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東堂兄弟の冒険録〜悪のヤドリギ編〜  作者: 涼森巳王(東堂薫)
十八章 ほろ布ください
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ほろ布が手に入らない



「これじゃ通れませんよ。オンドリヤさん。あきらめて村へ帰りましょう」


 蘭さんが微笑むと、オンドリヤさんは機嫌をなおした。


「おぬし!」

「は、はい?」


 勢いこんでるんで、何を言いだすかと思えば、

「おぬし、女装男子じゃな!」

「え、ええ、まあ。わけあって」


 ちなみにドレスの下に精霊王のよろいを着こんでる。


「麗人じゃな。これほど美しい男を見たのは、おぬしで二人めじゃわい。目の保養じゃあ。ありがたや。ありがたや。寿命が延びたわいなぁ」


 気になったんで、僕は口をはさんだ。

「一人めは誰ですか?」

「王都のワレス隊長じゃ。ええ男じゃったなぁ」


 おばあさん、両手を組んで乙女っぽい仕草をした。


「へえ。ワレスさんも、ほろ布を頼みに来たんですか?」

「そうじゃ。軍隊用に魔法のほろ布を大量注文してきたことがあっての。金払いはよかったんじゃが、二十枚はちと重労働じゃったもんでな。わしのモチベのために王都一の美男子をよこせと言うたんじゃ。美男子がおねだりしてくれたら受けてしんぜようとな。そしたら、やってきたのがあの隊長じゃった。夢の一日デートじゃったわい」

「…………」


 ワレスさん。苦労してるな……。


「じゃあ、ウールリカの羊毛が手に入ったら、僕らのためにも布を織ってくださいますか?」


 蘭さん、『甘える』を使ってる!

 絶対そうだ。

 目のキラキラ感が違う。


 オンドリヤさんは喜んで引き受けてくれた。ただねぇ。現状、羊毛がないんだよな。


 とにかく、脱出魔法アイテムで、トンネルの外まで戻ってきた。


「あっ! お師匠さまっ! ご無事で何よりです。それはもう心配してたんですよ。途中ではぐれてしまったから」


 入口で待ってたデシミルさんが、もみ手をしながら近づいてきた。

 うーん。ショップ店員の僕ですら、したことないほどの見事なもみ手。ある意味、見習わなくちゃいけないのかも。


「えーい! この軟弱者めがー! カアーッ! おぬしはそんなことだから、いつまでたっても成長せんのじゃー!」


 オンドリヤさんのチョップが華麗に舞った。たぶん、二、三十回は。

 強いな。このおばあさん。レベルは60くらいか?

 デシミルさんはボコボコにされて、地面にゲフッてる。


「おおっ、明るいところで見ると、いっそう麗しいのう。おぬしのためなら、最高の布を織ってしんぜよう。また村に来なされじゃ」

「……み、みなさん。師匠をつれてきてくださり、ありがとうございました」

「カアーッ! おぬしは特訓じゃあー!」

「なんで機織りがモンスターと戦えなくちゃいけないんですか! おかしいですよ。師匠」

「カアーッ! 口答えするでない!」


 にぎやかに罵りあいながら、オンドリヤさんとデシミルは村へ帰っていった。あの調子なら送っていく必要はなさそうだ。


 僕らは日が暮れるまで、そのあたりで職業ランクを上げるために戦い続けた。あたりが薄暗くなるころ、ようやく、僕は遊び人から解放された。


「ヤッター! 『賭けてみる?』おぼえた〜! やっとこれで盗賊になれるよ!」

「僕も魔法使いマスターしました。後衛援護スキルを習得するためには、僕は武闘家にならないといけないのか。魔道戦士のほうが上級職だから、補正数値が高いんだけど。どっちになろうかなぁ?」

「ロランはとりあえず弓使いになれるように、特訓のあいだは下級職についといて、ミルキー城に乗りこむときに上級職になればいいんじゃないの? そしたら職業スキルをたくさん持った魔道戦士になれるよ」

「そうですね。じゃあ、あとは盗賊と武闘家をマスターします。でも、盗賊になるには、まず商人と遊び人をマスターしないといけないんですよね?」

「うん。詩聖になるにも遊び人が必要だし、遊び人をきわめないと後衛援護スキルが使えないんだねぇ」

「じゃあ、さきにネックの遊び人を終わらせようかな」


 と言って、蘭さんはスズランの前に立った。が——


「あ、あれ? どうしよう? 僕、遊び人になれないみたいです。あっ、商人にもなれない」


 えっ? どういうこと?

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