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東堂兄弟の冒険録〜悪のヤドリギ編〜  作者: 涼森巳王(東堂薫)
五章 (麗しの)巫女姫を救え!
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怒るクマ



「ああ、テディーキングの“怒り心頭”が発動してしまったな。倍返し攻撃が来るぞ。気をつけろ」と、猛がつぶやく。


 ぽよちゃんは、あいかわらず、ギュっと目をとじて、ためている。

 あんまり臨機応変にはいかないようだ。


 僕はぽよちゃんを抱きあげて、その場からとびのいた。ちょっと離れてテディーキングを見守る。


 テディーキングは「倍返しー!」と叫ぶと、いきなり巨体が目の前から消えた。

 ん? どこ行った?

 パパの仕事部屋。パパとママの寝室。兄ちゃんの部屋。僕の部屋。じいちゃんとばあちゃんの部屋。リビングルーム。

 という5LDK一戸建てなみの巨体が、瞬時に消えることなんてできないはずだ。


 あれ? なんだろ? 僕のまわりにある、このうっすらと黒い影。

 影?


 見あげた僕は、ようやく消えたクマがどこへ行ったのか気づいた。

 なんてことだ。

 ヤツはあの巨大な体躯たいくをものともせず、すさまじい跳躍力で、いっきに森の樹木をとびこえるほどに大空高く舞いあがったのだ。そして、そのまま、僕を下敷きにして着地しようとしている。


 こいつ、なんでこんなに強いんだ?

 中ボスでもなんでもないザコ敵のくせに。


「危ないッ!」


 僕は誰かにつきとばされた。

 蘭さんだ。

 僕のまわりから黒い影が消える。でも、かわりに蘭さんが——

 ドーンとすごい音がして、蘭さんはクマのお尻の下敷きになった。


「ロラーン!」


 いくらなんでも、あの重量の巨大物質が高さ百メートルからダイブしたんだ。人間なんて一撃死だろう。

 蘭さんは……どうなったんだろうか?


 僕と三村くんは同時に攻撃を放った。

 鉄のブーメランがテディーキングの片腕をもぎとり、破魔の剣がお腹に穴をあける。綿が宙にとびちる。


 そして、ぽよちゃんが突進した!

 きれいにテディーキングの顔面に頭突きがキマる。

 巨大な子グマは、ふらりとよろめいた。

 しかし、最後の力をふりしぼるかのように、残る右手をふりあげる。


 そのときだ。


「やめて。クマちゃん。もう戦うのはよそうよ」


 ん? この声は、蘭さん?


 見ると、蘭さんがクマのお尻の下から這いだしてきた。

 スゴイ!

 あの巨体の下敷きになったのに、つぶれなかったのか?


「ね? クマちゃん。僕のお願い、聞いてくれる?」


 ら、蘭さんの目がうるんでキラキラしてる。夜空にきらめく無数の星が見えた。

 はいはい。いくらでもお願い聞きますよ——って、ハッ! 僕は何をしてるんだ?

 そうか。これが、蘭さんの得意技、魅了(100%)か。


 テディーキングは蘭さんを見つめたあと、ふりあげていた右手で、ぽかりと自分の頭を叩いた。

 そのまま、ドスンと地面に倒れた。

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