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東堂兄弟の冒険録〜悪のヤドリギ編〜  作者: 涼森巳王(東堂薫)
六章 就活って難しい
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兄ちゃん、いなくなった……



「猛? 猛ぅーっ?」


 なんで手なんかふってるんだよ?

 兄ちゃん。

 ふもとの街までいっしょに行くって言ったじゃないか。


 僕の叫びも虚しく、神殿にたどりついたとき、そこに猛の姿はなかった。

 一人だけ魔法の効果範囲を離れたのだ。


「なんでだよ。兄ちゃん。ずっといっしょに旅すればいいじゃないか。バカー! 猛の人でなしィー!」と言ったところで、あたりにはもう兄はいない。


 僕はふくれっつらであきらめた。

 まったく、ワガママな兄ちゃんだなぁ。

 なんか、ここに来てから猛のようすが変なんだよなぁ。


 それにしても、神殿のなかがさわがしくないか?


「なんかあったのかな?」

「そんな感じですね」


 僕らは全員で神殿のなかへ入っていった。スズランちゃんと安藤くんは、まだNPCだ。ステータスも見れない。なので、行動は僕らの命令がきかない。

 神殿に入ると、いきなりスズランが走った。スカートのすそがヒラリ。やっぱり女の子がいるといいね。それだけで目の保養。


「ただいま帰りました。みなさん、ご心配をかけてごめんなさい。このかたたちが助けてくれたんですよ。ところで、どうしかしましたか?」


 右往左往してた神官たちがよってきた。


「よかった! スズランさま。よくぞご無事で。じつは、ついさきほどから、マリーさまの容態が思わしくなく……」


 えーと、僕のムダにいい記憶力をバカにしないでよ?

 マリーさまというのは、たしか、スズランちゃんの師匠にあたる、前任の祈りの巫女だ。病気でふせっているという話だった。そうか。容態が急変したのか。


「お師匠さまが? それは大変です」


 スズランが走っていく。

 あっ、さっきは人が前に立っていて、どうしても行けなかった扉の奥だ。

 その奥はマリーさんの寝室になっていた。病気がだいぶ悪いらしい。いや、高齢だから、とくべつな病気というよりは年齢的なものかもしれない。


「お師匠さま!」

「おお……スズラン。よくぞ戻ってまいりました。これで安心して、あなたにあとを託せます」

「イヤです! そんなこと言わないでください!」


 スズランちゃん。優しいなぁ。いい子だ。やっぱり、あのツンデレは僕の気のせいだ。


 が、そのとき、マリーさんの首がカクッと落ちる。

 えっ? ま、まさか、死んじゃったんじゃ?



 *


 僕が息をのんで見守っていると、神官の一人が言った。

「マリーさまはお眠りになられました。容態が少し落ちついています。スズランさんが戻られてご安心なされたようです」


 なんだ。生きてた。ギョッとさせないでよぉ。

 まあ、よかった。

 でも、このままじゃ時間の問題だなぁ。


 そう思っていると、すっくと立ちあがり、スズランが宣言する。

「わたし、フェニックスの羽を見つけてきます。どんな病も治し、寿命を十年のばすと言われる伝説の鳥の羽を」


 また、やっかいなことを言いだしたなぁ。これは、とりに行かないといけなくなるぞ。絶対に!


 僕の思ったとおりだ。

 蘭さんが言いだした。


「それは、どこへ行けば手に入るの?」

「聖女の塔よりさらに東に断崖絶壁があるんです。その崖に朝焼けのころに立つと、どこからともなくそれは美しい火の鳥が現れると言います。それが不死鳥フェニックスです」

「わかった。僕らが行くよ」

「でも、お兄さま……」

「任せて。君はここで、お師匠さまのそばについててあげるといい。アンドー、君が僕の妹を守ってくれ」

「わかりました」と、安藤くんもすっかり、その気。


 僕とシャケには確認しないのか。

 まあ、行くんだけどね。

 じゃないと転職できないし。


「わかったよ。行こう。でも、ちょっと休憩してもいい? MPを回復させないと」

「そうですね」

「それに、朝焼けのころに崖に立つんだよね? 今からじゃ、何時間も待つよ?」

「そうですね。じゃあ、夜明けにまにあうように、夜中に出発しましょうか」


 ん? 夜中?

 夜中はオバケがうごめく時間帯なんですけどぉ……。


 スズランちゃんの手前、それを言うことはできなかった。

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