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東堂兄弟の冒険録〜悪のヤドリギ編〜  作者: 涼森巳王(東堂薫)
六章 就活って難しい
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やっぱり泉があった



 たいていのダンジョンでは、ボス戦の前に回復場所がある。

 あるいは、転移魔法で街と行き来できる拠点だ。


「ああ……明るくなってきよったで。かなんわぁ。ひぇー。た、高いやんか。おれ、目つぶってよかなぁ」

「ダメだよ。シャケ。そんなことしたら落ちるよ?」

「ちゃんと歩けないなら、シャケが馬車に乗って、クマりんと代わってもらえばいいんじゃないですか?」

「せやなぁ。ほな、頼んわ」


 クマりんはここに来るまでにレベル10にまで上がっている。

 たまりんはレベル7。

 ギリギリ、フェニックス戦でも役立てるかもしれない。でも、なるべくなら僕ら四人(三人と一匹)でなんとかしたいところだ。


 三村くんとクマりんが交代して、さらに上へ上へと、岩肌を登っていく。

 小銭は拾うし、たまにモンスターとの戦闘になるが、クマりんは戦士系だから、すでにかなり強かった。

 ずっと“ためる”しかしないぽよちゃんより、ふつうに攻撃したり、仲間を呼びよせるクマりんのほうがザコ戦にはむいている。


「あっ、泉があるよ。かーくん。シャケ。ここなら馬車も入りこめるし、休憩できる」


 そう言って、蘭さんが指さしたのは、崖のあいだに広がる小さな草原だ。清水のわきだす泉がある。ボス戦前の回復の泉だと一発でわかるやつだ。


 僕らは岩壁にかこまれた原っぱで、ひと休みした。夜食に持ってきたのは、スズランちゃんが持たせてくれたバスケットだ。なかにはサンドイッチが入っていた。


「ああ、美味いね。ベーコン塩辛いけど、疲れてるからちょうどいい」

「こっちのトマトサンドも美味しいですよ」

「スズランちゃん。料理もうまいんだね」

「僕の妹か。会えるとは思ってなかったけど。きっと父上や母上も会いたいだろうな」

「そうだよね」


 泉の水がうまい。

 これ、ペットボトルに詰めて持っていったら、エリクサーのかわりにならないのかな? 泉から離れると効果が切れるのか?


 んん、うまうまとサンドイッチと泉の水を交互に味わっていると、いつのまにか僕らにまじって、変な鳥がバスケットに首をつっこんでいた。尾っぽの長い派手な色あいのニワトリみたいなやつだ。いや、むしろヒヨコ? 赤いヒヨコだ。お風呂に浮かべるアヒルちゃんみたいなやつ。


「ああ、野鳥が僕らのご飯を食べてるぅ」

「あっ、ほんとですね。珍しい鳥だなぁ。見たこともない」

「まあ、ええやん。いっぱいあるんやし」

「そうだね。けっこう可愛い顔してる。餌づけできないかなぁ」

「餌づけして、どうするんですか?」

「え? ペットにしようかなと」

「僕らといたら危険ですよ。仲間モンスターなら自力で戦えるけど、ただの野生動物はそうもいかないし」

「そっか。残念」


 お腹もいっぱいになった。

 日も昇ってきた。

 いよいよ、決戦だ。


 僕らは立ちあがった。

 このさきにある朝焼けの崖をめざして。

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