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東堂兄弟の冒険録〜悪のヤドリギ編〜  作者: 涼森巳王(東堂薫)
第二部 物語は動きだした 四章 再会の兄弟
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いざ、マーダー神殿へ



 僕らは宿屋に帰った。

 蘭さんが退屈そうに待ちわびている。


「ごめん。ロラン。遅くなった」

「ほんとですよ。すぐに朝食を食べて出発しましょう。ところで、そちらのかたは?」

「僕の兄ちゃんだよ。猛って言うんだ。山を越えるまで、ついてきてくれるんだって」

「そうですか。よろしくお願いします」


 そう言って、蘭さんは手をさしだした。ところが、兄ちゃんと握手をかわした蘭さんは、しかめっつらをして、じっと自分の手を見つめている。

 猛の静電気でもくらったかな?

 兄は尋常じゃない静電気体質なのだ。


「ロラン。ビリッとしたの?」

「えっ? ええ……まあ。さ、食事にしましょう」


 小村の素朴なジビエ料理を食べた。

 なかなかの味だった。

 兄ちゃんはあいかわらず、僕の肉をとる。


「ああ、懐かしいな。久々にかーくんの肉だ」

「何やってるんだよ! 僕のイノシシ返せ!」

「ないよ。もう食った」

「兄ちゃんのバカ、バカ、バカ!」


 いったい、これまでの人生で何百万回くりかえされただろう、このやりとり。


 それが終わると、いよいよ出立のときだ。

 僕らは村の出口から北にそびえる雄大な山脈をながめる。


「すごく大変そうだねぇ」

「モンスターも強なるしな。油断でけへんで」

「でも、ここを越えないとボイクド国へは行けません」

「そうだね。よし、行こう!」

「キュイっ」


 僕らはふもとの村を出て、山麓さんろくに広がる樹海へと足をふみいれた。



 *


 樹海——

 そこは鬱蒼うっそうと茂る木々の枝が何重にも重なり、昼でも薄暗い。

 いかにもモンスターとか、オバケとか、オバケとか、オバケとか出てきそうなんだよな……。


「こ、怖い……ここ、絶対いるよ」

「いるって何が?」と、兄ちゃん。

「自殺した人の霊とか、遭難した人の霊とか、モンスターにやられた人の霊とか……」

「全部、オバケじゃないか。かーくんはあいかわらずだなぁ」


 ハハハと笑いながら、猛が僕の髪をクシャクシャにした。

 いいなぁ。兄ちゃんがいるって。たよれる。この安心感はゆるぎない。オバケが出てきても、きっと猛が追いはらってくれる。


 それにしても兄ちゃんのパラメータが見れないのは、なんでだろう?

 ちゃんとした仲間じゃないんだな。

 まだ、仲間ノンプレーヤーキャラに近いのかな。


 モニターを確認すると、職業は“謎の青年”となっていて、数値は全部ハテナ。

 装備品は黒金くろがねのよろい、黒金のかぶと、黒金の盾、黒金の剣、黒金のブーツになっている。黒金シリーズだ。

 かぶとかぶってないのに、かぶってることになってるのか。不思議だなぁ。

 あと、装飾品として、皮のマント。

 外からだとマントしか見えない。


「兄ちゃんって強いよね?」

「もちろん。めちゃくちゃ強いぞ」

「ふうん。レベルは?」

「25だ」


 レベル25なら、強いと言っても、僕らとそんなに大差はないはずだ。たぶん、兄ちゃんは現実世界でも武芸の達人だから、そういうスキルとかで、かなり戦闘に特化してるんだろう。基本数値の伸びもいいんだろうな。力とか、体力とか。


 でも、たぶん、レベル47のワレスさんと対戦したら、あっけなく負ける。

 レベル22の差はそれほど大きい。

 勇者の蘭さんだって、今の段階では、ぜんぜん弱っちいってことだ。


「ああ……早く樹海、ぬけないかな。暗いのはヤダなぁ」

「かーくんはオバケが嫌いなんですね」

「ハッキリ言わないでよ。ロラン」

「可愛いなぁ」


 もと女装王子に言われたくない。


 そのとき、とつぜん、目の前に何かが、ツウ——っとたれさがってきた。


「出た! オバケェー!」

「オバケじゃないよ。かーくん。モンスターだ」


 も、モンスターでしたか。

 戦わなくちゃ。

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