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東堂兄弟の冒険録〜悪のヤドリギ編〜  作者: 涼森巳王(東堂薫)
六章 就活って難しい
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モンスターおじい爆誕



 夜になる前に、宿屋で休んでいた僕らのもとへ、見覚えのあるおじいさんがやってきた。

 神殿の前で馬車を押し売りしてきた、あのおじいさんだ。


「いい馬が手に入ったんじゃ。いつでも馬車が出せるぞよ」

「ほんとですか?」

「うん。これで自分をふくめ、仲間を八人までつれて歩ける。それに、あんたたち、さっき子グマちゃんをわしのとこによこしたじゃろ?」

「あっ、すいません。数が多くてつれて歩けなかったので」


 老人は怒ったふうではない。

 どっちかと言うと嬉しそうだ。


「いやいや。モンスターとは言え、人になついて可愛いもんじゃな。そこで、わしは思った。馬車も譲ったことだし、わしはここを住居にして、外の花畑にモンスター預かり所を作ろうと思う。仲間の数が増えすぎたら、わしのところへ預けなされ。世話をしてしんぜよう。そのかわり、経費として五千円払ってくれんかのう?」


「五千円ですね。いいですよ。はい」


 五千円くらいは聖女の塔へ向かっているあいだに拾ったから、チョロイもんだ。

 やった。これで、子グマちゃんもつれて歩けるぞ。


「子グマちゃんのステータス、見とこうか?」

「そうですね」


 僕らは子グマちゃんを宿の部屋に呼びよせた。

 子グマちゃんは指をしゃぶりながら、三村くんにすりよる。傷をなおしてもらったので、恩義を感じているようだ。


 子グマちゃんは案の定、レベル1だった。仲間になったばっかりのときは、どの子も1なんだな。


 HP25、MP0、力5、体力5、知力2、素早さ2、器用さ3、幸運2。


 マジックなし。


 得意技

 仲間を呼ぶ

 合体

 プリティー


 仲間を呼ぶと合体はわかるよ。

 でも、プリティーってなんだ?


 初期数値を見た感じだと、子グマちゃんはこう見えて、意外と力と体力の伸びる戦士タイプだ。

 僕がレベル1だったときより、HPや力が高い。


「子グマちゃんの名前、なんにする?」

「そんなん、クマ公でええやろ」

「ダメ! そんなダサいのイヤ!」と反論したのは、蘭さん。


 う、うん。まあ、僕もクマ公はちょっと……。


「じゃあさ、クマりんってのはどうかな?」

「いいですね! クマりん。可愛いよ。クマりんにしよう」


 こうして、夜はふけていく。



 *



 今日と明日の出会うころ、僕らは神殿を出発する。


「お兄さま。お気をつけて」

「うん。行ってくるよ。アンドー、神殿の守りはよろしく」

「お任せください」


 スズランちゃんや安藤くんに見送られて、ガラガラと馬車は行く。でも、まだ馬車のなかにはクマりんだけだ。レベルが上がるまでは、なかでじっくり育てないと。


「夜明けまでにちゃんと、崖のとこまで行けるかなぁ?」

「急ぎましょう。今から六時間ってとこですね」

「六時間もあれば、まにあうやろ」


 出現モンスターも途中までわかってるから、よっぽど想定外のことが起こらなければ時間内につく。神殿から崖までの所要時間は約四時間と聞いていた。


 ゲームの利便性のためだろうか。

 なぜか、聖女の塔までは旅人の帽子で行くことができた。

 見まわすけど、やっぱり猛はいない。

 どこ行っちゃったのかなぁ? 猛。

 また会えるかなぁ?

 急にいなくなって、さみしいよ。


「この塔、けっきょく、なかには入らなかったね」

「きっと、ここも今の僕らが行くべき場所じゃないんです。神様がちゃんと見守って、導いてくださるんです」


 うん。まあ、そういう言いかたもできるかな。まちがったルートに行くと話の進行が狂うからね。


 しょうがなく、夜の森のなかを進んでいく。東へ、東へ。


 夜の森は不気味だなぁ。

 ホウ、ホウと聞こえてくるのはフクロウかなってわかるけど、ときどき、怪物みたいな声が「ギエーッ」とか叫んで遠ざかっていく。


 こ、怖い。

 木の枝が風にゆれてガサガサ音を立てるし……って、うん? 変だぞ。

 風なんて吹いてないんだけど?

 じゃ、じゃあ、なんで揺れるんだ?

 オバケか?

 怖い!

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