表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
東堂兄弟の冒険録〜悪のヤドリギ編〜  作者: 涼森巳王(東堂薫)
五章 (麗しの)巫女姫を救え!
57/377

子グマちゃん



 スライムの見ためは、以前のぬけ道で見たときと変わらない。

 あいかわらず、プルプルして可愛い。


 子グマちゃんは初めて見た。

 野生のって言うけど、見ため、ぬいぐるみなんだけど?

 めっちゃモコモコしたピンクのクマだ。つぶらな目が僕好み。


 そう言えば、ここに来る前、山岳地帯でグリズリーって熊のモンスターがいた。なのに、なんで今さら、子グマちゃん? それも、ぬいぐるみ。

 赤いリボンつけて一体五十円で売れば、女の子にバカ売れするだろう。


「ぬいぐるみが動いてる……」

「ぬいぐるみですね」

「ま、モンスターやし、いろいろおるんやろ」


 二体しかいない。

 しかも弱そうな子たちだ。

 ひさびさに、やっつけるのが可哀想になってくる。やっぱり害虫とは、こっちの受ける印象が違う。


「ちゃちゃっと終わらせよっか」


 僕は完全に甘く見ていた。

 なんか猛が苦笑いしてるなぁとは思ってたんだけど。


 僕はそれで思いだした。

 ん? 待てよ。

 スライムレベル10?

 それって、もしや……。

 めったやたらに仲間を呼んで、最後には一匹にくっついてスライムの王様になるやつか?


 そうか。

 あの手強いスライムたちか。

 レベルが高いぶん、一体ずつがしぶとい上、倒しても倒しても仲間が増えるから、長期戦になるんだよね。しかもキングになっちゃうと、さらに強敵になるし。


「ロラン。シャケ。ここはスライムから倒そう。やつが仲間を呼ぶ前に」

「うん。わかりました」

「了解やぁ」

「キュイ!」


 僕らは勇んで銭湯へGO!

 あっ、ミスった。

 戦闘へGO!

 変換ミスって怖い。意味がぜんぜん違う。


 一ターンめ。

 まずは蘭さん。

 ピシ、ピシ、ピシ、ピシリと鞭連打〜

 思ったとおりだ。強い。

 スライムは二打で撃沈。

 残り二打で子グマちゃんも……って、あれ?

 子グマちゃんの挙動がおかしいぞ?



 子グマちゃんが仲間を呼んだ。

 子グマちゃんが仲間を呼んだ。

 子グマちゃんが仲間を呼んだ。

 子グマちゃんが仲間を呼んだ。

 子グマちゃんが仲間を呼んだ。

 子グマちゃんが仲間を呼んだ。

 子グマちゃんが仲間を呼んだ。



 このテロップ、どっかで見たぞ。

 な、なんかイヤな予感が……。



 なんと!

 子グマちゃんたちが、みるみるくっつき……きょ、巨大化していく。

 テディーキングになったぁー!



 や……やっぱり!



 *



 王冠をかぶったピンク色の巨大なクマのぬいぐるみ。

 それが、テディーキングだ。

 僕らの前に小山のようなラブリーテディーが牙をむいた。

 どうでもいいけど、可愛いな。


「ああっー! 合体するの、子グマちゃんのほうだったァー。てっきり、あのゲームに忠実にスライムのほうだと思ったのに!」


 ハハハと、爽やかな笑顔で猛が笑う。

 いや、今、そんな笑われたって。


「だから言ったじゃないか。テディーキングには気をつけろよって。あいつ、瀕死ひんしになると、いっきに仲間呼びするときあるから」

「いやいや、それならそうと言っといてよ? 合体してからじゃ遅いよ?」

「かーくん。ガンバレ」


 もう、なんて無責任な兄なんだ。

 こうなれば戦うしかないのか。

 デカイ。デカイよ。ビルなみとまでは言わないけど、二階建ての一軒家くらいの大きさはある。


 合体直後は動けないらしい。

 幼児が指をしゃぶる仕草でこっちを見て、僕らのターンを待っている。


「えーと、一ターンめの僕とシャケとぽよちゃんの行動はとばされちゃったわけか。じゃあ、次が二ターンめってこと?」

「そうですね。次の戦闘からは、四回行動できる僕がまっさきに子グマを倒します。今はじゃあ、HPも防御力も高そうですし、呪文を使いますね?」

「一段階は上げたほうがいいね。僕ら防御力は上がったけど、攻撃力がものすごく強いのは、ロランだけだし」


 ロランはうなずいて叫んだ。

「みんな、がんばろ〜」


 o(^o^)o

 この笑顔だ。

 蘭さんは顔文字の表情作るのウマイなぁ。


 そのあと、ドラゴンテイルが三回舞った。テディーキングに一回40〜50のダメージを与えた。が、クマの王様は倒れない。目に涙を浮かべているが、倒れない。

 やっぱり強いな。

 巨大化させてはいけなかった。


 三村くんが鉄のブーメランをなげる。

 スコンと可愛いクマちゃんの耳が、かたっぽ切りおとされた。

 ああッ、残酷ぅー!


 テディーキングは大泣きだ。

 あと、どのくらいのHPが残ってるんだろう?


 僕の攻撃で倒れてくれるといいんだけど……。

 なんか、これまでのパターンで行くと、たいてい反撃をくらうのは僕。


「破魔の魔法でもいい?」

「いいですよ。一ターンやりすごせば、次の僕の攻撃で倒せるでしょ?」


 じゃ、遠慮なく。


「破魔の剣〜!」


 ちっさい炎が泣いてるクマちゃんの頭上にパラパラと降った。

 あっ……マズかったかも?


 テディーキングのつぶらな瞳が燃えている。クマちゃんの怒りに火がついたー!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ