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東堂兄弟の冒険録〜悪のヤドリギ編〜  作者: 涼森巳王(東堂薫)
五章 (麗しの)巫女姫を救え!
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人さらいA



 素早さ特化モンスター。

 いや、魔物じゃないから、モンスターじゃないのか。エネミー。そう。正しくはエネミー。


 これまで相手にしてきたのは、力技だったり、毒攻撃だったり、仲間を呼んで大きくなったりはしたものの、素早さは普通だった。

 素早さにおいて、蘭さんに叶う相手はいなかった。

 でも、今回の敵はとにかく速い。


 Aが呪文を唱えるや否や、Bが刀身の短い短剣で切りつけてきた。両手に一本ずつ短剣を持って、二回攻撃だ。


 僕はあわてて逃げようとして、鉄の盾を前につきだしたまま尻もちをつく。

 イテテ。カッコ悪い。

 でも、そのおかげで、ぐうぜん、敵の攻撃をよける形になった。ジャリン、ジャリンと、鉄の盾の表面を刃がなでる。

 敵はチッと舌打ちをついて、とびのく。

 蘭さんが素早いおかげで、敵も二回行動までしかできないようだ。


 次は僕らの番だ。

 このゲーム、ターン制で、ほんとよかった。じゃないと、これがリアルな戦闘なら、僕はさっきのあいだに追い打ちをかけられて、あっけなく喉をひと突きされてる。


 蘭さんの番だ。

「みんな、がんばろ〜」


 うん。僕、がんばる。

 なんで顔がニヤけちゃうのかなぁ。


 そして、ドラゴンテイルが鳴った!

 蘭さんと敵の素早さは行動回数から言って互角だ。

 敵もかわすことができずに、ビシリと鞭の洗礼をくらう。


 そのときだ。

 ちなみに鞭のえじきになったのは、人さらいAだったんだけどさ。

 蘭さんの鞭が当たった瞬間、人さらいAの顔を覆う黒い覆面みたいなのが外れた。


 僕は思わず、「ああーッ!」と大きな声をあげてしまった。

 それは、知っている人だったのだ。



 *


「安藤くんッ? 安藤くんじゃん! 何してんのっ? なんで、人さらいなんかしてるの?」


 そう。それは、またもや僕の小説のなかの登場人物であり、脇役の安藤くんだ。奥出雲で実家の農業を手伝ってる朴訥ぼくとつな青年だ。ちなみにその村の松潤との呼び名を持っている(僕がつけた)イケメンだ。

 興味があるなら、『東堂兄弟の探偵録 出雲御子編〜第一話 不自然なトカゲ〜』を読んでほしい。いや、宣伝ではない。宣伝ではないが、オカルトミステリーだ。


 そうか。人さらいAの“A”は安藤のAだったのか。


「知りあいですか? かーくん」

「うん。僕の友達。ほんとは心優しい青年なんだよぉ。悪いことなんてできる人じゃないのに」

「じゃあ、説得できるかも。次の僕のターンまで待ってください。なんとか一ターンしのいで」

「わかった」


 なんだか、安藤くんの目つきが邪悪だ。安藤くんらしくない。

 そうだよな。ふだんの安藤くんなら女の子に手なんてあげないし。


 三村くんのブーメランは、またもやハズレ。サッ、サッとかわされた。

 彼ら、さっきのターンで素早さ上がっちゃってるからねぇ。


 順番から言って、次は僕の番だ。

 僕は破魔の剣をふりかざそうとした。

 けど、できない。

 何かが僕の行動をとどめている。

 変だな。


 すると、ぽよちゃんがギュッと目をとじた。

 あれ? なんで? ぽよちゃん、僕のあとだよね?


 ステータスを見ると、ぽよちゃん、いつのまにかレベル13まで上がってる。

 仲間モンスターはそういえば、仲間になるとレベルが1に戻るんだよな。

 ぽよちゃん、仲間になってすぐに死んじゃったから、初期ステータスを確認してなかった。


 あらためて見なおすと、

 HP63、MP25、力20、体力15、知力30、素早さ50、器用さ40、幸運60。


 マジック

 巻きで行こう〜(>_<)


 得意技

 ためる

 はねる

 聞き耳


 ウサギっぽい得意技だなぁ。

 得意技はまだ、ためるしか使えない。

 ん? この目をギュッと閉じた顔文字……もしや?

 巻きで行こうって、さっき安藤くんが使った素早さを上げるやつじゃないか。


「ぽよちゃん、さっき呪文使った?」

「キュイ」

「やっぱりそうか。えらいぞ」


 ぽよちゃんは力をためられるだけじゃないんだ。魔法で素早くなることができる。


 いや、なにげに気づいたんだけど、ぽよちゃん、もう僕の素早さをぬいてる。ウサギだからな。素早さの数値に特化してるんだ。

 これまではレベルが低いから僕より順番遅かっただけか。そういえば、さっきレベルアップしてた。あのとき、ぬかれたんだな。

 じゃあ、これからは僕がターンのトリなのか。なんか、さみしい。


 とにかく、僕の順番だ。

「破魔の剣〜」


 小さい炎のあと、人さらいBが襲いかかってきた!


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