いでよ、クリティカル!
さて、僕らの攻撃だ。
蘭さんは「元気になれ〜」で自分のHPを回復した。MP温存のためか、そのあと、防御行動をとる。
あっ、よく見たら、行動の選択肢に、“身を守る”ってのがある。
今まで、よく見てなかった。
たたかう、身を守る、魔法、得意技、アイテム、逃げる、だ。
蘭さんは三回、防御したから、ちょっとだけ回避率が上がってる。
そうだったのか。知らなかった。
やっぱり、ちゃんと戦闘訓練受けないとダメだなぁ。
シルキー城の兵士訓練所、もっと活用しとくんだった。
そのあと、三村くんが破魔の剣をふりかざした。
「破魔の剣〜」
ちっちゃい炎が火の玉を襲う。
あんまり効果なさそうだ。
もしかして、装備品魔法も使用者本人の魔力の高さが関係してるのかな?
だとしたら、ふだんは僕が持ってるほうが正解なのか。
ぽよちゃんは、まだ“ためる”。ためるよ。ためるの好きだからね。
僕も小銭ためるのは好きだ。
ぽよちゃんの気持ちはよくわかる。
よしッ。次こそは僕の番だ。
どうか、クリティカル出ますように!
僕は思いきって鉄のブーメランをなげた。
ヒュルヒュルヒュルと気持ちのいい音を立てて、ブーメランが風を切る。
どうだ? クリティカルか?
行け! 僕の(じゃないけど)ブーメラン!
ヒュルヒュルヒュル——
スカッ!
「えっ? スカッ?」
は、外れたー!
ありえない。
これってほんとに幸運度ほぼマックスって言える?
二回に一回は出るクリティカルが、肝心なときにで……出ない。
今、出ないでどうするよぉー!
うう、みじめっ。
ど、どうしよう。
カボタンに憑依しちゃったら。
蘭さんだけは助かるだろうけど、次のターンで蘭さん一人で倒せる保証はない。戦闘離脱も必ず成功するかどうかはわからない。
そ、そうだ。魅了だ。蘭さんの魅了(100%)なら、必ず勝利できる。
でも、ここ、森のなかだけど、そのあと蘭さん一人で神殿まで無事に帰れるかな? 危険察知能力があるとは言え。
僕の棺おけのなかから旅人の帽子を使って、装備魔法を使うことできるんだろうか?
ハラハラしてた僕だったが、とつぜん、思ってもみないことが起こった。
夜の闇を切りさいて、白い火炎がまっすぐ火の玉にむかっていった!
*
な、何が起こったんだろうか?
よくわからないけど、とりあえず火の玉はヘロヘロになった。
チャラララッチャッチャー!
と、いつもの音楽がして、クマりんがいっぱいレベルアップした。
馬車の子にも経験値が行き渡るありがたいシステム。
見ると、クマりんはレベル5になっていた。まあ、まだ弱いんだけど、戦士型らしくHPと力がググッと伸びてくる。これなら、すぐに戦闘に使えそうだ。さっきみたいなピンチのときに交代要員として使える。
もしものときのために、僕はクマりんに僕のおふるの青銅のよろいと皮の盾と銅の剣を与えた。
これでいちおう、もしものときに一ターンしのぐための盾にはなってくれるだろう。
それにしても、さっきの火炎はなんだったんだろう?
「うーん? 誰が助けてくれたんだろ? 兄ちゃんかなぁ?」
あたりを見まわすけど、姿が見えない。
変だなぁと思ったけど、僕らはHPを回復すると歩きだした。
しばらくして、蘭さんが背後をふりかえった。
「やっぱり、何かがついてきてる気がしませんか?」
「す、する……」
「せやなぁ」
木の枝がザワリと鳴った。
そして、ふわ〜っと青白い炎が近づいてくる。
ま、また火の玉だ。
火の玉が現れた!
「あれ? 戦闘の音楽、鳴らない」
「あっ、これは危険察知できないから、さっきの戦闘で倒した子ですね」
「なんだ。またロランのストーカーか」
「この子、僕らが死んだときに一時的にでも復活させられるんですよね? 保険要員として優秀かも」
「そうだね。僕らが復活魔法をおぼえたら、憑依されてるうちに仲間も魔法で復活できるし」
「つれていきましょう」
便利だなぁ、馬車。
そして、ストーカー製造機。
僕らは火の玉に、たまりんと名づけた。
たまりんは初のエレメンタル系の仲間で、数値はそんなによくない。
レベル1でHP10、MP10、力1、体力2、知力3、素早さ1、器用さ2、幸運1だ。1と2のオンパレード。特殊な戦法しかできそうにない。
ただし、マジックが使える。
『冷たくなれ〜(°▽°)』だ。
なんだ、この白目むいた笑顔!
まさか、白目で唱えろと?
でも、氷属性の攻撃魔法のようだ。
僕らには今ほかに氷属性使える人がいないから助かる。
あと、得意技。
憑依
あやつる
物理攻撃無効
この三つだ。
どうやら、モンスターは得意技が三つまでしか使えないらしい。
それにしても、ついてきたのは、ほんとに、たまりんだったんだろうか?