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東堂兄弟の冒険録〜悪のヤドリギ編〜  作者: 涼森巳王(東堂薫)
十八章 ほろ布ください
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シャケ商店、本格開店!



 さ、ようやくポルッカさんのお屋敷だ。


「おーい。シャケ? 来たよぉ。調子どう?」


 僕らがモンスターつれて、ぞろぞろと玄関ホールに入ると、待ちかまえていたかのように二階から三村くんがかけおりてくる。


「こっち、こっち。来てくれへんか?」


 いやに浮かれてるな。

 なんとなく、これからあとの予想がつくぞ?

 こういうときの三村くんは、たいてい……。


 二階につれられていくと、やっぱり思ったとおりだ。

 この前、見たときには、使われていない人形製作のアトリエみたいな部屋だったところに、看板が立っている。


 ——シャケ商店——


 うん。まんまだね。


「シャケ、お店ひらいたんだ」

「ナイスタイミングやで。ちょうど今日、開店にこぎつけたとこなんや。見てってや」


 ささっとドアよこに走っていく三村くん。挙動は前と変わらない。


 ぽよちゃんたちの服かなぁ?

 そろそろ、もう少し強くしてもよかったんで、新しい防具は嬉しいけどさ。

 また、ぼるんだろうな……。


「何が置いてあるの?」

「ポルッカさんが昔、仕入れてた布地とか使てええ言うてくれたからな。ちょい、きばってみたで。今回はほんまにええもん丹精こめて作ったからな」

「ふうん」


 店内をのぞいて、僕と蘭さんはおどろきの声をふりしぼった。


「こ、これは?」

「もしかして?」

「せや。モンスター用もあんねんけどな。人間用や。人形師のランクが上がったんや。コスプレ衣装が作れるようんなった」

「へえー! すごいね。あっ、でも、僕ら、さっき銀行でオリハルコンのよろい三つも貰ったからなぁ。防具はあんまり必要ないかも。女の子用には妖精の羽衣と妖精のティアラがあるし」

「なんやいなぁ。おもろないなぁ。けど、これはあれへんやろ? どや?」


 三村くんが示したのは、首のない木型のマネキンに着せた薄いローブみたいなものだ。正直、あんまり、よろいとしての防御力は期待できそうにない外見。


「なんか薄っぺらいね。よろい下に着てる長袖ティーとコットンパンツなみ」


 ふふふと笑って、三村くんはキラーンと目を光らせる。


「そう。そこや。これまで誰も変に思えへんかったんが不思議やで。どない強いよろいかて、まっぱの上にちょくせつ着るわけちゃうやろ? よろい下の性能によって、着心地や守備力は違ってくるはずや」

「まあ、そうだね。軽鎧ならいいけど、固い金属の重鎧は、よろい下とこすれて痛くなったりするしね」

「せやからな、これは、よろい下用の衣服なんや。最高級の素材を使てやな。よろいの性能ひきだせるようにしたんや。それに魔法バリヤ素材を使えば、よろい下だけでも防御力は上がるで」


 なるほど。そう言われるとそうだ。


「おおー! 目のつけどころが違うね。それ、ほんとに強くなるんなら、世紀の大発明だよ」

「せやろ〜」


 三村くんはこれ以上ないほどドヤ顔してる。自慢したくなるのもムリないか。


 僕らはさっそく、それぞれの好みの服を物色した。


「精霊王のよろいって透けるじゃないですか。だから、キレイなよろい下があればいいなぁとは思ってたんですよ」

「せやろ〜。ロランには、これがおススメやな。精霊王のよろいは、それじたいが性能ええからな。よろい下につけるんなら、この能力かなぁ思うて、MP吸収素材で作ってみたで。敵から受けた魔法の使用MPの30%を吸収できるんや」


 ひざ下くらいのちょっとラメの入ったローブだ。デザイン的にはロランが今現在、着用してるローブと大差ない。でも形がシンプルなぶん、精霊王のよろい本来の美しさがきわだつ。


 が、じっさいにそれに着替えた蘭さんはガッカリした。


「ダメですね。やっぱり、ステータスで、よろい下って装備品の項目がないから、反映されないみたい」


 それを聞いて、三村くんもガッカリだ。

「なんやぁ。いい商売になる思うて、せっせとこしらえたんやけどなぁ」


 僕は考えた。

 こんなときこそ、“小説を書く”じゃないだろうか?

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