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東堂兄弟の冒険録〜悪のヤドリギ編〜  作者: 涼森巳王(東堂薫)
三章 勇者ご一行の旅
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燃える空



 ミノタウルスに勝った。

 僕らの実力にしては、がんばったほうだと思う。

 でも、犠牲もあった。

 早く、ぽよちゃんを蘇生させないと。


「ほな。早よ次の街に行かんとな。こっから一番近い街って、どこやねん?」

「わかりません。僕もまだこの抜け道のさきに行ってみたことはないので」

「おれもこっちの方面に商売に来るのは初めてやしなぁ。魔法の地図も真っ白なままや」


 魔法の地図か。

 移動したことのある部分だけ色がついて描かれていくやつだね。


 僕らはミノタウルスが起きてくる前に、地下道から脱出した。出口をぬけると、背後で扉が自動で閉まる。


 夜が明けていた。

 東の空が茜色に染まっている。

 いや、違う。明け染める暁の空の薄桃色と、その毒々しい赤は明確に異なっていた。


 炎だ。そして、たちのぼる黒煙。

 蘭さんの白皙はくせきが瞬時にこわばる。


「シルキー城だ。シルキー城が燃えている」


 たしかに、あれはシルキー城の方角だ。真っ赤に焼けただれたような不吉な色合いに、背筋がゾクリとする。


「父上、母上……」

「大丈夫だよ。ワレスさんがきっと助けてくれてるよ。みんなでお城から逃げだしたはずだ」

「そう……ですね」


 蘭さんが不安になるのもムリはない。

 あの感じだと、お城は全焼だ。

 ああは言ってみたものの、ほんとに王様たちは無事なんだろうか?



 *


「ロラン。かーくん。行こか? あっちのほうに向かうと、街があるで」


 そう言って、三村くんが北をさした。


「なんで、そんなことわかるの?」

「商人のスキルで、街の匂いってやつや。人のいる場所がわかるんやで」

「ふうん」


 すると、蘭さんも言った。

「ボイクド国は北東です。国境の山脈を越えたさきにある。ちょうど僕らが目指す方角ですよ」

「じゃあ、そこに向かってみようよ」

「ええ」


 僕らはミノタウルス戦で疲れきっていたものの、ぽよちゃんのためにも急いで歩きだした。


「ねえ、ロラン。シャケ。二人の職業は勇者と商人でしょ? 僕はただの冒険者ってなってるんだけど、これって無職ってこと?」


 現実の僕はアパレルショップの店員だ。商人にはならないのかな?


「かーくん。まだ、マーダーの神殿に行ったことはないんですか?」

「ないよ」

「じゃあ、無職ですね。ミルキー城の城下町にはマーダーの神殿があったんですけど」

「マーダーの神殿……」

「職業を授けてくれる場所です。おもしろ半分で行ってみたら、勇者って職業があったので、なってみたんですよ。まさか、こんなことになるなんて……」

「えっ? 勇者って誰でもなれるの?」


 三村くんが首をふった。

「なれへん。なれへん。勇者は特殊な専門職や。誰でもなれるもんとちゃうねん。なれるヤツしか、なれへん」

「そうか。なれるってことが、すでに勇者の証なんだ」


 これでわかった。

 僕に足りないのは職業だ。プリーストならプリーストで、早くその職につかないと。魔法や職業固有スキルを覚えられない。


「マーダーの神殿。行ってみたいな」

「行けますよ」と、蘭さんがうけおった。

「ボイクド国との国境の山のなかにあるって話です。つまり、これから向かう山脈に神殿はあります」


 そうか。一刻も早く、そこへ行って、僕は蘇生魔法を覚える。

 そしたら、次に誰かが死んでしまったときには、僕自身の力で生き返らせることができるかもしれない。

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