表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
東堂兄弟の冒険録〜悪のヤドリギ編〜  作者: 涼森巳王(東堂薫)
一章 異世界転移しちゃった
8/377

これは小銭か?



 僕らはダンジョンを進んでいった。

 その後もスライムとの戦闘を順調に重ね、レベルも3になった。

 いいなぁ。回復役がいてくれるから、MPの心配なく、楽にレベル上げできる。


 たぶん、蘭さんは今のところイベント要員っていうか、仲間になるタイプのNPCだ。今のうちにガッツリレベルをあげさせてもらおう。

 じゃないと、そのうち一人で荒野に放置されてしまう。


 そもそも、ゲームって最初は一人で街の外をウロついて、ちょっとずつ強くなっていくものなのに、なんか妙にハイペースで難なく進む。

 夢だからかなぁ?

 ゲームバランス、大丈夫なんだろうか?

 心配になってくる。


 なるべく同じ場所を行ったり来たりしながら、くまなくダンジョンを歩きまわっていたときだ。


 僕は吸いよせられるように足元を見た。

 これは……この感覚は現実でも覚えがあるぞ。僕こそは小銭の声が聞こえる男。一円や五円や十円たちが、「かーくん。ここにいるよ。ひろってよぉ」と声をかけてくるのだ。

 いや、ほんと。たぶん、シックスセンスっぽい何かなのだと思う。

 決して妄想症のヤバイやつではない。


 誘われるままに視線を流すと、やっぱり! お金だぁ〜

 この小銭を拾うときの快感が、はたして万人に理解してもらえるだろうか?

 小銭が嬉しいんじゃない。

 小銭を拾うという、ちょっとラッキーなハプニングじたいが嬉しいのだ。

 小さな幸運を集めてるような感じ。


 さて、今日の小銭ちゃんは十円かなぁ? それとも五円? 黄色っぽいから一円、五十円、百円、五百円ではない。穴もあいてないし、十円か。


 なにげなく拾いあげた僕は、一瞬、目の前がグラグラするような感覚を味わった。



 *


 小銭を拾った瞬間、僕の意識は遠くなった。

 なんだか、夢のなかで夢を見ているような。


 グルグルまわる視界のなかで、これによく似たことが、つい最近あったような気がした。

 このゲームのような夢の世界のことではない。現実世界でだ。

 そのとき、僕はちょっと変わったコインのようなものを拾った……ような気がする。

 なんか、すごくキラキラ光る、キレイな星みたいな……。


 気がつくと、蘭さんが心配そうな顔で僕をのぞきこんでいた。

 僕はちょっとのあいだ、気を失っていたらしい。


「大丈夫ですか?」

「う、うん。なんか、このコインを拾ったとき、急に、ふわぁっとなったんだけど」


 蘭さんは僕の手のなかのコインをながめた。金色の小さなコインだ。なんか知らないけど、ものすごくキラキラ光る。まんなかに猫のマークが浮き彫りになっている。


「これは、小さなコインですね。ウワサでは、これをたくさん集めると、いいことがあるらしいですよ」


 キターッ!

 小さなメダルだ。いいぞ。メダル王バンザイ!


 いい世界だなぁ。

 忠実に僕の好きだったあのゲームをベースにしてる。


 僕はホクホクしながら、小さなコインを招き猫のガマグチのなかに入れた。

 チャリーンと嬉しい音がした。

 これをいっぱい集めたら、何が起こるんだろう?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ