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東堂兄弟の冒険録〜悪のヤドリギ編〜  作者: 涼森巳王(東堂薫)
第二部 物語は動きだした 四章 再会の兄弟
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山登り



 山越えはゲームの冒険では、わりとよくある。長期戦の移動になる難物でもある。

 個人的には僕の体力で、この壮大な山脈を登れるのかと心配だ。

 ふつうのひよわな文学青年なんで。


 僕らはいよいよ、山道をわけいっていく。

 だが、歩きだしてすぐにわかった。

 大丈夫だ。ゲームなんで、現実の山のように道なき道を行ったり、急斜面だったり、ましてやロッククライミングまがいのことをしないと進めないわけではなかった。

 迷わないていどにルートができあがっている。急峻きゅうしゅんな山並みなのに、そのわりにハイキングコースのように道が整備されていた。

 どおりで山脈を馬車で旅することができるわけだ。


 そうだった。始まりの街でも、なんか作りものみたいな街並みだって思ったんだよな。映画のセットみたいっていうか。


 それにしても、あいかわらず小銭を拾う。もう一度に拾うのが二、三千円になってきた。お金、たまるなぁ。今のとこ、あんまり使い道ないんだけど。


 しばらく山道を歩いていった。

 何度か戦闘になったけど、出現モンスターの系統が一新されていた。樹海とはまったく違う。グリズリーとか、カモシカとか、タヌキやキツネの化け物だ。タヌッキとか、キツネッコね。


 山の中腹まで登ったあたりで、急に目の前に暗い洞くつが現れた。


「トンネルでしょうか? それとも天然の洞くつ?」

「あっ、道しるべがたってるよ」


 僕は洞くつの前にたてられた木の道しるべを見た。日本語で、『マーダーの神殿、ここから一キロ』と書かれている。親切だなぁ。

 そして異世界語が日本語。

 嬉しいなぁ。僕の母国語は異世界共通言語だった。


「じゃあ、行ってみますか。洞くつ」と、蘭さんが言う。

「うん。行こう」


 このさきに、ついにマーダーの神殿が。

 やっと職業につけるんだ。

 無職って言葉が社会人には刺さるよ。



 *


 洞くつ——

 あっ、もしかして僕、初洞くつか。

 洞くつは地下道より、さらに薄暗い。

 ところどころ、ヒカリゴケが青白く光ってるんで、なんとか真っ暗闇ではないんだけど、十メートルさきも見えない。

 足元に大きめの岩や石筍せきじゅんがとびだしていて、危なっかしい。


「うーん。小銭が落ちてる。もう小銭じゃないけど。大銭だよね。僕の所持金がぼちぼち七十万になるからか」

「それ、不思議やなぁ。なんで、そない大金落ちとるのに、おれらには見えへんのやろ?」

「僕にはお金の声が聞こえるんだよ」

「さよかぁ。ええ耳しとるなぁ」

「猫の声や人形の声も聞こえるんだよ」


 自慢したつもりなんだけど、三村くんの目つきが冷たい。

 いいよ、もう。


「しッ。二人とも。かーくんが小銭を拾うってことは、ここにもモンスターがひそんでいます」


 たしかに、蘭さんの言うとおりだ。

 ピトン、ピトンとしたたる水滴の音。

 ぬれた岩肌。

 BGMもなんとなく暗い。

 ドキドキするじゃないか。

 もっと景気のいい曲かけてくれないかなぁ?


 オバケは出ないよね。

 洞くつに出そうなやつって言ったら、おなじみのドラッキとか、虫っぽいのとかかな。


 僕らは慎重に歩いていった。

 慎重にしつつ、宝箱は探しまわる。

 どうせなら、みんな、いただいていかないと。


「あっ、宝箱だよぉ。今度は何が入ってるかなぁ?」


 僕は喜びいさんで、宝箱にかけよった。まだ鍵がかかってるほどの宝箱はお目にかかったことがない。

 だから、なんの気なしに、ふたに手をかける。


 だが、そのときだ。

 急に猛が大きな声を出した。


「あけるな! かーくん。それはミミックだ!」


 へ? ミミック?

 もう……あけちゃったんですけど?

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