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東堂兄弟の冒険録〜悪のヤドリギ編〜  作者: 涼森巳王(東堂薫)
三章 勇者ご一行の旅
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小説を書くって、こういうこと?



 朝が来た。

 明け方に小説を書いてから、僕はまた寝てしまっていたようだ。

 なんだか胸のあたりが重い。


「うーん……うーん。重いよ。ミャーコ。どいてよぉ……」


 僕は寝ぼけて愛猫のミャーコにお願いする。

 返事があった。


「キュイ」


 ん? キュイ? ミャーコっぽくないな。

 ほんとに、ミャーコなの?


「キュイ。キュイ」

「うーん……?」


 僕は寝ぼけまなこをこすった。

 ん? なんだろ?

 目の前に幻が見える。

 これは……あれか? 天国?

 僕はいつのまに死んじゃったのかな?

 だって、僕の胸の上に乗っかってるのは、真っ白いふわふわのぽよぽよだ。片耳にハートっぽい模様があるので、ぽよちゃんだとわかる。


「ぽよちゃん?」

「キュイ〜キュイ〜」


 ぽよちゃんは僕の鼻の頭にふかふかの体をこすりつけてきた。


 まわりを見まわすと、やっぱりマーダー山脈ふもとの村の宿の一室だ。

 蘭さんと三村くんが寝てる。

 変だな。天国でもないらしい。


 ぼーっとしてるうちに、蘭さんと三村くんが起きてきた。


「おはようございます。かーくん。シャケ」

「おはようさん」

「お、おはよう……」


 ふつうに身支度とかし始める二人に、僕は問いかけた。


「あの!」

「え? なんですか?」

「ぽよちゃんが……」

「うん。ぽよちゃんも山越えできるんですかね」

「えっ? それだけ? もっと他に気になることない?」

「えーと、エサはニンジンでいいのかなぁ、とか?」

「そうじゃなくてさ!」


 僕は声を大にする。

「ぽよちゃん、死んじゃったよね? 昨日、教会の裏の墓地に埋めたよね?」


 すると、蘭さんと三村くんは顔を見あわせる。


「かーくん。夢でも見たんじゃないですか? ぽよちゃんは、ちゃんと生き返りましたよ?」

「あんだけ喜んどったやないかぁ」


 ええーッ! 何それ?



 *


 えーと……これは、どういうことなんだろう?

 ぽよちゃんは死んだ。生き返らなかった。

 でも、小説のなかでは生き返ったことにした。

 そしたら、ほんとに、ぽよちゃんが生き返った。


 こ、これって、まさか、僕が《《小説に書いたから》》生き返ったのか?

 僕の書いたとおりになったってこと?


 なんか……いいのか?

 それって蘇生魔法でも生き返らない人を蘇生できるってこと。

 いや、それだけじゃないのか。

 もっと他のことも全部、僕の思いのままになったり?


 そうだ! バグがあった。

 僕には現在、とんでもない弱点が存在している。


 僕は試しに“小説”を書いてみることにした。



 ***


 ミノタウルス戦のあとはバタバタしてしまったので、ステータスを確かめてるヒマがなかった。

 レベルは15に上がっている。

 僕は朝、目を覚ましてから、あらためて自分のパラメータを見なおした。


 HP140、MP110、力25、体力30、知力63、素早さ35、器用さ55——



 ***


 さあ、ここだ。

 ここまでの数値はじっさいにステータス画面を見て写した。やっぱり何度、見ても僕にはそのあとに幸運の項目がない。なので、てきとうに書いてみることにする。

 スマホの文面の続きに、幸運って書いて数値を入れる。

 どうせなら、へへへ。めちゃくちゃ高くしてやろう。だって、もともとがありえないバグなんだから。このくらいの特権はあっていいはずだ。


 僕は、幸運の数値を9999999999と入れようとした。が、99999まで入れたあと、何度9を押しても、まったくカーソルが動かない。

 どうやら、ゲーム上の最上限数値以上には設定できないようだ。

 しょうがないなぁ。99999で手を打ってやろう。



 ***


 HP140、MP110、力25、体力30、知力63、素早さ35、器用さ55、幸運99998。


 マジック

 元気になれ〜ヽ(*´∀`)

 もっと元気になれ〜ヽ(*´∀`)


 得意技は小銭拾いと小説を書くが使えるようになっていた。


 ここから僕の無双が始まる。

 なんちゃって。



 ***


 さて、書き終えてから、僕はあらためてモニターを呼びおこし、数値を確認した。


 HP140、MP110、力25、体力30、知力63、素早さ35、器用さ55、幸運99998。


 えっ? 9999……8? 8ですか?

 9にしたつもりだったのに。

 うーん。上限まであと1か。

 まっ、いいか。

 少なくとも、これで、僕が小説に書いたことは、すべて真実になるということが立証された。

 スゴイぞ。この技。

 なんでも思いのままじゃないか。

 へへへ。ふひひ……。




 第一部 完

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