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東堂兄弟の冒険録〜悪のヤドリギ編〜  作者: 涼森巳王(東堂薫)
第二部 物語は動きだした 四章 再会の兄弟
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1バトル1毒



「はぁ……ムカデ。やっかいだね。かまれないように気をつけなきゃ」

「そうですね。僕ら、まだ誰も毒消しの魔法、使えないですからね」


 僕らはモンスターから勝利報酬を回収して、深い森のなかを歩きだした。


 それにしても、猛は見てるだけで助けてくれなかったなぁ。すごく強いはずなんだけど。

 ワレスさんはチャッチャッと倒してくれたぞ。兄ちゃん。


 小銭はあいかわらず見つけるんで、もうほとんど無意識だ。なんか体が勝手に動いて拾っていく。


「気をつけろよ。毒蛇もいるからな。蛇はさっきのやつらより、もっと強い。このへん、毒のステータス異常攻撃してくるやつらの巣窟そうくつだからな」と、猛が助言してくる。


 そう言えば、さっきのふもとの村でも、そう言われたっけ。

 もっと毒消し草、買っとけばよかったかな? でもまあ、僕には蘭さんのお父さんがくれた毒消し草セット五十枚がある。まさか、これを使いきるほど毒にやられることなんてないだろう。


 なんて、思ったのが甘かった。


「ギャー! かまれた!」

「かーくん。顔青いで。毒消し草や」

「あッ。僕もやられた」

「毒消し草や」

「そういうシャケも顔色悪いよ」

「ああ、さっきムカデの足さわったときかいな」


 もう、阿鼻叫喚あびきょうかんとは、このことだ。

 一回バトルするごとに、必ず一人ないし複数、へたすると全員が毒異常になってしまう。

 僕の幸運度のおかげで、二回に一回はモンスターが宝箱をドロップするから、毒消し草の補充もできなくはない。ここらの敵の宝箱は、ほとんどが毒消し草だからだ。


 それにしても、毒を受ければ、そのぶんHPも減るわけで、そのまま戦闘に突入するわけにもいかないんで、回復魔法をひんぱんに使う。MPがどんどん、けずられていく。次の休憩場所まで、僕と蘭さんのMPが持つかどうかの勝負になってきた。


「ぎゃっ。また、かまれたー!」

「ハチや! ハチまで出てきよったで」

「飛ぶ毒モンスター、ズルイ!」

「注射より痛そう……」


 って、蘭さん。

 この世界にも注射はあるんだね。

 意外と医学が進歩してるんだな。

 薬草とお祈りしかないかと思った。

 そっか、戦闘以外でも、風邪とかインフルとか、ノロウィルスとかはあるんだもんね。


 襲いくる毒モンスターの群れ。

 必死に毎回倒し、毒消し草を飲みながらHPをつないでいく僕ら。


 そのときだ。

 遠くのほうに小屋が見えた。

 宿屋のようだ。

 あそこまで行けば、助かる!



 *


「ロラン。シャケ。毒消し草、まだ持ってる?」

「僕はあと四つ。父上が旅に出るときは、必ず毒消し草をたくさん持つんだよっておっしゃってたから」

「おれは商売物に手を出せば、まだ五十はあんで。けど、商売物やからなぁ。なるべく、使わんようにせんと」

「僕はあと九つだ。五十枚も貰ったのに、もう九つッ?」

「かーくんは、ぽよちゃんのぶんも飲ませてるし」


 僕はすました顔で僕らのあとをついてくる猛をながめた。

 変だ。猛も二回に一回くらいは、かるくコツンと毒バチや毒スパイダーや毒ムカデの頭を叩いてくれるけど、一回も毒にかかったところを見たことがない。


「猛はなんで、平気なの?」

「えっ? おれ? 得意技の一つが“免疫力”だからだよ」


 なるほど。たしかに兄は現実でも、やたらと免疫力が高い。風邪なんかひいたことがない。僕はこれまでに二度インフル患ったけど、猛は一度もしたことがない。


「得意技って言うのはな。段階があるんだよ。個人によって、初期段階から成長しない、または三段階、五段階まで進化する場合があって、おれの免疫力は五段階まで進化してるから。ステータス異常にはならないんだ」


 いいな。その得意技。僕も欲しかった……。

 まあ、いいや。僕には“小説を書く”があるんだもんね。


「そうなんだ。得意技って進化するのか」

「得意技は使えば使うほど進化するぞ」

「へえ」


 いいことを聞いた。

 いっぱい小説書いて、ますます進化させよう。


「そう言われれば、僕の魅了も、子どものころはパーセンテージが低かった。あれって進化したからなのか」と、蘭さん。


 今まで、どんだけ、その技を使ってきたんだろう? 蘭さん。誰を相手に? モンスターだよね? 人間に使ってないよね?


 僕は心配になったけど、とにかく今は急いで、あの小屋まで辿りつかないと。


「急いで、あそこへ行こうよ」と、僕が言ったときだ。

 やな感じの音楽が流れだしたぞ。

 これは……固定のイベント戦では?

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