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東堂兄弟の冒険録〜悪のヤドリギ編〜  作者: 涼森巳王(東堂薫)
第三部 サンディアナの攻防 七章 怪しいキャラバン
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やっと職につけますね



 山頂の泉で一休みしたあと、僕らはマーダー神殿へと帰ってきた。


「お兄さま。お帰りなさい。ご無事で何よりです」


 ああっ。いいなぁ。美少女のお出迎えだ〜。いや、迎えてるのは僕じゃないけど、いいんだ。あの笑顔が見れるだけで。かーくん、悟ってるんだもんね。高望みしたってムダってことをね。ふっ……。


「ただいま。待たせたね。スズラン」

「……それで、フェニックスの羽は?」


 蘭さんは麗しく微笑み、馬車のなかから、すごく大きなうぶ毛をとりだした。フェニックスのお母さんが自分の胸からむしってくれたやつだ。本体が巨大なんで、羽一枚でも一メートル近くある。尾羽とかなら、ゆうに十メートルかな?


「これが……フェニックスの羽。見ているだけで力が湧いてくるような神秘的な羽ですね」

「フェニックスはたぶん神界の鳥なんだと思う。でも、もうあの場所には来なくなった。人間の前から姿を消すんだそうだよ」

「そうですか。しかたありません。でも、この羽があれば、マリーさまのご病気はよくなりますね」

「全身をこの羽でなでればいいんだそうだ。一回しか使えないというから、慎重に」

「はい!」


 僕らはバタバタと神殿にかけこんで、マリーさまの寝室へむかった。

 マリーさまは今にも息をひきとりそうな様相で、顔は土気色になりつつある。


「スズランさま。マリーさまはご危篤きとくです!」

「もはや、なすすべありません……」

「我々の力がおよばず、申しわけありません」


 神官や神父や医者が青い顔で告げる。

 だが、蘭さんはうろたえない。


「さあ、スズラン。今こそ、フェニックスの羽の奇跡を」

「はい。お兄さま」


 いいなぁ。

 あんな美人にお兄さまと呼ばれたい……。


 いやいや、そんな場合じゃなかった。

 やっぱり女の子がいると、どうも浮ついてしまうね。


 スズランさんの清らかな手ににぎられたフェニックスの羽が、さあっ、さあっとマリーさんの体をなでる。頭のてっぺんからつまさきまでだ。


 す、すると、とつぜん、さっきまで虫の息だった老婆が、「カアッ」と気合の入ったかけ声とともに起きあがった。

 いや、その姿はもはや老婆ではない。どう見ても十年どころか三十年は寿命がのびたんじゃないのか? かなり若返ったぞ。もともと年より若く見える人なのかもしれないけど、年齢不詳の美魔女だ。


「なんじゃ、どうした? 力がみなぎってくるぞい。このとおり、ピンピンじゃあー!」


 ああ……口調は老人のままなんだな。

 まあ、このギャップが個性だ。


 よかった。まにあったよ。僕ら。

 これでやっと無職から卒業だー! わ〜い!

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