火の玉、怖い……カボチャも怖い……
えてして勝利を確信して慢心したとき、それは起こる。
とつぜんの予想外なモンスターの反撃によって、いっきにピンチにおちいる。そんなことが、ままある。
三村くんの鉄のブーメランは思ったとおり外れた。
やっぱり僕らには魔法攻撃要員が不足してるなぁ。早く魔法使いが仲間になってくれないと。
次の順番は、ぽよちゃんだ。
いつものように、ためている。
ためるとクリティカル率も上がるようだから、それはそれで正解なのかも。
そして、僕。
「破魔の剣〜」
火の玉は火属性だから、炎の魔法はダメージが半減。
ん? ちょっと待てよ。
前にメラりんと戦ったときは、僕はまだバグがあって、幸運数値がゼロなんだった。
今は小説を書くのおかげで、99998だ。たしか、前に蘭さんが、幸運の数値は敵のクリティカル攻撃の回避率に関係してると言ってた。
もしかして、それって、自分のクリティカル攻撃の発生率にも関係してるんだろうか?
僕は最近の自分の戦いぶりを思いだしてみる。そういえば、二回に一回はクリティカルだったような? とくにザコ敵相手のときには、ほぼ確実にクリティカルを出してたような気がするぞ。
そうか。今の僕は通常攻撃が七割がたクリティカル攻撃になってしまうんだ!
ああ、もったいないことした。
クリティカル攻撃なら、エレメンタル系にも通常攻撃が効いたのに。
この一ターンのミスが大きく僕らを祟った。
次の瞬間、火の玉が思いもよらない行動をとったのだ。
ヒョロ〜とカボタンに近づいていったと思うと、そのまま、すうっと消えてしまった。
「ん? 消えた?」
「戦闘、終わったんですか?」
「でも、まだ、戦闘の音楽のままやで?」
「ですよね」
そして、テロップが流れる。
火の玉は憑依した。
カボタンがよみがえった。
カボタンの攻撃!
カボタンはカボチャ爆発を唱えた!
*
カボチャのランタンが目の前で黄色く光り、次の瞬間、こなごなになって四方八方に飛びちる!
カボチャの残骸が弾丸のように僕らを襲った。
「わあッ!」
「あちッ! 焼きカボチャ爆弾ー!」
「食いもん粗末にしたらあかんがなー!」
なんとか盾で、あるていどはよけたものの、全部はさけきれなかった。
熱い……カボチャ、爆発するやつだったのか。
もちろん、カボタンは自爆死だ。
哀れ。神風精神のモンスターよ。安らかに。
僕らはそれなりに打撃を受けた。
HPが半分くらいにまで減った。
カボタンの爆発を二連続でくらったら、全滅かもしれない。
僕らの見てる前で、カボタンの飛びちったあとから、ふうっと火の玉が浮いてくる。
むーん。本体の火の玉はまだ生きてるのか。やっかいだなぁ。
「こいつ、死んだ仲間に憑依して復活させるモンスターなんですね」
「うん。しかも憑依した仲間が死んでも、自分のHPがつきるまでは戦えるんだ」
「もう一回、カボタンに取り憑かれたら、僕らヤバイですよ?」
「だよね」
「次のターンで確実にしとめないと」
蘭さんは作戦を練っている。
「ザコ敵だし、エレメンタル系はたいていそんなにHP高くないですよね。僕が『燃えろ〜』を四回放って、かーくんが破魔の剣の装備魔法を使用すれば、なんとか倒せると思うんです」
僕も考えた。
「それでもいいんだけど、こんな出てすぐのとこでMPをそんなに使っちゃうと、あとがしんどいよ」
「じゃあ、どうするの?」
「一か八かなんだけど、僕の幸運度に賭けてみたいんだ。そのかわり、この森をぬけるあいだ、僕とシャケが武器をとりかえる。たしかに、それだと僕の攻撃力は下がるけど、破魔の剣の魔法をシャケが使えるし、クリティカルが出れば、鉄のブーメランでも充分、火の玉くらいは倒せると思うんだ。ロランは万一のときのために、自分のHPを回復させて、全滅を回避しといてほしい」
「なるほど。MPを回復させる手段は今のところ回復の泉にたよるしかないですもんね。そうしましょう」
というわけで、僕は三村くんと装備武器を交換した。
次の僕の攻撃でクリティカルが出るかどうかが勝負のわかれめだ。