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東堂兄弟の冒険録〜悪のヤドリギ編〜  作者: 涼森巳王(東堂薫)
六章 就活って難しい
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フェニックス戦! 5



 ドシンと、フェニックスは足をふみならす。

 やっぱり同じターンで同じ動作をくりかえしてる。

 行動パターンが決まってる敵だ。

 とすると、こっちの読みどおり、次のターンでフェニックスは回復魔法を使う。

 でも、その前に巨大化したテディーキングの攻撃と、アルテマハイテンションのぽよちゃんのタックルで、いっきにたたみかけることができる。


「行くよ! みんな!」


 蘭さんはもうMPないんで、呪文は使えない。

 でも、そのかけ声だけで、僕らのやる気は満ちた。


 蘭さんの華麗な鞭攻撃連打!

 いいぞ。効いてる。効いてる。


 続いて、テディーキングの暴れる。

 両腕をふりまわす。

 右、左、右、左と重さの乗ったボディブローがフェニックスを見舞う。

 そうか。暴れるって連続攻撃なのか。

 一発ずつのパンチがゴッソリとフェニックスのHPを削るのが目に見えるようだ。

 フェニックスはふらふらして、巣の上にお腹をついた。

 もうあとがない感じ。


 とどめは、ぽよちゃんのアルテマハイテンションアタック!

 目にも止まらぬ速さで駆けぬけると、ぽよちゃんはロケットのようにフェニックスの喉元につっこんだ。

 ぽよちゃんの体が一瞬、フェニックスの体に全部、埋まって見えるほど、めりこんだ。


 ぽよちゃんのオーラはとれたけど、やれた? やれたはず!


 フェニックスは巣のなかに横倒しになった。

 よしッ! やった!

 ……って?

 フェニックスが立ちあがろうとしている。片翼——いや、両翼をあげて、何かを唱えようとしている。


 しまった!

 あとちょっとだけHPが残ってしまったのか?

 でも、瀕死のはずだ。


 そうだ。まだ僕の順番が残ってる。

 今度こそ、いでよ、クリティカル!

 さっきの通常攻撃で、あそこまでダメージを与えることができたのなら、クリティカルヒットさえ出れば……。


 僕は思いっきり、ふりかぶった。

 全身の力をこめて、ブーメランを放った——



 *



 ビュンビュンビュンビュン——

 ブーメランの風を切る音が戦闘音楽さえしのいで響き渡る。


 僕にしては信じられないくらいの豪速球だ。

 これで当たりさえすれば。

 当たれ!

 当たれ!


 僕らは全員、同じ思いでブーメランを見つめた。


 やがてブーメランはきれいな放物線を描いて、フェニックスのやや背後にまわりこむと、ガッツンとスゴイ音を立てて、後頭部を直撃する。


 フェニックスは倒れた。

 巣のなかで完全に目をまわしている。


「ヤッター!」

「勝った! おれら、フェニックスに勝ったでぇー!」

「やりましたね!」

「キュイキュイ!」

「……ま〜」


 ん? ドサクサまぎれにクマりんがしゃべった? しゃべれるのか。このクマ。


 僕らは勝利を確信してハイタッチやら円陣スクラムやら、なんやらかんやら忙しかった。


 でも、そのときだ。

 フェニックスの頭部がメラメラと燃え始める。最初は小さな火だったけど、それはみるみるフェニックスの全身を包み、巨大な炎になる。


 な、なんだ?

 何が起こったんだ?

 そういえば、いまだに戦闘終了の音楽に変わらない。

 ま、まさか……?

 そんなバカな?

 まだ戦闘は《《続いてる》》のか?


 フェニックスの巨体はまたたくまに灰燼かいじんに帰す。

 そうだ。思いだしたぞ。

 フェニックスっていうのは不死の鳥だ。寿命がつきると、その体は燃えつき、灰のなかから……。


 僕らの目の前で、《《それ》》が現れた。

 灰のなかから、両翼をひろげた光り輝く神鳥がよみがえってきた!


「う、ウソだ……そんな……」

「もう、ムリだよ。僕のMP残ってない」

「アホな。こんなん、どないせぇちゅうねんな?」


 僕らは絶望感にとりつかれた。

 今さらもう一度、最初からなんて、どう考えたって無理ゲーだ。

 プレーヤーを殺す気しかない。

 このさきに行かす気がないとしか思えない。

 この世界を創った神様が、もしもいるのだとしたら。


 すると、そのときだった。

 僕らの背後から、トコトコと何かが駆けてきた。

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