フェニックス戦! 5
ドシンと、フェニックスは足をふみならす。
やっぱり同じターンで同じ動作をくりかえしてる。
行動パターンが決まってる敵だ。
とすると、こっちの読みどおり、次のターンでフェニックスは回復魔法を使う。
でも、その前に巨大化したテディーキングの攻撃と、アルテマハイテンションのぽよちゃんのタックルで、いっきにたたみかけることができる。
「行くよ! みんな!」
蘭さんはもうMPないんで、呪文は使えない。
でも、そのかけ声だけで、僕らのやる気は満ちた。
蘭さんの華麗な鞭攻撃連打!
いいぞ。効いてる。効いてる。
続いて、テディーキングの暴れる。
両腕をふりまわす。
右、左、右、左と重さの乗ったボディブローがフェニックスを見舞う。
そうか。暴れるって連続攻撃なのか。
一発ずつのパンチがゴッソリとフェニックスのHPを削るのが目に見えるようだ。
フェニックスはふらふらして、巣の上にお腹をついた。
もうあとがない感じ。
とどめは、ぽよちゃんのアルテマハイテンションアタック!
目にも止まらぬ速さで駆けぬけると、ぽよちゃんはロケットのようにフェニックスの喉元につっこんだ。
ぽよちゃんの体が一瞬、フェニックスの体に全部、埋まって見えるほど、めりこんだ。
ぽよちゃんのオーラはとれたけど、やれた? やれたはず!
フェニックスは巣のなかに横倒しになった。
よしッ! やった!
……って?
フェニックスが立ちあがろうとしている。片翼——いや、両翼をあげて、何かを唱えようとしている。
しまった!
あとちょっとだけHPが残ってしまったのか?
でも、瀕死のはずだ。
そうだ。まだ僕の順番が残ってる。
今度こそ、いでよ、クリティカル!
さっきの通常攻撃で、あそこまでダメージを与えることができたのなら、クリティカルヒットさえ出れば……。
僕は思いっきり、ふりかぶった。
全身の力をこめて、ブーメランを放った——
*
ビュンビュンビュンビュン——
ブーメランの風を切る音が戦闘音楽さえしのいで響き渡る。
僕にしては信じられないくらいの豪速球だ。
これで当たりさえすれば。
当たれ!
当たれ!
僕らは全員、同じ思いでブーメランを見つめた。
やがてブーメランはきれいな放物線を描いて、フェニックスのやや背後にまわりこむと、ガッツンとスゴイ音を立てて、後頭部を直撃する。
フェニックスは倒れた。
巣のなかで完全に目をまわしている。
「ヤッター!」
「勝った! おれら、フェニックスに勝ったでぇー!」
「やりましたね!」
「キュイキュイ!」
「……ま〜」
ん? ドサクサまぎれにクマりんがしゃべった? しゃべれるのか。このクマ。
僕らは勝利を確信してハイタッチやら円陣スクラムやら、なんやらかんやら忙しかった。
でも、そのときだ。
フェニックスの頭部がメラメラと燃え始める。最初は小さな火だったけど、それはみるみるフェニックスの全身を包み、巨大な炎になる。
な、なんだ?
何が起こったんだ?
そういえば、いまだに戦闘終了の音楽に変わらない。
ま、まさか……?
そんなバカな?
まだ戦闘は《《続いてる》》のか?
フェニックスの巨体はまたたくまに灰燼に帰す。
そうだ。思いだしたぞ。
フェニックスっていうのは不死の鳥だ。寿命がつきると、その体は燃えつき、灰のなかから……。
僕らの目の前で、《《それ》》が現れた。
灰のなかから、両翼をひろげた光り輝く神鳥がよみがえってきた!
「う、ウソだ……そんな……」
「もう、ムリだよ。僕のMP残ってない」
「アホな。こんなん、どないせぇちゅうねんな?」
僕らは絶望感にとりつかれた。
今さらもう一度、最初からなんて、どう考えたって無理ゲーだ。
プレーヤーを殺す気しかない。
このさきに行かす気がないとしか思えない。
この世界を創った神様が、もしもいるのだとしたら。
すると、そのときだった。
僕らの背後から、トコトコと何かが駆けてきた。