ミノタウルス戦!1
大きな斧を手に、立ちはだかるビースト。
牛の頭に人間の体。
しかも、超マッチョ。
身長は三メートルくらいか?
その姿は大昔、地獄の鬼と言われた牛頭そのものだ。
「ひえー。見るからに怖い」
「大丈夫。僕には魅了もあるし、力をあわせれば、必ずやれます」
「おう。かーくん、やったろや」
地の底からわきあがる音楽。
あっ、いつもと違う。
なんか激しいぞ。
これが固定ボス戦のBGMか。
ボス戦って途中で戦闘離脱できないよね? 勝つか、負けるか。そのどちらか一つ。
い、行くぞ……。
ミノタウルスは余裕の表情で微動だにしない。というか、頭が牛だから、イマイチ表情がわからない。
と、いきなり、蘭さんがニコニコしながら両手で可愛いガッツポーズを作った。
「みんな、がんばろ〜!」
蘭さん、こんな大変なときに何やってんだ?
あれ? いや、待て。なんか体の底から力が湧いてくる。やる気が倍増したぞ。
うん? そういえば、さっきのあの蘭さんのポーズ、どっかで見たような? それも、つい最近だ。
蘭さんはもう一回、同じポーズで同じセリフを言った。
「みんな、がんばろ〜!」
ああッ! あれか。
蘭さんの呪文に、『みんな、がんばろ〜o(^o^)o』っていうのが、あったっけ。
この力がモリモリ湧いてくる感じ。
たぶん、攻撃力をあげる補助魔法だ。それも、“みんな”って言ってるから、グループ全員にかかる魔法。二回め言ったから、重ねがけもオッケー。
よーし。これなら、ミノタウルスだって倒せるかも。
どうでもいいけど、このゲームってターン制なんだけど、素早さの数値によってターン内で二回攻撃も可能なんだな。
無意識だったけど、僕もスライム戦のとき、一ターンに二、三回、スラちゃん叩いてたっけ。
蘭さんは素早さがとびぬけてるから、重ねがけできたんだ。
蘭さんの攻撃は今ので終わりだ。その場待機の挙動に変わった。
次は三村くんか。
三村くんの数値は——と。
えっと……HP180、MP25、力85、体力70、知力35、素早さ32、器用さ73、幸運20。
これまた、めっちゃかたよってる!
これ、どう見ても戦士の数値なんですけど? 商人でコレってことは、戦士に転職したら、問答無用に強いんじゃないの? 戦士にしては、やたら器用なのが不思議だけど。
あれ? 素早さの数値、僕より低くないか? じゃあ、なんで攻撃の順番、僕より早いんだ?
あっ! バンダナだ。装備品の風切るバンダナっていうのが、素早さの数値を上げてるんだ。素早さプラス50は大きいな。
「行くで!」
三村くんのブーメランがうなる。
ミノタウルスの弁慶の泣き所を直撃だ。逆にこんな低空飛行で、よく飛ばせるな。感心だ。
さて、いよいよ、僕の番だぞ!