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東堂兄弟の冒険録〜悪のヤドリギ編〜  作者: 涼森巳王(東堂薫)
五章 (麗しの)巫女姫を救え!
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子グマちゃんが仲間に



 チャラララッチャッチャ〜

 と明るい音楽で戦闘が終わる。

 僕と三村くんとぽよちゃんはレベルアップした。

 さらには、コロンとテディーキングの頭から王冠がころがって、ドロップアイテムになった。勝利報酬は破格の千円。

 この段階では、まだ敵から手に入るお金は百円とか二百円とかの単位だ。へたすると五十円。

 よほどの強敵だったんだとわかる。


「ロラン、大丈夫だったの? よくつぶされなかったね?」

「精霊王のよろいを着てたから助かったんです。瀕死だけど、ギリギリもちました」

「ほんとだ。HP12しか残ってない」


 HPが赤字で表示されてる。

 僕は急いで「もっと元気になれ〜」を二回くりかえした。蘭さんの頰に赤みが戻ってくる。


「よかった。治った」

「ええ、もう大丈夫。子グマちゃんは要注意ですね」


 僕らが「この王冠、誰が装備できるんだろう?」とか話しながら、立ち去ろうとしたときだ。


 うしろから、ムクっと何かが起きあがり、ついてくる。

 子グマちゃんだ。

 ちぎれた耳と片腕を持って、涙を浮かべている。


「あっ、魅了、使っちゃったからかな。魅了を使うと戦闘は有利になるんですけど、そのあと必ずモンスターがストーカー化するので、あんまり使わないようにしてたんですよ」


 そうだったのか。

 それにしても、子グマちゃんの哀れな姿。これはヒドイ。ぬいぐるみ虐待ぎゃくたいだ。誰だ? こんなヒドイことしたの……って、僕らなんだけど。


 ふうっとため息をついて、三村くんが大きなバッグを背中からおろすと、針と糸をとりだした。


「このクマ、直したってもええか?」

「いいですよ。もう襲ってこないと思いますし」



 *


 三村くんは針と糸を手にとり、まるで魔法のようにスイスイと、子グマちゃんの耳と片腕を修復した。ついでにお腹の穴にも花柄のアップリケをつける。


「ほら、これでええやろ。もとどおりや」


 子グマちゃんはすごく喜んでいる。


 そうだった。三村くんはもともと現実世界で、フィギュアの製作とかしていた。今はビスクドール作りの修行中だ。それがこの世界で得意技になってないはずがない。


「シャケの得意技、人形作りとか?」

「せや。人形師や。あと水泳やろ。ボディーランゲージ」

「うん。やっぱり、向こうでの特技がそのまま得意技になってるね」

「向こう?」

「あっ、なんでもない」

「ふうん? ほら、自作の人形を売り物にしとるんや。けっこう売れるんやで」


 大きなバッグの中身の正体は、大量の人形だった。武器商人が本業じゃなかったのか。


「それはともかく、子グマちゃん、どうしますか? なんか、ついてきたそうな顔してるんですけど」

「ストーカー製造機って、けっきょく魔物使いと同じなんだよね? 魔物を仲間にするスキルなんでしょ?」


 すると、蘭さんと三村くんは首をひねった。

「魔物使いってなんですか?」

「そないな技、聞いたこともないで。職業なんか?」


 そうか。この世界には魔物使いって職業がないんだ。僕の好きなあのゲームでも、Ⅴのときに初めて、それに該当するものが出てきたけど、主人公固有の個性にすぎなかった。

 この世界では、蘭さんにしか使えない技なんだ。


「ああ、うん。なんでもない。子グマちゃんは仲間呼びして巨大化できるんなら、すごく強い味方になるよ。つれていこう」

「そうですね。でも人数が今、多いから」

「馬車で待たせればええんちゃう?」と、三村くん。

「そうですね。じゃあ、子グマちゃん。マーダーの神殿に置いてある僕らの馬車で待っててくれる?」


 子グマちゃんがうなずいた。


「あっ、ちょっと待って。もしかして、これ、子グマちゃんが装備できるかも」


 テディーキングの王冠、やっぱり、子グマちゃんにちょうどいい。

 なんかプリティーなモンスターばっかり仲間になるなぁ。まあ、害虫と旅したくないもんな。



 ——子グマちゃんが仲間になった。子グマちゃんは馬車まで走っていった。



 馬車、買っといてよかった。

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