぎりしめる。

「アンドーはヤドリギのカケラにあやつられていた。もしかして、兄上も……」


 ミルキー城は四天王の一人にのっとられているのかもしれない。

 でも、今の僕らに、ちょくせつミルキー城を救いに行くことはできない。そこまで強くない。

 僕らにできるのは、一刻も早くボイクド国へ行って、この事実をワレスさんに伝えることだ。

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