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東堂兄弟の冒険録〜悪のヤドリギ編〜  作者: 涼森巳王(東堂薫)
十八章 ほろ布ください
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森モンスター



 さて、戦闘。戦闘。

 僕は蘭さんが行動するのを待ってるあいだ、その場でかるく足ぶみする。これだけで『巻きで行こう』がかかるなんて、ほんと我ながら卑怯だと思う。


 バランが前衛に立ってないんで、蘭さんが「みんな、がんばろ〜」と、いつもの呪文を使う。


「どれから倒しますか?」と、蘭さん。

「火の玉グリーンは魔法しか効かないよね。風属性だから、弱点は火属性かな。憑依してあやつられると、めんどくさいから、最初に火の玉?」

「そうですね。じゃあ、僕は魔法で行きますね」

「うん」


 蘭さんは魔法使いなんで、今は知力も上がってるし、呪文も『もっと燃えろ〜』をおぼえた。火の玉のHPは低いから一撃で倒せるだろう。


 しかし、蘭さんが「もっと燃え——」まで言ったときだ。

 ふら〜っと馬車から、たまりんが現れる。


「たまりん?」


 たまりんは呼びかける僕を無視して、火の玉グリーンに近づいていく。

 火の玉同士だからシンパシーを感じたのか?

 ん? たまりんがグリーンのなかに入った! ま、まさか、憑依したのか?


 すると、どうだ!

 目の前に、こことは違うどこかの景色が現れた。たぶん、火の玉グリーンの記憶なんだろう。大勢の人が森のなかで暮らしている。人……ではないのかも? みんな、すごく美形だし、肌の色が真っ白で、あわい金髪や銀髪で、耳が少しとがっていて、これはまるで話に聞くエルフのようだ。

 キレイな男女が幸せそうにツリーハウスで暮らしている。


 だけど、そこに何かが襲ってきた。

 魔物……か?

 黒い淀んだ空気をまとい、見るからに邪悪な黒鱗のドラゴンや、ゾンビ、瘴気そのもののかたまりのようなものや。

 そんなものが美しい里をふみ荒らし、破壊のかぎりをつくし、エルフたちを皆殺しにしていく。

 まだ少女のように若い母親が、幼いわが子をかかえ、必死に逃げる。そのあとを背後から追いすがり、ドクロの群れが乱暴に彼女の肩をつかんで地面にひきたおし、骨のこんぼうをふりおろした……。


 やめてくれ。かわいそうだ。

 その人はもう死んでるよ。

 幼い子どもも、めった打ちにされて原形をとどめてない。

 残酷すぎる光景に、僕は涙があふれた。


「やめろよッ! もう!」


 空中につかみかかっていっても、それは過去に起きた幻影だ。

 すうっと幻は消えた。


 明るい森のなかに帰ってきた。

 グリーンの火の玉は薄れて消えてしまった。


「この森で、かつて争いがあったのかもしれませんね。魔族と精霊族が戦争していたのか」と、蘭さんがつぶやいた。


「違うよ! あれは虐殺だった!」

「わかってます! でも、過去のことだ。僕たちにはどうしようもない……」


 ふりかえると、蘭さんも泣いていた。


 そう。あれは幻だ。少なくとも、今現在、起きていることじゃない。

 でも、それに似たことは、この世界のどこかでは、すでに現実に行われている。


 魔族の侵攻——

 あの幻影が時を超えて、今また、くりかえされようとしている。


 止めるんだ。

 僕らが、あれを止めないと!

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