アナコンダ戦!2
僕は叫んだ。
「ロラン! 次のターンで毒消し草使って。シャケは薬草でロランを回復。僕が大ムカデ倒すから。そしたら、その次のターンで立てなおせる」
「わ……わかりました」
「おっしゃ。了解や」
リーダーでもないのに、思わず、でしゃばっちゃった。
僕らは次のターンの開始時に、全員、蘭さんのそばに集まった。
大ムカデがまだ、蘭さんのそばにいたからだ。毒消し草、薬草で蘭さんのダメージは消えた。
そばにいるムカデを、僕はザクリと一刀両断!
あっ。輪切りになるんだ。
頭は固いから切れないのか。
なんか、これはあきらかに殺しちゃった気がする。でも、相手が害虫なせいか、あんまり良心が痛まない。
人間って勝手だなぁ。ごめんよ。ムカデくん。
そして、そのあとだ。
ぽよちゃんが、またあの謎の行動をとると、次はアナコンダの番だ。
お供がいなくなったことでアナコンダは怒ってるみたいだ。
僕らはまだ、アナコンダにはほとんどダメージを与えてない。
三村くんが二回ほど、ブーメランで殴っただけだ。ブーメランは全体攻撃ができるぶん、単体へのダメージは少ない。二回あわせても、アナコンダが受けたダメージは、僕が剣で一発なぐったのと変わらないと思う。
なのに、こっちのこの追いつめられた感がハンパない。
ヤバイんじゃないだろうか?
すると、アナコンダは勝ち誇ったように、体をゆらりと揺らした。
体を丸めたのち、カアッと口をひらくと、黒い霧を吐きだしてきた。
ポイズンブレスだ!
僕らは三人とも毒にやられた。
マズイ。
次のターンでそれぞれ毒消し草を使うとしても、HPは回復できないし、攻撃にも移れない。
いっきにピンチになってしまった。
どうするッ? かーくん?
(自問自答)
*
「ちょっと聞いてください」
蘭さんが決意を秘めた目で言った。
真剣すぎて怖い。
こういうときの顔は、まちがいなく男。勇者の顔だ。
「このまま、毒を消して回復してをくりかえしてたら、いつまでたっても攻撃できません。毒は受けても、HPが0になることはないんです。HP1になったら、そこから下がらない。つまり、その状態で戦うことはできます。このまま、回復せずに、次のターンで全力攻撃しましょう」
「ええーッ! HP1になったら、敵の攻撃受けたとき、一撃死してしまうよ?」
「もちろんです。そこは賭けですよね。でも現状を打破するには、それしかない。運がよければ、アナコンダの攻撃をかわすこともできる」
まあ、たしかに自分のステータスを見ると、一回のターンの毒で減少するHPは最大値の十パーセント前後のようだ。自分の行動のあとにも同じだけ減少するけど、それを考慮しても、アナコンダの攻撃を受けながら、二、三ターンは持つ。
それまでに倒すことさえできれば……。
「わかったよ。やろう」
「じゃあ、行きますよ? ちなみにアナコンダの攻撃は一人一回ずつ受けることにしましょう。そうすれば誰かが死ぬ確率が、グッと下がる」
「うん」
今は僕らのターンだ。
蘭さんが攻撃開始するまでは、アナコンダは攻撃してこない。
じっくり作戦を練ってから、蘭さんは行動に移った。
ドラゴンテイルの華麗な舞い!
アナコンダの左目に命中した。
アナコンダが苦痛に身をよじる。
すかさず、三村くんはアナコンダの右目を狙った。
これも当たった!
アナコンダの両目は薄皮みたいなもので閉ざされた。ワニなどが水中に入るときに目を保護する膜だ。
そうとう二人の攻撃が効いたのか?
いや、視界がきかないだけだ。
尻尾をガラガラさせて暴れている。
くそッ。やっぱり簡単には倒れないのか。
でも、目が見えてないんだよな?
今なら近づいても安心かも?
僕は真正面から駆けこんでいって、アナコンダの腹を刃でなでた。血がふきだして、アナコンダが硬直する。
あれ? もしかして、やったかな?
という僕の見通しは甘かった。
アナコンダは蛇だ。蛇はもともと、視力があまりよくない。敵を察知するのは視力ではなく嗅覚だ。
アナコンダは赤い舌をヒラヒラさせると、僕の頭上に長々と首をもたげた。
や、やられるゥー。
なんで、いっつも、こうなるんだー!